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極悪貴族、謙虚堅実に無双する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~  作者: 月島 秀一
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第4話:清楚ビッチ(純情)【※漫画版、無料のWeb連載開始!】

【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】

Web版の更新が空いてしまい、大変申し訳ございません……っ。

実は第1巻の売上が絶好調なため、大急ぎで第2巻の原稿を用意せねばならず……死ぬ気で書きまくっていました。

っというわけで、書籍版第2巻7月10日発売決定!(大量の新規書き下ろしエピソードあり!)

さらに今後Web版は、【最低でも毎週水曜日】に更新させていただきます!(定期更新です!)


そしてそして――本日なんと!

ホロウの物語の漫画が、ニコニコ漫画(https://manga.nicovideo.jp/comic/77864)とカドコミ(https://comic-walker.com/detail/KC_008774_S)にて、無料で読めるようになりました!(第1話は超たっぷり45ページ!)

ホロウはもちろん、馬カスも絶好調なので、どうかぜひ見てみてください!

どちらの漫画サイトも登録なしで読めるのですが……アカウントを持っている方は、本作を『お気に入り登録』して、『いいね』ボタンを押して応援いただけると嬉しいです!

 ボクは色欲の魔女リゼを連れて、ボイドタウンの『工業地区』を進む。

 一応、エンティアにも声を掛けたんだけど……「ビリビリ女と一緒なんてごめんだわ」と断られてしまった。

 人間、合う合わないがあるから、こればかりは仕方ないね。


 目的地へ向かう道中、リゼが話し掛けてきた。


「……ねーぇ」


「なに?」


「私たちってさ、その……『家族』、なのよね?」


「うん、そうだよ」


 ボイドタウンのみんなは、ボクの大切な家族(コレクション)だ。


「前にも少し話したと思うんだけど……。私、小さいころからの『夢』があるの」


「どんな夢?」


「結婚式は海の見える小さな教会であげたいなぁって」


「いいんじゃない、ロマンチックで」


「ほ、ほんと? ありがと……っ」


 リゼは頬を赤く染め、幸せそうに微笑んだ。

 その後、子どもは何人欲しいかとか、仕事と家庭の優先順位とか……。

 まるで夫婦のような話をしながら歩いていると、正面に木造二階建ての立派な建物が見えてきた。


「さっ、着いたよ」


「ここは……?」


「ボイドタウンの新施設、『鍛冶工房』だ」


 扉をノックして中に入るとそこでは、大勢のドワーフたちが武具を打っていた。


「洞窟に住むドワーフが、どうしてこんな街の中に……!?」


「ふふっ、いろいろとあってね」


 トネリ洞窟のドワーフたちは全員、ボイドタウンに住むこととなった。


 当然、拉致(らち)ってきたわけじゃない。

 ボクは人権派(じんけんは)の極悪貴族だからね。

 他の凶悪な犯罪者と違い、ドドンたちは自らの意思で、虚空界に移住すると決めたのだ。


(ドワーフは鍛冶師、代表的な『生産職』)


 その戦闘力は極めて低く、魔獣と遭遇した場合、逃げることしかできない。

 さらに人界では、亜人差別が蔓延(はびこ)っており、人間社会に上手く馴染めない。

 だから彼らは、狭い洞窟の中で一生を過ごす。

 外へ出るのは、街へ酒を買いに行くときなど、特別な事情があるときだけだ。


 ボクは思った。


(どうせ洞窟から出られないのなら、ずっと外敵に怯え続けるぐらいなら、安全なボイドタウンに引っ越した方がよくない?)


 もちろん、デメリットもある。

 虚空界に入ったが最後、二度と娑婆(しゃば)には戻れない。


 でも、広くて賑やかな街or狭くて物寂しい洞窟。

 どちらが住みやすいかと問われれば……個人的には、前者だと思う。


(それに何より、ドワーフに武具の製造を頼むとき、わざわざトネリ洞窟まで行くのって、地味に面倒なんだよね……)


 彼らとは今後も長い付き合いになるし、ボイドタウンにいてくれた方が(はかど)る。


 っというわけで三日前――第六章が始まってすぐ、ドワーフの族長に交渉を持ち掛けた。


「ドドンよ、『理想郷』に興味はないか?」


「理想郷ぉ? 急になんの話だ?」


「実は今、とある秘境に街を作っていてな。腕の立つ鍛冶師を探している」


「そらぁつまり……」


「あぁ、ドワーフ族を招待したい」


 ドワーフは典型的な直情型(ちょくじょうがた)だから、下手に言葉を飾らず、単刀直入に用件を伝える。


「こちらが望むのは、理想郷への移住とトネリ洞窟の採掘権だ。その見返りとして、最高の労働環境・月額制の給与制度・万全の治安を提供しよう」


「ふむ……悪い話じゃねぇな」


「しかし、理想郷は『片道切符』。一度足を踏み入れたが最後、元の世界には戻れない。このデメリットを踏まえたうえで考えてくれ」


 その瞬間、ドドンの顔が固まった。


「二度と、か……?」


「あぁ、もう娑婆(しゃば)の空気は吸えん」


 将来、この方針が変わる可能性はゼロじゃない。

 特にドワーフ族みたく善良な協力者には、『外出制度』的なモノを設けたいと考えている。

 しかし、予定はあくまで未定。後々トラブルになっても嫌だし、厳しめの条件を伝えることにした。


「うぅむ……少し時間をくれ。儂だけでは判断できん事案じゃ」


 ほどなくして、ドワーフ族が全員参加する、緊急会議が開かれた。


「――っというわけじゃ。ホロウの作った新しい街に移住するかどうか、(みな)忌憚(きたん)なき意見を聞かせてくれ」


 ドドンの説明が終わると、小さくないざわめきが起こった。


「おいおい、街に住めるってマジか!?」


「儂は行くぞ! この湿っぽい洞窟とおさらばじゃ!」


「待て、(はや)るな。トネリの採掘権は、儂等の生命線だぞ?」


「しかし、元の世界に帰れんとは、いったいどういうことだ……?」


 酒を片手に議論しているのが、『Theドワーフ』って感じで面白い。


(さて、ボクも参加させてもらおうかな)


 せっかくここまで来たんだし、手持無沙汰ってのもアレだしね。


「ドワーフ諸君、此度の理想郷移住に関して、何か質問のある者はいるか?」


 ボクが質問を募ると、バババッと手があがった。


「ホロウさんよぉ、月額払いってぇ話だが、具体的にいくらなんだ?」


「表の世界換算で50万ゴルドほどと思ってくれ」


「そ、そんなにもらえんのかっ!?」


 ボクは「仕事には相応の対価を支払うべき」という考えなので、自分が適正だと思う額を提示しただけなんだけど……。

 これまで人間に搾取(さくしゅ)されてきたドワーフにとって、かなりの大金だったらしい。


「奴隷のように働かされるとか?」


「一日八時間、週休二日制だ」


「クソホワイトじゃねぇか……っ」


 まぁ、たまに残業とかはあるけど……。

 うちの福利厚生は、世界でもトップクラスだと思う。


「その理想郷ってのは、クライン王国にあるのか?」


「悪いが、街の在処は機密事項でな。ただ、住民の数は五千を超えており、高い満足度を誇っている、と言っておこう」


「ふむ、なるほどのぅ」


 先日ルビーの提案で実施された、『ボイドタウン生活調査』によると――住民の満足度は、なんと驚異の100%!

 凄いね、不正の臭いがプンプンだ。


 その後、どんな酒が売っているのか、ドワーフ差別はあるのかなど……いくつかの質問を経て、ついに決断が下される。


「では、採決を取るぞ。ホロウの街――理想郷に移住するか否か。賛成の者は挙手を」


 ドドンの声に応じ、


「「「おぅ!」」」


 全員が一斉に手をあげた。


「――よし、決まりじゃな!」


 ドドンが微笑むと同時、


「今日はめでたい日じゃ! しこたま呑まねばな!」


「何を言う、いつも呑んだくれておるじゃろう!」


「がっはっはっ、(ちげ)ぇねぇ!」


 どんちゃん騒ぎが始まった。


 トントン拍子に話が進んで、こちらとしては助かるんだけど……一つ気になることがあった。


「俺のことを疑わないのか?」


 ボクの持ち掛けた話は、ドワーフ族にとっておいしいものだ。

 騙されている、とは思わないのだろうか?


「確かに、あんたは邪悪な顔をしているが……ゾルドラ家のクズどもとは違う!」


「あの豪快な呑みっぷりを見りゃわかるってもんよ!」


「『蟒蛇(うわばみ)のホロウ』を疑うわけねぇ!」


 どうやらボクは、自分が思っているよりも、ドワーフの信頼を得ていたらしい。

 まさか第四章の『呑み比べ』が、こんなところで活きるとは……僥倖(ぎょうこう)だね。


「つーわけで、よろしく頼むぜ、ホロウの旦那!」


 ドドンが無骨な手を伸ばし、


「こちらこそ、よろしく頼む」


 ボクはそれをしっかりと掴んだ。


 っとまぁそういうわけで、トネリ洞窟のドワーフたちは、ボイドタウンに移住し――現在に至る。


(よしよし、いい具合に稼働しているね!)


 色欲の魔女リゼを連れて、鍛冶工房を視察していると、


「おぅ大将、ここは最高の場所だな!」


「酒はうまいし、治安もいいし、亜人差別もねぇ!」


「自由に外を歩き回れるなんて、まるで夢のような話じゃぜ!」


 すれ違うドワーフたちから、絶賛の言葉が寄せられた。


(ふふっ、そうだろうそうだろう?)


 自分の街を褒められるのは、思いのほかに気分がイイものだった。

 嬉しい気持ちに包まれながら、工房の最奥へ向かうとそこには――ドワーフ族の長がいた。


「やぁドドン」


「ん……おぅ、ホロウの旦那じゃねぇか!」


「三日ぶりだね。もう街には慣れた?」


「あぁ、ここはまさに理想郷じゃぜ!」


「ふふっ、それはよかった」


 軽く世間話をしていると、ドドンがボリボリと後頭部を掻いた。


「ときに旦那、一ついいか?」


「なに?」


「そっちの別嬪(べっぴん)さんは、どこぞのお姫様じゃ……?」


 ドワーフたちはみんな、リゼに釘付けとなっていた。

 彼らは種族的特性として『女好き』だから、仕方のないことだろう。


「色欲の魔女リゼ、こう見えてけっこう強いから、変なことをしちゃ駄目だよ?」


「私はボイドの(モノ)、妙な勘違いはしないようにね?」


 リゼは柔らかく微笑みながら、威嚇とばかりに帯電してみせた。


「「「お、おぅ……っ」」」


 魔法に疎いドワーフにも、魔女の強さは伝わったらしく……ドドンたちは顔を引き()らせた。


「挨拶はこの辺りにして、そろそろ『本題』へ入ろうか」


 ボクはコホンと喉を鳴らし、みんなの注目を集める。


「キミたちを雇ったのには、二つの理由があってね。一つは、高品質な武具を量産してもらうこと。そしてもう一つは――『原初の剣』を打ってもらうこと」


「原初の剣……まさか!?」


「前にも一度、見せたっけね」


 右腕を漆黒の渦に突っ込み、『自慢のコレクション』を取り出す。


「――神魔断罪剣(じんまだんざいけん)。遥か原初の時代、神が打ったとされる、至高の一振りだ」


「「「おぅふ……っ」」」


 ドドンたちの口から、(つや)っぽい吐息が漏れた。


「これは刀剣における一つの到達点。キミたちにはいつか、このクラスの武具を打ってもらいたい」


「う、打ちてぇ……っ」


「確かホロウの旦那は、『原初の製法』を知っているんじゃったな!?」


「頼む、教えてくれ! どうすれば、あんな剣を打てるようになるんじゃ!?」


 大興奮するドワーフたちへ、シンプルな答えを伝える。


「『原初の剣』に至る道は一つ――ただひたすらに打つことだ。と言っても、ゾルドラ家が命じたような安い仕事はいらないよ? 今の自分が打てる、最高の武具を作り続けるんだ」


 努力(レベリング)の成果は、『質』×『量』。

 雑な仕事を繰り返して、数だけをこなしても駄目。

 一つの武具に没頭して、時間を掛け過ぎても駄目。


 大切なのは、バランスだ。


「ボクは、キミたちが最高の仕事ができるよう、完璧なバックアップ態勢を用意する。手始めに、『ランキング制度』を作ってみた」


「「「ランキング制度……?」」」 


「そっ。人間、普通に仕事をするだけじゃ、どうしてもダレてしまうからね。修業(レベリング)の効率を上げるために『競争(ゲーム性)』と『人参(インセンティブ)』を取り入れるんだ」


 人差し指をピンと立て、簡単に説明を行う。


「キミたちはこれから、修業と労働を兼ねて、大量の武具を打つことになるんだけど……。そのうえで月に一つ、自分の打った『最高傑作』を提出してもらう。ボクがそれを<鑑定(アプレーザル)>で評価し、順位を付けていくんだ」


「「「ふむ」」」


「そして、その月で最も優れた武具を打った者、すなわち『月間第一位』を獲ったドワーフには――これ(・・)をプレゼントしよう!」


 右手を漆黒の渦に突っ込み、『とある素材』をバッと引き抜く。


 次の瞬間、


「「「な、なんと……っ!?」」」


 ドワーフたちに衝撃が走った。

 7月のランキング第1位の報酬、それは――『夜龍(よりゅう)の牙』。

 第三章の途中、闇オークションのイベントで()り落としたモノだ。


「あれはまさか、夜龍の牙……!?」


「市場価格2000万を超える『原初の素材』……っ」


「な、なんと豪華な景品じゃ……ッ」


 ドワーフたちの視線は、夜龍の牙に釘付けだ。

 どうやら『鍛冶師の血』が騒いでいるっぽいね。


「もちろん、ランキング報酬は、これだけじゃないよ? 第2位~第10位にも、豪華なモノを用意している。……どうかな、ちょっとした動機付けになったら嬉し――」


 刹那(せつな)


「「「――うぉおおおおー!」」」


 凄まじい雄叫びが、虚空界に木霊する。


「最っ高じゃ! ここは鍛冶師の理想郷――否、天国じゃ!」


「ホロウの旦那! あんたには、感謝の言葉もねぇぞぃ……!」


「やるぞ、やるぞやるぞやるぞ! 夜龍の牙は、儂がいただく!」


 ドワーフたちのモチベーションが限界を突破した。


(ふふっ、これは想像以上だね!)


 彼らなら、本当に原初の剣を打ってくれるかもしれない。


 ちなみに……この月間報酬(ごほうび)は元々、ドワーフたちにプレゼントする予定の素材だ。

 ただ、そのまま「はいどうぞ」と渡しても面白くないので、勤労意欲を煽るための人参(にんじん)にさせてもらった。


(ボクは生産性が上がって嬉しいし、ドワーフたちも遣り甲斐が増して嬉しい)


 みんなが幸せになる、Win-Winのシステムだね。


 ボクが満足気に頷いていると、服の袖がちょいちょいと揺れた。


「ねぇボイド、私に『手伝ってほしいこと』があるんじゃなかったの?」


 手持無沙汰のリゼが、所在(しょざい)なさげに口を開く。


「うん、キミに頼みたいのはここからなんだ」


 ボクはそう言いながら、ドワーフの族長に目を向ける。


「ドドン、これからちょっと実験したいことがあってさ。同じ(・・)技量(・・)のド(・・)ワー(・・)フを(・・)二人(・・)、ここに呼んでもらえないかな?」


「あぁ、お安い御用じゃ」


 彼はコクリと頷き、ドワーフAとBを連れてきてくれた。


 今からこの二人には、『剣の強化』をしてもらう。

 市販の剣に魔水晶を打ち込み、魔法攻撃力を高めるという、ロンゾルキアの世界で一般的な鍛冶だ。


「それじゃ、始めてくれ」


 ボクの言葉を受け、


「「おぅ!」」


 二人のドワーフは、作業に取り掛かった。


 まずは鍛冶炉(かじろ)で剣を熱し、刀身が橙色(だいだいいろ)になったところで、サッと金床(かなとこ)へ移し――魔水晶をあてがえて打つ・打つ・打つ。

 鉄の(つち)が振り下ろされるたび、甲高い音が響き、火花が散った。


(おぉー……っ。(なま)の鍛冶は、迫力があるね!)


 灼熱の刃に魔水晶が溶け、淡い光がじんわりと滲み出すと、


「「――よしっ!」」


 ドワーフA・Bは、同じタイミングで鍛錬(たんれん)を終え、魔力の籠った錬金溶液に(ひた)した。


 ジュゥーっという唸り声が響き、白い蒸気がモウモウと立ち昇る中、


「リゼ、今だよ」


「えぇ――<未来の色見(いろみ)>」


 色欲の魔女が、ドワ(・・)ーフ(・・)Aに(・・)のみ(・・)固有魔法を使った。


 その結果、とんでもないことが起きる。


(ふふっ、やっぱり(・・・・)そうだ!)


 ボクは微笑み、


「「「な、なんと……!?」」」


 ドドンたちは驚愕に目を見開く。


 ドワーフAの剣は、刀身に強大な魔力が宿った素晴らしい一振り。

 ドワーフBの剣は、刃先に薄っすらと魔力の走ったまずまずの一振り。

 同じレベルの鍛冶師が、同じランクの素材を使い、同じ設備で打ったにもかかわらず、その仕上がりには雲泥(うんでい)の差が生まれていた。


(ロンゾルキアの鍛冶には、『ランダム性』がある)


 その内訳は、失敗・成功・大成功・超成功・極大(きょくだい)成功の五段階、ゲームにおける定番の設定だ。


(リゼの<未来の色見>は、因果干渉系の固有魔法。『最善』と『最悪』の未来を選択・実現できる……)


 この特異な力を鍛冶に応用できないかなと考え、ちょっと実験したみたところ――結果は大成功!


「ホロウの旦那、これはいったいどういうことだ!?」


 混乱するドドンへ、簡単に説明する。


「リゼは<未来の色見>という珍しい魔法が使えてね。因果律に干渉して、最高の結果を引き出せるんだ」


「い、いんがりつ……?」


「えーっと、『運をあげる魔法』ってところかな? とにかく、彼女の魔法を受ければ、イイ鍛冶ができるんだよ」


「ほぉ、そりゃ凄いのぅ!」


 ドワーフは魔法に(うと)い種族だから、これぐらいザックリした説明の方が、きっとわかりやすいだろう。


(市販の武具を軽く強化しただけなのに、けっこう性能が上がるもんだなぁ……)


 ドワーフAの打った剣には、極大成功を引いたそれには、高い魔法攻撃力が宿っている。

 もちろん、神魔断罪剣とは比較にもならないけど……王国軍の武具よりも遥かに高性能だ。


(ラグナの呼び出した不死の軍隊(スケルトン)に、リゼとドワーフの作った上質な武具を持たせれば、圧倒的な軍事力になるぞ!)


 ボクがそんなことを考えていると、リゼが「ハッ」と息を呑んだ。


「ねぇボイド、私に頼みたいことってもしかして……」


「うん。キミにはここで、ドワーフと一緒に『鍛冶』を担当してもらいたい」


「嫌よ! どうして私が、こんな暑苦しい場所で、そんな面倒なことをしなくちゃいけないの!」


 彼女は口を曲げ、異議を申し立てた。

 でも大丈夫、この反応は想定の範囲内だ。


「これはリゼにしか頼めない、とても大切な仕事なんだ」


「……私にしか……?」


「あぁ、キミだから」


「ふ、ふーん……そう、なんだ……っ」


 魔女は満更でもなさそうな顔で、黒紫(くろむらさき)のロングヘアを指で(いじ)る。


「リゼ、お願いできないか?」


 彼女は押しに弱い。

 熱意を持って頼み込めば、ある程度のことは聞いてくれる。


「……もぅ、ボイドがそこまで言うなら仕方ないわね」


「ありがとう」


「でも、一つだけ条件があるわ」


「なに?」


 そんな風に聞き返しつつも、だいたいの予想はついている。


(色欲の魔女は美しいモノが――特に『黄金』が大好きだ)


 おそらく相応の(きん)を要求してくるだろう。


 当然、これも想定の範囲内。

 こうなることを見越して、大量の金塊を備蓄(びちく)している。


「私が鍛冶を手伝うことで、あなたの役に立てたら――」


「ボクの役に立てたら?」


「……手……」


「『て』?」


「手を繋いで……くれませんか?」


 彼女は頬を真っ赤に染めながら、とても可愛いらしいお願いを口にした。


(が、は……っ)


 完全な不意打ち。

 死角からぶん殴られた。

 あまりにも純情過ぎる願いに。


(ぐっ、マズい……ッ)


 強烈な『情欲の波』が、怒涛の如く押し寄せる。

 純粋無垢なリゼをこのまま連れ去り、自分色に染めたくなってしまった。


(色欲の魔女は、『超絶純情(ピュア)』だ……っ)


 公式の実施した『純情なヒロインランキング』で堂々の第一位。

 煽情的な服を着ている癖に、挑発的な台詞を吐く癖に、中身はピュアッピュアの乙女。

 清楚ビッチ(純情)という相反する魅力を持つ、ロンゾルキアでも屈指の人気ヒロインだ。


(だが待て、リゼに手を出すのは……あれ?)


 ……思ったより、悪くないかも。


 彼女は性格に難はあるけど、惚れた相手に尽くすタイプだ。

 明るく快活で誠実な努力家、きっといいお嫁さんになるだろう。


(感情激重ダイヤ・不憫の女王ニア・被虐体質エリザ・破産確定の馬カス・未亡人セレスさん、第一章~第五章のヒロインの中じゃ、かなりイイ方なんじゃないだろうか?)


 そこまで考えたところで、とある欠点が脳裏を(よぎ)る。


(いやでも、『超束縛するタイプ』なんだよな……)


 リゼは『色欲』の名を冠する癖に、身持ちと貞操が非常に堅く、『浮気のライン』が恐ろしく低い。

 他の女性キャラと出掛けるのはおろか、同じ空間で喋ることさえ許さない。


(ロンゾルキアのヒロインは、みんな基本的に重たいんだけど……)


 その中でも、かなり重いタイプだ。


 えっ、ダイヤさん?

 彼女は別格だよ。

 同じ次元で話をしちゃいけない。


「ふぅ……っ」


 思考をリゼから他のヒロインに飛ばし、ちょっとばかし時間を稼いだことで、情欲の波が収まってきた。


「いいよ。リゼがこの鍛冶工房で働いて、ボクの役に立ってくれるのなら――手を繋ごう」


「ほ、ほんとに? 約束だからね!?」


「あぁ、<契約(コントラ)>を結ぼう」


「えへへ、やったぁ……っ」


 彼女はそう言って、世界で一番幸せそうに微笑んだ。


(……ほんと可愛いな)


 ロンゾルキアのヒロインは、みんな途轍(とてつ)もなく魅力的だ。


「それじゃリゼ、頑張ってね」


「えぇ、任せてちょうだい!」


 その後、ボクは<虚空渡り>を使い、ハイゼンベルク家の自室に戻る。


「ふぅ……疲れた」


 家族会議・街の視察・魔女同士の戦闘(イベント)に加え、リゼの<未来の色見>×ドワーフの鍛冶の実験など……中々に濃密な時間だった。


(でもこれで、ボイドタウンの運営は、しばらく手放しでオーケーだね!)


 この先はひたすら、第六章の攻略に専念できる。


(さて、明日からついに『王選』が始まる……) 


 ボクが王位を簒奪(さんだつ)するには――やっぱりあの(・・)王族(・・)と組むのが一番だろう!


【※大切なお知らせ】

本日、極悪貴族のコミカライズが、ニコニコ漫画(https://manga.nicovideo.jp/comic/77864)とカドコミ(https://comic-walker.com/detail/KC_008774_S)で始まりました!(こちら無料のWeb連載です!)

ホロウや馬カスが、『圧倒的な超画力』で描かれているので、どうかぜひ見てみてください!

どちらの漫画サイトも登録なしで読めるのですが……アカウントを持っている方は、本作を『お気に入り登録』して、『いいね』ボタンを押して応援いただけると嬉しいです!


また先日、本作の書籍版第1巻が、電撃文庫より発売しました!

ホロウの物語を最後まで描くには、破滅(うちきり)の回避が必要不可欠……っ。

っというわけで読者の皆様、本作を応援=買い支えていただけると嬉しいです!

一人一冊お買い上げいただければ、きっとアニメ化まで届くので、どうか何卒お願いします……ッ。


では、私は来週水曜日に更新予定の第5話『騎士の盟約』の執筆に戻ります!

(↓下の『☆で称える』の+ボタンを3回押して、応援いただけると嬉しいです!)

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書籍版第1巻、電撃文庫より、2026年3月10日発売!


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― 新着の感想 ―
おめでとうございます おつかれさまです これからもおねがいします
コミカライズおめでとうございます。 カドコミ見ました。ウマカスがすでに出来上がってましたね。( *´艸)
感想一覧
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