第55話 メイドに迎えられて
「お帰りなさい、スレイドさん」
「ああ、ただいま」
俺は試合が終わった後、家に戻って来ていた。
家に戻ると、クレッタが温かく迎えてくれる。家で誰かが待っていてくれるのは、嬉しいものだ。
「顔を見るに、試合の結果は良かったようですね?」
「え? そんなにわかるのか?」
「ええ、その顔は、負けた時の顔ではありませんよ」
クレッタは俺の顔を見て、そんなことを言ってきた。
どうやら、嬉しんでいるのが顔に出てしまっていたようだ。なんだか、少し恥ずかしい。
「あ、照れなくてもいいんですよ。試合に勝って嬉しいのは、当り前です。ましてや、ソーナさんの結婚がかかっていたんですから……」
「あ、ああ……」
クレッタはさらにそう言ってくれる。
いつもなら俺が照れている時はからかってくるのに、今日は真剣な雰囲気だ。俺としては、それが余計に恥ずかしい。
「何はともあれ、無事に帰って来られたようで、何よりです」
「あ、ありがとう……」
俺が照れているのをわかっていてか、クレッタはこの話を止めてくれた。
これ以上は、きつかったので、とてもありがたい。
「さて、スレイドさん、お風呂の用意もしてありますが、どうしますか?」
「そ、それじゃあ、風呂に入ってくるよ」
「その後に、昼食にしましょうか?」
「ああ、それで頼む」
そんな話をして、俺はクレッタと一旦別れる。
とりあえず、風呂で汗を流してから、色々と考えるとしよう。
◇◇◇
俺は風呂に入ってから、昼食を食べていた。
今日も、クレッタが作ってくれた料理は、とてもおいしい。
試合の後ということもあり、とても空腹だったので、エネルギーが体中に染みわたっていくようだ。
「というか、クレッタも待っていてくれたんだな」
「あ、はい。一人で食べるのは寂しいですからね」
クレッタも、俺と一緒に昼食を食べている。
帰ってきた時点で、昼が少し過ぎたくらいの時間だったのだが、昼食をとっていなかったらしいのだ。
先に食べていてくれてもよかったのだが、ありがたい話である。
「……ありがとう」
「いえ、感謝されるようなことではないですよ。どちらかというと、私が寂しいからという理由ですから……」
「いや、それでも感謝するさ」
クレッタはそう言ってくれるが、俺のために待っていてくれたことは変わらない。それは、とても嬉しいことだ。
だから、感謝するのは間違いではないのである。
「そ、そうですか……それなら、受け取っておきましょう」
クレッタは、少し照れながらそう言った。
案外、ストレートなことに弱いのが、クレッタである。
「あ、そういえば、クレッタに伝えておかなければならないことがあった……」
「え? なんですか?」
「実は、ソーナのことなんだが……」
そこで俺は、ファラエスから聞いたことを思い出した。
明日から、ソーナがこの家に住むことになる。それは、クレッタにも伝えておかなければならないことだった。
住人が増えて一番苦労するのは、クレッタのため、なるべく早く伝えるべきだろう。
「ああ、ソーナさん、家に住むことになったんですか?」
「え?」
しかし、俺が言葉を放つよりも前に、クレッタがそんなことを言ってくる。
まさか、知っていたのだろうか。
「そうだが……どうして、それを?」
「少し前に、お嬢様からそうなるかもしれないという話があったんです。それで、タイミング的に今かなと思いまして……」
「そうだったのか……」
どうやら、ファラエスの中で、事前にソーナを家に住ませるという案はあったらしい。それを、クレッタに伝えていたため、俺が言うことを予測できたということか。
「一応、準備もしてありますから、特に問題はないと思います」
「あ、いや、それならいいんだが……」
「いえ、お伝えして頂き、ありがとうございます」
さらに、事前の準備もできているようだ。
それなら、あまり問題もないだろう。
「でも、クレッタ。料理とか作る量が増えるけど、それは大丈夫なのか?」
「はい、もちろんです。私、料理は大好きなので」
一応、クレッタの負担が増えることの心配もしたが、それも問題ないようだ。
「という訳で、ソーナさんのことは問題ありません」
「なるほどな……」
そんな話をしながら、俺とクレッタの昼食は続くのだった。
◇◇◇
昼食後、俺はしばらく部屋で休んでいた。
すると、部屋の戸が叩かれる。
戸を開けてみると、そこにはクレッタが立っていた。
「クレッタ、どうしたんだ?」
「あ、いえ、もしよかったら、マッサージでもどうかと思いまして……」
「マ、マッサージ?」
どうやら、俺にマッサージをしてくれようと思い、ここに来てくれたようだ。
疲れているし、丁度いいかもしれない。
「それなら、お願いしてもいいか?」
「ええ、もちろんです。そこのベッドでしましょうか? 少し、待っていてください」
「あ、ああ」
俺がお願いすると、クレッタがそう言ってくる。
すると、クレッタはベッドを手早く整え始めた。
素早い手際に、驚いてしまう。
「はい、これで準備完了です」
「さ、流石だな……」
そんなことを考えている内に、クレッタは準備を済ませていた。
そのため、俺はベッドに近づいていく。
「それでは、服を脱いで、ここに寝転んでください」
「え? 服を脱ぐのか?」
「はい、その方がいいですよ?」
「あ、ああ、わかった……」
クレッタにそう言われたため、俺は服を脱ぐ。
なんだか、少し気恥ずかしいが、仕方ない。
「す、すごい、こんな体なんですね」
「あ、あんまりじろじろ見ないでくれないか?」
俺が服を脱ぐと、クレッタがまじまじと見てくる。
それは、流石にやめてもらいたい。
「あ、すみません。それは、駄目でしたね……」
「あ、ああ……うん?」
俺が注意すると、クレッタは申し訳なさそうにする。
そこまではよかった。
しかし、何を思ったのか、クレッタは服を脱ぎ始めたのだ。
一体、何を考えているんだ。
「何をしているんだ?」
「え? いえ、不公平だから、私の体をお見せしようと思いまして……」
「いや、そんなことしなくていい!」
「えへへ、冗談ですよ。流石に、恥ずかしいですからね」
俺が止めると、クレッタは笑顔で笑い始めた。
薄々わかっていたが、冗談だったようだ。
それなら、脱ぐまで待てばよかった。
「……見たかったんですか?」
「い、いや、それは……」
クレッタは少し照れながら、そんなことを聞いてくる。
そんな質問に、答えられる訳がない。
「……いけませんね、マッサージを始めましょう」
「あ、ああ……」
「それでは、そこに寝転がってください」
流石に、申し訳なく思ったのか、クレッタは話を切り上げてくれた。
それは都合がいいので、言われた通り寝転ぶことにする。
「ところで、クレッタはマッサージが得意なのか?」
「え?」
そこで俺は少し気になっていたので、クレッタに聞いてみた。
マッサージと聞いてすぐに受け入れたが、これが初めてとかだったら、色々と心配だ。
そんなことはないとは思うが、一応聞いておきたかった。
「はい、お嬢様にマッサージしてきましたから、腕は確かですよ」
「そ、そうなのか、それなら安心だな……」
どうやら、実績は大いにあるようだ。
これなら、安心してマッサージを受けられそうである。
「ちなみに、お嬢様のあのプロポーションも私のマッサージのおかげです。つまり、揉んだおかげです」
「揉む……」
「ええ、どこがとは言いませんが、揉んだんです……」
クレッタは何か意味深な発言をしてきた。
その情報を得て、俺はどうすればいいのだろうか。
「それじゃあ、そろそろ始めますね」
俺が色々と考えていると、クレッタがマッサージを始める。
結局、その情報はなんだったのか。
それから、俺はクレッタによるマッサージをしばらく受けるのだった。
ちなみに、すごく気持ちよかったので、クレッタの腕は確かである。




