第1話 「始まり」
「なんでこうなったんだろ?」
私は首を傾げてしまう。
「もう戦わないで私がずっと守ってあげるから……」
「あなたを傷つける敵は全部殺す。だからもう何もしないで」
「傷がっ!……ううぅどうしてまだ立っていられるんですか……」
自分の血溜まりの上で私はまた首を傾げるのだった。
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「君には才能があるよ」
「またそれですか?20歳の私相手にそんなにしつこく勧誘するぐらい人手不足なんですか?それとも暇なんですか?」
「君はきっと年齢に左右されない。だから、ならないか?
魔法少女に」
昼ごはんがてらカフェに入ってご飯を食べていたら勝手に相席に座った黒いスーツ姿の男。
その男と会うのも5度目になる。
その度に男は魔法少女になれという。
私は20歳であり、現在大学生。
魔法少女としての全盛期と言われてるの18歳、私は全盛期を超えてから魔法少女になることを求められている。
そして、歳の問題だけじゃなく、単純に大学が忙しいという問題もあって魔法少女になることに乗り気じゃない。
そりゃ今の魔法少女の平均年齢が確か14歳だったのを考えると、私のが暇だろうなとは思うけど。
でも20歳になって魔法少女『ごっこ』というのは恥ずかしいのだ。
しかもその様がテレビ、並びに動画配信サイトにて配信されてしまうのだ。
「なりませんって何度も言ってるじゃないですか。貴重な私のチルい時間を奪わないでくださいよ。」
「君はカフェのオシャレ感に酔っているだけの大学生だろう?それにそんなに暇ならおすすめだよ?魔法少女。1回出動する度に20万円貰えるよ?お家今、お金厳しいんじゃなかったっけ?」
「そういうことがバレてるのが怖いんです!今の所まだ何もされてないので通報してませんが、ほんとちょっとでもそのライン超えるとすぐ通報しますからね?」
「警察に私は捕まえられないよ」
「怖いんです!何故か分からないけど警察が捕まえられない人とか!」
「今回、君が頷くことはないだろうなと思っていた。だから、今回は趣向を変えてみたよ。」
「……趣向を?」
「君、妹がいるそうだね。」
「妹になにかするつもりですか?それなら返す訳にはいかないんですけど。」
「いや、失礼。君は知らないんだな。妹が何をしているのか、教えて貰えていないんだな。なら私から言うことでは無いだろう。今日はここらで失礼しよう。」
「意味深なことだけ言って帰らないでください……ってもういない……」
私が男を見る時男の顔にモヤがかかって見える。
男は私の前から消える時いつもそのモヤが体を包み込んで、姿が見えなくなると消える。今回も同じ手口だろう。
男が騒ぎになっているのは見たことがないので、私の前でだけモヤがかかるようにしてるのだろうか。何にしろやっぱり信用ができない男だ。
「チルい時間は終了……だね」
妹の隠していること、なんだからそれが不穏に思えて、
私はすぐに会計を済ますと真っ直ぐ家に帰った。
今日は土曜日だ。きっと美桜も家にいるだろう。
首を洗って待っとれ。
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カフェを出た時、時間帯はまだ昼だった。それから家に帰って、時間は午後の1時。寝るまで時間があると思うと聞き出すぐらい楽勝じゃんと思っていた。
しかし、
「いい加減言ってよ。お姉ちゃんになんの秘密を隠してるの?」
「お姉ちゃんでも言えません!この秘密だけは!」
「そう言ってもう何時間経ったの?9時間だよ?9時間だからね!?9時間も経ったの!?休みなくなっちゃったじゃん!?早く吐いて!時間は有限だよ!」
「そんなことを言われても……私は絶対この秘密は喋りません!たとえお布団に入る時間になっても喋りません!」
「美桜が吐いてくれるまで、今夜は寝かしません!」
「え?お姉ちゃん?」
「なに?」
「い、いや……お姉ちゃんってそういうとこありますよね……」
「そうだよ。お姉ちゃんは頑固だからね。これから吐くまでずっと一緒にいるから」
「そ、それって、私が一生吐かなかったら、一生一緒にいられるってことですか!?」
「そうなるね!嫌だったら早く吐いて!」
「い、嫌だなんて……そんな……」
「え、お姉ちゃんなにか間違った!?なんで照れてるの!?普通嫌なものじゃないの!?一生姉と一緒なんだよ!?」
「お姉ちゃんとなら、全然嫌じゃないです!」
「そ、そっか。お姉ちゃんはどちらかというと……じゃなかった!ひーみーつはーけー!」
「うるさいわよ!美香、美桜!何時だと思ってるの!」
お母さんが1階から私たちに向かって叫んでいる。
「お母さんのが近所迷惑だよー」
私はついぼやく。
「ふふっお姉ちゃん、子供っぽいです」
「子供っぽい?
…………あっ!!あの不審者!だからか!?」
「ふ、不審者!?話が見えないのですが!?」
「えっとね、私に付きまとってる男がいてね?」
「前提から平常心で聞けない内容ですね……」
「それで、その男が会う度に言うんだ。「魔法少女にならないか?」って」
「っ!?……魔法……少女に……」
「ね!?びっくりだよねー。私もう20歳だし、この歳で魔法少女『ごっこ』に参加するのはちょっときついしねー」
「あれはごっこなんかでは……!」
「美桜?」
「い、いえ……なんでもありません。とにかく、魔法少女には絶対にならないでください。お姉ちゃんが得することは何もありませんから。」
「もちろんなる気なんて無いよ。美桜も嫌だもんね。もう20歳のお姉ちゃんがテレビで変身!とか言ってフリフリの衣装つけてたら!」
「は、はい!な、なので絶対、絶対ならないでくださいね!?」
「もちろーん。あっもういい時間だし寝よっか。」
「はい。おやすみなさいお姉ちゃん」
「うんおやすみー」
私は美桜の部屋から出ると、自分の部屋で寝るのだった。私は部屋に入ってすぐ眠りについた。
だから、私が部屋を出たあと、美桜が何を言っていたかは聞こえていなかった。
「お姉ちゃんを魔法少女になんてさせないっ……!!」
呟くように、しかし槍のように鋭いその言葉は、私の部屋との壁を貫くことはなかった。




