第4話:清楚ビッチ(純情)【※漫画版、無料のWeb連載開始!】
【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】
Web版の更新が空いてしまい、大変申し訳ございません……っ。
実は第1巻の売上が絶好調なため、大急ぎで第2巻の原稿を用意せねばならず……死ぬ気で書きまくっていました。
っというわけで、書籍版第2巻7月10日発売決定!(大量の新規書き下ろしエピソードあり!)
さらに今後Web版は、【最低でも毎週水曜日】に更新させていただきます!(定期更新です!)
そしてそして――本日なんと!
ホロウの物語の漫画が、ニコニコ漫画(https://manga.nicovideo.jp/comic/77864)とカドコミ(https://comic-walker.com/detail/KC_008774_S)にて、無料で読めるようになりました!(第1話は超たっぷり45ページ!)
ホロウはもちろん、馬カスも絶好調なので、どうかぜひ見てみてください!
どちらの漫画サイトも登録なしで読めるのですが……アカウントを持っている方は、本作を『お気に入り登録』して、『いいね』ボタンを押して応援いただけると嬉しいです!
ボクは色欲の魔女リゼを連れて、ボイドタウンの『工業地区』を進む。
一応、エンティアにも声を掛けたんだけど……「ビリビリ女と一緒なんてごめんだわ」と断られてしまった。
人間、合う合わないがあるから、こればかりは仕方ないね。
目的地へ向かう道中、リゼが話し掛けてきた。
「……ねーぇ」
「なに?」
「私たちってさ、その……『家族』、なのよね?」
「うん、そうだよ」
ボイドタウンのみんなは、ボクの大切な家族だ。
「前にも少し話したと思うんだけど……。私、小さいころからの『夢』があるの」
「どんな夢?」
「結婚式は海の見える小さな教会であげたいなぁって」
「いいんじゃない、ロマンチックで」
「ほ、ほんと? ありがと……っ」
リゼは頬を赤く染め、幸せそうに微笑んだ。
その後、子どもは何人欲しいかとか、仕事と家庭の優先順位とか……。
まるで夫婦のような話をしながら歩いていると、正面に木造二階建ての立派な建物が見えてきた。
「さっ、着いたよ」
「ここは……?」
「ボイドタウンの新施設、『鍛冶工房』だ」
扉をノックして中に入るとそこでは、大勢のドワーフたちが武具を打っていた。
「洞窟に住むドワーフが、どうしてこんな街の中に……!?」
「ふふっ、いろいろとあってね」
トネリ洞窟のドワーフたちは全員、ボイドタウンに住むこととなった。
当然、拉致ってきたわけじゃない。
ボクは人権派の極悪貴族だからね。
他の凶悪な犯罪者と違い、ドドンたちは自らの意思で、虚空界に移住すると決めたのだ。
(ドワーフは鍛冶師、代表的な『生産職』)
その戦闘力は極めて低く、魔獣と遭遇した場合、逃げることしかできない。
さらに人界では、亜人差別が蔓延っており、人間社会に上手く馴染めない。
だから彼らは、狭い洞窟の中で一生を過ごす。
外へ出るのは、街へ酒を買いに行くときなど、特別な事情があるときだけだ。
ボクは思った。
(どうせ洞窟から出られないのなら、ずっと外敵に怯え続けるぐらいなら、安全なボイドタウンに引っ越した方がよくない?)
もちろん、デメリットもある。
虚空界に入ったが最後、二度と娑婆には戻れない。
でも、広くて賑やかな街or狭くて物寂しい洞窟。
どちらが住みやすいかと問われれば……個人的には、前者だと思う。
(それに何より、ドワーフに武具の製造を頼むとき、わざわざトネリ洞窟まで行くのって、地味に面倒なんだよね……)
彼らとは今後も長い付き合いになるし、ボイドタウンにいてくれた方が捗る。
っというわけで三日前――第六章が始まってすぐ、ドワーフの族長に交渉を持ち掛けた。
「ドドンよ、『理想郷』に興味はないか?」
「理想郷ぉ? 急になんの話だ?」
「実は今、とある秘境に街を作っていてな。腕の立つ鍛冶師を探している」
「そらぁつまり……」
「あぁ、ドワーフ族を招待したい」
ドワーフは典型的な直情型だから、下手に言葉を飾らず、単刀直入に用件を伝える。
「こちらが望むのは、理想郷への移住とトネリ洞窟の採掘権だ。その見返りとして、最高の労働環境・月額制の給与制度・万全の治安を提供しよう」
「ふむ……悪い話じゃねぇな」
「しかし、理想郷は『片道切符』。一度足を踏み入れたが最後、元の世界には戻れない。このデメリットを踏まえたうえで考えてくれ」
その瞬間、ドドンの顔が固まった。
「二度と、か……?」
「あぁ、もう娑婆の空気は吸えん」
将来、この方針が変わる可能性はゼロじゃない。
特にドワーフ族みたく善良な協力者には、『外出制度』的なモノを設けたいと考えている。
しかし、予定はあくまで未定。後々トラブルになっても嫌だし、厳しめの条件を伝えることにした。
「うぅむ……少し時間をくれ。儂だけでは判断できん事案じゃ」
ほどなくして、ドワーフ族が全員参加する、緊急会議が開かれた。
「――っというわけじゃ。ホロウの作った新しい街に移住するかどうか、皆の忌憚なき意見を聞かせてくれ」
ドドンの説明が終わると、小さくないざわめきが起こった。
「おいおい、街に住めるってマジか!?」
「儂は行くぞ! この湿っぽい洞窟とおさらばじゃ!」
「待て、逸るな。トネリの採掘権は、儂等の生命線だぞ?」
「しかし、元の世界に帰れんとは、いったいどういうことだ……?」
酒を片手に議論しているのが、『Theドワーフ』って感じで面白い。
(さて、ボクも参加させてもらおうかな)
せっかくここまで来たんだし、手持無沙汰ってのもアレだしね。
「ドワーフ諸君、此度の理想郷移住に関して、何か質問のある者はいるか?」
ボクが質問を募ると、バババッと手があがった。
「ホロウさんよぉ、月額払いってぇ話だが、具体的にいくらなんだ?」
「表の世界換算で50万ゴルドほどと思ってくれ」
「そ、そんなにもらえんのかっ!?」
ボクは「仕事には相応の対価を支払うべき」という考えなので、自分が適正だと思う額を提示しただけなんだけど……。
これまで人間に搾取されてきたドワーフにとって、かなりの大金だったらしい。
「奴隷のように働かされるとか?」
「一日八時間、週休二日制だ」
「クソホワイトじゃねぇか……っ」
まぁ、たまに残業とかはあるけど……。
うちの福利厚生は、世界でもトップクラスだと思う。
「その理想郷ってのは、クライン王国にあるのか?」
「悪いが、街の在処は機密事項でな。ただ、住民の数は五千を超えており、高い満足度を誇っている、と言っておこう」
「ふむ、なるほどのぅ」
先日ルビーの提案で実施された、『ボイドタウン生活調査』によると――住民の満足度は、なんと驚異の100%!
凄いね、不正の臭いがプンプンだ。
その後、どんな酒が売っているのか、ドワーフ差別はあるのかなど……いくつかの質問を経て、ついに決断が下される。
「では、採決を取るぞ。ホロウの街――理想郷に移住するか否か。賛成の者は挙手を」
ドドンの声に応じ、
「「「おぅ!」」」
全員が一斉に手をあげた。
「――よし、決まりじゃな!」
ドドンが微笑むと同時、
「今日はめでたい日じゃ! しこたま呑まねばな!」
「何を言う、いつも呑んだくれておるじゃろう!」
「がっはっはっ、違ぇねぇ!」
どんちゃん騒ぎが始まった。
トントン拍子に話が進んで、こちらとしては助かるんだけど……一つ気になることがあった。
「俺のことを疑わないのか?」
ボクの持ち掛けた話は、ドワーフ族にとっておいしいものだ。
騙されている、とは思わないのだろうか?
「確かに、あんたは邪悪な顔をしているが……ゾルドラ家のクズどもとは違う!」
「あの豪快な呑みっぷりを見りゃわかるってもんよ!」
「『蟒蛇のホロウ』を疑うわけねぇ!」
どうやらボクは、自分が思っているよりも、ドワーフの信頼を得ていたらしい。
まさか第四章の『呑み比べ』が、こんなところで活きるとは……僥倖だね。
「つーわけで、よろしく頼むぜ、ホロウの旦那!」
ドドンが無骨な手を伸ばし、
「こちらこそ、よろしく頼む」
ボクはそれをしっかりと掴んだ。
っとまぁそういうわけで、トネリ洞窟のドワーフたちは、ボイドタウンに移住し――現在に至る。
(よしよし、いい具合に稼働しているね!)
色欲の魔女リゼを連れて、鍛冶工房を視察していると、
「おぅ大将、ここは最高の場所だな!」
「酒はうまいし、治安もいいし、亜人差別もねぇ!」
「自由に外を歩き回れるなんて、まるで夢のような話じゃぜ!」
すれ違うドワーフたちから、絶賛の言葉が寄せられた。
(ふふっ、そうだろうそうだろう?)
自分の街を褒められるのは、思いのほかに気分がイイものだった。
嬉しい気持ちに包まれながら、工房の最奥へ向かうとそこには――ドワーフ族の長がいた。
「やぁドドン」
「ん……おぅ、ホロウの旦那じゃねぇか!」
「三日ぶりだね。もう街には慣れた?」
「あぁ、ここはまさに理想郷じゃぜ!」
「ふふっ、それはよかった」
軽く世間話をしていると、ドドンがボリボリと後頭部を掻いた。
「ときに旦那、一ついいか?」
「なに?」
「そっちの別嬪さんは、どこぞのお姫様じゃ……?」
ドワーフたちはみんな、リゼに釘付けとなっていた。
彼らは種族的特性として『女好き』だから、仕方のないことだろう。
「色欲の魔女リゼ、こう見えてけっこう強いから、変なことをしちゃ駄目だよ?」
「私はボイドの妻、妙な勘違いはしないようにね?」
リゼは柔らかく微笑みながら、威嚇とばかりに帯電してみせた。
「「「お、おぅ……っ」」」
魔法に疎いドワーフにも、魔女の強さは伝わったらしく……ドドンたちは顔を引き攣らせた。
「挨拶はこの辺りにして、そろそろ『本題』へ入ろうか」
ボクはコホンと喉を鳴らし、みんなの注目を集める。
「キミたちを雇ったのには、二つの理由があってね。一つは、高品質な武具を量産してもらうこと。そしてもう一つは――『原初の剣』を打ってもらうこと」
「原初の剣……まさか!?」
「前にも一度、見せたっけね」
右腕を漆黒の渦に突っ込み、『自慢のコレクション』を取り出す。
「――神魔断罪剣。遥か原初の時代、神が打ったとされる、至高の一振りだ」
「「「おぅふ……っ」」」
ドドンたちの口から、艶っぽい吐息が漏れた。
「これは刀剣における一つの到達点。キミたちにはいつか、このクラスの武具を打ってもらいたい」
「う、打ちてぇ……っ」
「確かホロウの旦那は、『原初の製法』を知っているんじゃったな!?」
「頼む、教えてくれ! どうすれば、あんな剣を打てるようになるんじゃ!?」
大興奮するドワーフたちへ、シンプルな答えを伝える。
「『原初の剣』に至る道は一つ――ただひたすらに打つことだ。と言っても、ゾルドラ家が命じたような安い仕事はいらないよ? 今の自分が打てる、最高の武具を作り続けるんだ」
努力の成果は、『質』×『量』。
雑な仕事を繰り返して、数だけをこなしても駄目。
一つの武具に没頭して、時間を掛け過ぎても駄目。
大切なのは、バランスだ。
「ボクは、キミたちが最高の仕事ができるよう、完璧なバックアップ態勢を用意する。手始めに、『ランキング制度』を作ってみた」
「「「ランキング制度……?」」」
「そっ。人間、普通に仕事をするだけじゃ、どうしてもダレてしまうからね。修業の効率を上げるために『競争』と『人参』を取り入れるんだ」
人差し指をピンと立て、簡単に説明を行う。
「キミたちはこれから、修業と労働を兼ねて、大量の武具を打つことになるんだけど……。そのうえで月に一つ、自分の打った『最高傑作』を提出してもらう。ボクがそれを<鑑定>で評価し、順位を付けていくんだ」
「「「ふむ」」」
「そして、その月で最も優れた武具を打った者、すなわち『月間第一位』を獲ったドワーフには――これをプレゼントしよう!」
右手を漆黒の渦に突っ込み、『とある素材』をバッと引き抜く。
次の瞬間、
「「「な、なんと……っ!?」」」
ドワーフたちに衝撃が走った。
7月のランキング第1位の報酬、それは――『夜龍の牙』。
第三章の途中、闇オークションのイベントで競り落としたモノだ。
「あれはまさか、夜龍の牙……!?」
「市場価格2000万を超える『原初の素材』……っ」
「な、なんと豪華な景品じゃ……ッ」
ドワーフたちの視線は、夜龍の牙に釘付けだ。
どうやら『鍛冶師の血』が騒いでいるっぽいね。
「もちろん、ランキング報酬は、これだけじゃないよ? 第2位~第10位にも、豪華なモノを用意している。……どうかな、ちょっとした動機付けになったら嬉し――」
刹那、
「「「――うぉおおおおー!」」」
凄まじい雄叫びが、虚空界に木霊する。
「最っ高じゃ! ここは鍛冶師の理想郷――否、天国じゃ!」
「ホロウの旦那! あんたには、感謝の言葉もねぇぞぃ……!」
「やるぞ、やるぞやるぞやるぞ! 夜龍の牙は、儂がいただく!」
ドワーフたちのモチベーションが限界を突破した。
(ふふっ、これは想像以上だね!)
彼らなら、本当に原初の剣を打ってくれるかもしれない。
ちなみに……この月間報酬は元々、ドワーフたちにプレゼントする予定の素材だ。
ただ、そのまま「はいどうぞ」と渡しても面白くないので、勤労意欲を煽るための人参にさせてもらった。
(ボクは生産性が上がって嬉しいし、ドワーフたちも遣り甲斐が増して嬉しい)
みんなが幸せになる、Win-Winのシステムだね。
ボクが満足気に頷いていると、服の袖がちょいちょいと揺れた。
「ねぇボイド、私に『手伝ってほしいこと』があるんじゃなかったの?」
手持無沙汰のリゼが、所在なさげに口を開く。
「うん、キミに頼みたいのはここからなんだ」
ボクはそう言いながら、ドワーフの族長に目を向ける。
「ドドン、これからちょっと実験したいことがあってさ。同じ技量のドワーフを二人、ここに呼んでもらえないかな?」
「あぁ、お安い御用じゃ」
彼はコクリと頷き、ドワーフAとBを連れてきてくれた。
今からこの二人には、『剣の強化』をしてもらう。
市販の剣に魔水晶を打ち込み、魔法攻撃力を高めるという、ロンゾルキアの世界で一般的な鍛冶だ。
「それじゃ、始めてくれ」
ボクの言葉を受け、
「「おぅ!」」
二人のドワーフは、作業に取り掛かった。
まずは鍛冶炉で剣を熱し、刀身が橙色になったところで、サッと金床へ移し――魔水晶をあてがえて打つ・打つ・打つ。
鉄の槌が振り下ろされるたび、甲高い音が響き、火花が散った。
(おぉー……っ。生の鍛冶は、迫力があるね!)
灼熱の刃に魔水晶が溶け、淡い光がじんわりと滲み出すと、
「「――よしっ!」」
ドワーフA・Bは、同じタイミングで鍛錬を終え、魔力の籠った錬金溶液に浸した。
ジュゥーっという唸り声が響き、白い蒸気がモウモウと立ち昇る中、
「リゼ、今だよ」
「えぇ――<未来の色見>」
色欲の魔女が、ドワーフAにのみ固有魔法を使った。
その結果、とんでもないことが起きる。
(ふふっ、やっぱりそうだ!)
ボクは微笑み、
「「「な、なんと……!?」」」
ドドンたちは驚愕に目を見開く。
ドワーフAの剣は、刀身に強大な魔力が宿った素晴らしい一振り。
ドワーフBの剣は、刃先に薄っすらと魔力の走ったまずまずの一振り。
同じレベルの鍛冶師が、同じランクの素材を使い、同じ設備で打ったにもかかわらず、その仕上がりには雲泥の差が生まれていた。
(ロンゾルキアの鍛冶には、『ランダム性』がある)
その内訳は、失敗・成功・大成功・超成功・極大成功の五段階、ゲームにおける定番の設定だ。
(リゼの<未来の色見>は、因果干渉系の固有魔法。『最善』と『最悪』の未来を選択・実現できる……)
この特異な力を鍛冶に応用できないかなと考え、ちょっと実験したみたところ――結果は大成功!
「ホロウの旦那、これはいったいどういうことだ!?」
混乱するドドンへ、簡単に説明する。
「リゼは<未来の色見>という珍しい魔法が使えてね。因果律に干渉して、最高の結果を引き出せるんだ」
「い、いんがりつ……?」
「えーっと、『運をあげる魔法』ってところかな? とにかく、彼女の魔法を受ければ、イイ鍛冶ができるんだよ」
「ほぉ、そりゃ凄いのぅ!」
ドワーフは魔法に疎い種族だから、これぐらいザックリした説明の方が、きっとわかりやすいだろう。
(市販の武具を軽く強化しただけなのに、けっこう性能が上がるもんだなぁ……)
ドワーフAの打った剣には、極大成功を引いたそれには、高い魔法攻撃力が宿っている。
もちろん、神魔断罪剣とは比較にもならないけど……王国軍の武具よりも遥かに高性能だ。
(ラグナの呼び出した不死の軍隊に、リゼとドワーフの作った上質な武具を持たせれば、圧倒的な軍事力になるぞ!)
ボクがそんなことを考えていると、リゼが「ハッ」と息を呑んだ。
「ねぇボイド、私に頼みたいことってもしかして……」
「うん。キミにはここで、ドワーフと一緒に『鍛冶』を担当してもらいたい」
「嫌よ! どうして私が、こんな暑苦しい場所で、そんな面倒なことをしなくちゃいけないの!」
彼女は口を曲げ、異議を申し立てた。
でも大丈夫、この反応は想定の範囲内だ。
「これはリゼにしか頼めない、とても大切な仕事なんだ」
「……私にしか……?」
「あぁ、キミだから」
「ふ、ふーん……そう、なんだ……っ」
魔女は満更でもなさそうな顔で、黒紫のロングヘアを指で弄る。
「リゼ、お願いできないか?」
彼女は押しに弱い。
熱意を持って頼み込めば、ある程度のことは聞いてくれる。
「……もぅ、ボイドがそこまで言うなら仕方ないわね」
「ありがとう」
「でも、一つだけ条件があるわ」
「なに?」
そんな風に聞き返しつつも、だいたいの予想はついている。
(色欲の魔女は美しいモノが――特に『黄金』が大好きだ)
おそらく相応の金を要求してくるだろう。
当然、これも想定の範囲内。
こうなることを見越して、大量の金塊を備蓄している。
「私が鍛冶を手伝うことで、あなたの役に立てたら――」
「ボクの役に立てたら?」
「……手……」
「『て』?」
「手を繋いで……くれませんか?」
彼女は頬を真っ赤に染めながら、とても可愛いらしいお願いを口にした。
(が、は……っ)
完全な不意打ち。
死角からぶん殴られた。
あまりにも純情過ぎる願いに。
(ぐっ、マズい……ッ)
強烈な『情欲の波』が、怒涛の如く押し寄せる。
純粋無垢なリゼをこのまま連れ去り、自分色に染めたくなってしまった。
(色欲の魔女は、『超絶純情』だ……っ)
公式の実施した『純情なヒロインランキング』で堂々の第一位。
煽情的な服を着ている癖に、挑発的な台詞を吐く癖に、中身はピュアッピュアの乙女。
清楚ビッチ(純情)という相反する魅力を持つ、ロンゾルキアでも屈指の人気ヒロインだ。
(だが待て、リゼに手を出すのは……あれ?)
……思ったより、悪くないかも。
彼女は性格に難はあるけど、惚れた相手に尽くすタイプだ。
明るく快活で誠実な努力家、きっといいお嫁さんになるだろう。
(感情激重ダイヤ・不憫の女王ニア・被虐体質エリザ・破産確定の馬カス・未亡人セレスさん、第一章~第五章のヒロインの中じゃ、かなりイイ方なんじゃないだろうか?)
そこまで考えたところで、とある欠点が脳裏を過る。
(いやでも、『超束縛するタイプ』なんだよな……)
リゼは『色欲』の名を冠する癖に、身持ちと貞操が非常に堅く、『浮気のライン』が恐ろしく低い。
他の女性キャラと出掛けるのはおろか、同じ空間で喋ることさえ許さない。
(ロンゾルキアのヒロインは、みんな基本的に重たいんだけど……)
その中でも、かなり重いタイプだ。
えっ、ダイヤさん?
彼女は別格だよ。
同じ次元で話をしちゃいけない。
「ふぅ……っ」
思考をリゼから他のヒロインに飛ばし、ちょっとばかし時間を稼いだことで、情欲の波が収まってきた。
「いいよ。リゼがこの鍛冶工房で働いて、ボクの役に立ってくれるのなら――手を繋ごう」
「ほ、ほんとに? 約束だからね!?」
「あぁ、<契約>を結ぼう」
「えへへ、やったぁ……っ」
彼女はそう言って、世界で一番幸せそうに微笑んだ。
(……ほんと可愛いな)
ロンゾルキアのヒロインは、みんな途轍もなく魅力的だ。
「それじゃリゼ、頑張ってね」
「えぇ、任せてちょうだい!」
その後、ボクは<虚空渡り>を使い、ハイゼンベルク家の自室に戻る。
「ふぅ……疲れた」
家族会議・街の視察・魔女同士の戦闘に加え、リゼの<未来の色見>×ドワーフの鍛冶の実験など……中々に濃密な時間だった。
(でもこれで、ボイドタウンの運営は、しばらく手放しでオーケーだね!)
この先はひたすら、第六章の攻略に専念できる。
(さて、明日からついに『王選』が始まる……)
ボクが王位を簒奪するには――やっぱりあの王族と組むのが一番だろう!
【※大切なお知らせ】
本日、極悪貴族のコミカライズが、ニコニコ漫画(https://manga.nicovideo.jp/comic/77864)とカドコミ(https://comic-walker.com/detail/KC_008774_S)で始まりました!(こちら無料のWeb連載です!)
ホロウや馬カスが、『圧倒的な超画力』で描かれているので、どうかぜひ見てみてください!
どちらの漫画サイトも登録なしで読めるのですが……アカウントを持っている方は、本作を『お気に入り登録』して、『いいね』ボタンを押して応援いただけると嬉しいです!
また先日、本作の書籍版第1巻が、電撃文庫より発売しました!
ホロウの物語を最後まで描くには、破滅の回避が必要不可欠……っ。
っというわけで読者の皆様、本作を応援=買い支えていただけると嬉しいです!
一人一冊お買い上げいただければ、きっとアニメ化まで届くので、どうか何卒お願いします……ッ。
では、私は来週水曜日に更新予定の第5話『騎士の盟約』の執筆に戻ります!
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