第58話 歓迎会の準備
オルフィーナさんの見送りを終えた後、俺は一人で家に戻っていた。
何故一人かというと、他の皆は騎士団の拠点に向かったからだ。ソーナの家で、そういう流れになったのである。
途中までは一緒だったので、孤独感はない。だが、俺だけ休むので、少し申し訳ないと思ってしまう。
「さて、スレイドさん」
そんな俺は、今クレッタとリビングにいた。
それは、あることについて、話し合うためである。
そもそも、俺が家にいるのには、ある理由があるのだ。
もちろん、昨日の試合で疲れているからという前提があるが、実はもう一つ家にいる理由がある。
「ソーナさんの歓迎会についてなんですが……」
「ああ、わかっている……」
それは、ファラエスが提案していたソーナの歓迎会の準備を進めるためという理由だ。
昨日、色々と相談した結果、クレッタだけでは大変なので、俺も手伝うことになったのである。
「まずは、食材の買い出しに行くんですが、スレイドさんには、荷物持ちとして、ついて来てもらいたいんです」
「ああ、それなら大得意だ。任せてくれ」
準備の内容は、ほとんどクレッタに任せていた。
歓迎会では、豪華な料理を皆で食べることがメインとなる。その料理を作るのは、クレッタであるため、彼女が指揮を執るのだ。
よって、俺の役目は、そのクレッタの指示に従うことである。
「それでは、早速出かけましょう」
「ああ、わかった」
そんなクレッタの最初の指示は、買い物の荷物持つとして同行することだった。力仕事は、俺が一番活躍できることなので、もちろんついていく。そもそも、今日はクレッタの命令に逆らうつもりなどない。
こうして、俺とクレッタは買い物に向かうのだった。
◇◇◇
俺とクレッタは、買い物に来ていた。
「スレイドさん、大丈夫ですか?」
「ああ、これくらい、どうってことないぜ」
クレッタの買い物は、非常に手際が良く、様々な店を巡っていき、色々なものを買っていったのだ。
合計五人分ということもあり、一つの食材でも、それなりの量を購入しているので、一つの店でも、中々の荷物になっていた。
俺の役割は荷物持ちなので、それを全て持っている。
そんな俺を心配して、クレッタは声をかけてくれるのだ。こういう時には優しいのが、クレッタである。
だが、これくらいで値を上げるようでは、騎士として戦うことなどできない。つまり、俺はまったく問題ないということだ。
「ふふ、頼もしいですね。なら、遠慮なく、どんどん行きますよ?」
「ああ、それも望むところだ」
クレッタは俺の言葉に、笑顔でそう言ってきた。
どうやら、買い物はまだまだ続くらしい。
そんな感じで、俺とクレッタの買い物は続くのだった。
◇◇◇
俺とクレッタは、買い物を終えて、家に帰って来ていた。
「うん、今日もやっぱりうまい」
「ふふ、そうですか? それなら、よかったです」
今は、昼食の最中である。
様々な所を巡ったので、それなりに時間は経っておりクレッタが昼食を作ってくれたのだ。
「でも、あんまり食べ過ぎても駄目かもしれません。今日の夕食は、豪華ですから……」
「いや、クレッタの料理なら、どれだけでも食べられるさ。だから、問題ないとはずだ」
「あらら、嬉しいことを言ってくれますね。でも、流石にどれだけでもは無理ですよ?」
そんな話をしながら、俺とクレッタは昼食を続けるのだった。
◇◇◇
俺とクレッタは、昼食後しばらくして、歓迎会の準備を進めることにした。
歓迎会のことは、クレッタが指揮者であるため、俺は指示を受けている。
「さて、スレイドさんには、食堂の飾りつけをお願いしたいんです。掃除は、皆さんがお見送りに言っている間に終わらせましたから、後は飾りをつけるだけなので……」
「食堂の飾り付けか……」
クレッタから出された指示は、食堂の飾りつけだ。
飾りつけと聞いて、俺は少し不安を覚えていた。
なぜなら、俺はそんなことなど、ほとんどやったことがないからだ。
思えば、今までパーティといった類のことは、ほとんどやったことがなかった気がする。
師匠達と暮らしていた時は、山に籠りきりだったので、誰かを迎えるということもなかった。故に、俺はそういう経験に乏しいのだ。
「スレイドさん、大丈夫ですか?」
そんな俺のことを察してくれたのか、クレッタがそう言ってくれる。
だが、飾りつけくらいできなければ、俺がここにいる意味が、薄くなってしまう。だから、俺は強がらなければならないのだ。
「いや、大丈夫だ。あまりやったことはないが、なんとかしてみせる」
「……いや、それはなんだか不安しかないんですけど……」
俺がそれなりの自信をもって放った台詞は、クレッタの心にあまり響いていなかった。
やはり、心の奥に不安をもっていては、駄目なのかもしれない。
「すまん、あまりわからないんだ。少し、見栄を張った」
「わからないなら、最初からそう言ってくれていいんですよ? 怒ったりしないんですから……」
「いや、ここでクレッタの手を煩わせてしまったら、俺が残った意味がなくなると思ってな……」
「あらら、変な真面目さですね……」
俺が自分の考えを披露すると、クレッタに少し呆れられてしまった。
やはり、素直にクレッタを頼った方がよかったかもしれない。
「……別に、ここで私の手を煩わせてもまったく問題ありませんよ。スレイドさんがいれば手が増えるんですから、私一人よりは早く作業できます。それで、スレイドさんがいてくれる意味は、あるんです」
「そうか……」
落ち込む俺に、クレッタはそんな言葉をかけてくれる。
それは、とてもありがたい言葉であり、俺は思わず感動してしまう程だった。
どうやら、俺の存在はクレッタを頼っても、無意味なものにはならないようだ。
それなら、クレッタを頼りつつ、助けることにしよう。
「さて、それでは一緒に準備を始めましょうか?」
「ああ、わかった。何をすればいいか、ちゃんと教えてくれ」
「もちろんです」
こうして、俺とクレッタは歓迎会の準備を進めるのだった。
◇◇◇
俺はクレッタとともに、歓迎会の準備を進めている。
食堂の飾りつけは、クレッタの指示を受けながら、なんとかすることができた。
「さあ、クレッタ、次はどうすればいいんだ?」
「そうですね……それなら、せっかくなので、料理の手伝いをしてもらいましょうか?」
「料理か……」
クレッタの言葉に、俺は少し考える。
料理に関しては、飾りつけよりは知っていた。ただ、目の前にいるクレッタは、料理の達人である。
そんな達人の手伝いをして、むしろ足を引っ張りかねないか、心配なのだ。
「わかった。あんまり、自信はないから、今度も支持を頼む」
だが、先程クレッタは、手が増えるだけで意味があるといってくれた。
それなら、不安など考えず、クレッタに手を貸すべきだ。
そう思い、俺は言葉を放っていた。
「はい、今回も、きちんと指示しますから、安心してください。そんなに、無理なことは言いませんから……」
「ああ、任せてくれ」
クレッタは笑いながらそう言ってくれたので、俺は力強く返事する。
こうして、俺はクレッタの料理を手伝うのだった。
◇◇◇
俺はクレッタの指示を受けることで、なんとか歓迎会の準備を進めることができた。
食堂は華やかに彩られ、食事も豪勢になっている。
準備を進めていく内に、俺はだんだんと楽しみになっていた。
元々、楽しみだったのだが、ソーナがこれで喜んでくれる姿を想像すると、なんだかわくわくするのだ。
こういうパーティの準備は、そういう側面もあるようである。
とにかく、これで、後はソーナが来るのを待つだけだ。
俺とクレッタは、食堂で待機しながら、皆が帰るのを待つのだった。




