第一幕終わり
お越しいただき有難うございます。
今回は9千文字ベースで書いています。
章の文字数計算の為です。非常に読み応えあると思うので是非最後までお読みいただけると嬉しいです。
「な、なんだぁあ!? 爆発か!?」
「屋敷の扉が吹き飛んできたぞ! 全員、突入せよ!!」
壊れた正面扉の煙の中から、松明と長槍を手にした憲兵団の集団が、怒号を上げながら一斉に屋敷内へと雪崩れ込んできた!
「ハッスル慎吾さん、大丈夫!?」
「っぐ……ありがとよ、モモちゃん……! なんとか骨は折れてねぇみたいだ……!」
外に飛ばされたハッスル慎吾のそばへ即座にテレポートしたモモは、間一髪で彼の体を支えつつ、回復の光をかける。しかし、その二人の脇をすり抜けるようにして、十数名もの憲兵たちがドカドカと大広間へ乱入していく。
「動くな! ゴルトバルク憲兵団だ!!」
「騎士団長殺害の容疑者を確保する!!」
松明の明かりが大広間を赤々と照らし出し、場内の空気は完全なパニックへと跳ね上がった。
「おお!! 来てくれたか憲兵団!!」
ジョバンニがピローの赤いブレードをレイピアで弾きながら、大喜びで声を張り上げる。
「あそこにいる『暗殺者ピロー』と異邦人どもが犯人だ! 今すぐ捕らえろ!!」
だが、煙の中から突入してきた憲兵たちの目に飛び込んできたのは、ジョバンニが指さすピローたちだけではなかった。
手前に転がる破壊された扉。
抜身のレイピアを構えて暴れ回る村の男たちとジョバンニ。
不敵な笑みを浮かべて長大なキューを構える白い服のアマデウス。
竹刀とパンダのぬいぐるみを構えるソクラテウスたち。
そして、怨念の瘴気を撒き散らしながらジョバンニを睨みつけるドレス姿のエルヴィーラ――。
「な……なんだこの状況は!?」
「誰が味方で、誰が不審者なんだ!?」
「あそこに長大な武器を持った男がいるぞ!」
「あっちには竹刀とパンダを持った奴らが……! 全員怪しいぞ!!」
現場のあまりの混乱ぶりに、憲兵たちの指揮系統は一瞬で崩壊した。
「ええい! 武器を持っている者は全員制圧せよ!!」
「「「うおおおおおおーーーっ!!」」」
「ちょっと待ちなさいよ! 理由も聞かずに襲ってくるわけ!?!?」
チヒロが押し寄せる憲兵の槍を白い杖で力強く弾き返す!
「待て! 我らは無実だと言っておろうが!!」
ピローも真紅のブレードで憲兵たちの攻撃を受け止めつつ、絶叫する。
「ジョバンニ殿!! あなたの言っていた『手配犯』とは、一体どの集団のことなのですか!?」
憲兵の隊長が困惑しながらジョバンニへ叫ぶが、ジョバンニ自身も迫りくるエルヴィーラの殺気と、憲兵たちの乱入による混戦に巻き込まれ、もはや指図どころではない。
「ええい! 鬱陶しいですね、雑兵どもが……!」
アマデウスが冷徹に目を細めると、襲いかかってきた憲兵二人を、ビリヤードのキューを滑らせるような一閃で軽々とまとめて弾き飛ばした!
「ぐはぁっ!?」
「な、なんて威力だ……! あいつを狙え!!」
「ジョバンニさん!もう一度言います!!嘘はいつまでも続かない!!!」
ソクラテウスは竹刀を構え直し、混乱に乗じてアマデウスとの間合いを詰める。
屋敷の外から戻ってきたモモとハッスル慎吾も加わり、「ジョバンニ&村人勢」「スペラン勢」「全宇宙友好協会」「アマデウス」「憲兵団」、そして仮面を取った復讐に燃えるエルヴィーラが入り乱れる、文字通りの大混沌が宴会場全体を呑み込んでいくのだった――!
狂乱の旋律が響き渡り、憲兵団の乱入によって大広間が完全な混沌と化した、まさにその渦中。
「……そろそろ、お越しのようですね」
竹刀で憲兵の槍を滑らかにいなしたソクラテウスが、破壊された正面扉の向こうの暗闇を見据えて静かに口元を緩めた。
「な、なんだ!? 外から何が来る……!?」
ジョバンニが思わず振り向いた、次の瞬間――!
ドガアアアアアンッッ!!!!
すでに吹き飛んでいた正面扉の残骸を蹴散らし、外の闇から三つの影が煙を巻き上げて大広間の中心へと一気に躍り込んできた!
「「「「!!??」」」」
豪快な衝撃波が広間全体を吹き荒れ、崩れた入口付近に群がっていた憲兵たちと村の男たちが悲鳴を上げて左右へと弾き飛ばされる!
激しい砂塵が舞い散る中、そこに姿を現したのは――ソクラテウスが予告していた『全宇宙友好協会』の「残り3人の助っ人」であった!
「お待たせーー、ソクラテウス!!」
先陣を切って重厚な大剣を床に突き立てたのは、全身を白銀の重装甲アーマーで包んだ巨漢の男――『最強剣神X』!
「ふふ、実に華やかな宴だな! 混ぜてもらうぞ!」
続いて滑り込んできたのは、絢爛豪華な十二単をモチーフにした和風アバターに身を包み、宙に浮かぶ巨大な朱色の扇を扇ぐ男性――『野々市源五郎』!
「ハッスル慎吾さん!お待たせしましたー!」
そして三人目、背中に天使の翼を片翼だけ生やし、輝く銀色の刀を日本を掲げた可憐な少女――『天流斬血が駆けつける
「あいつら……全員『LKO』のトップランカークラスじゃないか!?」
テンゴが扇子を構え直しながら、目を見張る!
「ソクラテウスの奴、よく準備しとったげな……!」
ネルソンも刀を納め直し、呆気にとられたように唸った。
突如として正面入口から破竹の勢いで乱入してきた3人の圧倒的な助っ人により、圧倒的不利だった『全宇宙友好協会』と『スペラン』側の戦力が一気に跳ね上がる!
「ちっ……邪魔立てばかりを……ッ!」
アマデウスが冷酷に眉をひそめ、黄金のキューを握り直す。
しかし、『最強剣神X』がその強靭な体でアマデウスの前に立ちはだかり、『天流斬血』『野々市源五郎』がソクラテウスたちの両脇を固めたことで、完全にアマデウスの動きは封じ込まれた。
「エルヴィーラさん!勇気を持って!!」
ソクラテウスが竹刀をアマデウスに静かに突きつけ、不敵に微笑む。
「!?」
「くっ……おのれぇぇ不審者どもめ!! 憲兵! 何をしている、奴らを叩き潰せ!!」
勝ち目を失いかけたジョバンニが顔を激しく歪ませて叫ぶが、圧倒的な超常の力を見せつけられた憲兵たちと村人たちは、恐怖で腰を抜かして誰一人として動くことができない。
「正義の神よ……」
混戦の熱気が渦巻く中、エルヴィーラが静かに紡いだ言葉。それは哀しくも気高い、自らの魂に決意の炎を灯すための祈りであった。
彼女は自身の身に迫る危険すら完全に跳ね返す覚悟を胸に、血で血を洗う戦場の中央を堂々と歩み進んでいく。
「はい、何でしょう」
「あなたではありません……」
アマデウスの黄金のキューと竹刀を交え、出張買取術師と共に壮絶な攻防を繰り広げていたソクラテウスが真顔で応えたが、エルヴィーラは視線すら向けずにその真横を通り過ぎていく。
アマデウスもまた、冷徹な眼差しでその横を歩むエルヴィーラを一瞥したものの、手を出す気はないらしく武器を構えたまま静観を決めていた。
「正義の神よ、護り給え……。裏切られた愛に、神よ私の激しい望みを護り給え……」
悲痛な祈りを口にしながら、エルヴィーラはまっすぐに歩み続ける。
彼女が目指すのは――かつてジョバンニが優雅に乾杯の音頭を取っていた、あの高らかな登壇の上であった。
「さぁ! ゼルリーナ! ここは危ない!!」
ドア付近でレイピアを構えていたジョバンニは、テンゴの扇子との攻防戦をなりふり構わず投げ出すと、可憐な花嫁ゼルリーナの腕を強引に掴み上げ、1階の奥へと逃げ延びようと歩を進め始める。
「ここは憲兵団どもに任せて、あっちへ避難しよう!!」
「あっ……待って、放して……っ!」
強引に手を引っ張られ、今にも連れ去られそうになるゼルリーナ。
壁際に身を寄せていた村の女性たちが、その光景を目にして悲鳴混じりの声を上げた。
「あの子は一体どこへ連れて行かれるの!?」
「助けなくていいの!? 誰か……ッ!」
「ああ! ゼルリーナ!!」
憲兵たちの乱入で混戦の真っ只中にいた花婿マゼットの目に、その光景が飛び込んできた!
マゼットは弾かれたようにジョバンニの後を追いかける。
「この悪人め! どこまで自分で自分の首を絞めれば気が済むんだ!!」
マゼットが吐き捨てるように叫ぶ。彼はジョバンニという男の軽薄さに不信感を抱きつつも、「目の前に指名手配犯がいるなら剣を振るうのが筋」だと信じ込んで戦っていたに過ぎなかったのだ。
登壇の上に立ち、大広間全体を見下ろしたドンナ・エルヴィーラは、全身から溢れ出る信念をその声に宿し、朗々と広響させた。
「あのジョバンニという悪党は……子供だましの嘘で己の悪事を隠し通せると思っているのです!!」
「おのれ……ッ! ドンナ・エルヴィーラッ!!」
ジョバンニは忌々しそうに毒づきながら、それでもゼルリーナの手を離すまいと強く掴み直した。しかし、進もうとした逃回路の先には、刃を立てて立ち塞がるマゼットの姿があった。
「逃げるな!! ジョバンニ!!」
テンゴの叫びが大広間に響き渡る!
エルヴィーラは、ソクラテウスから掛けられた「覚悟を持って」という言葉を胸の奥で固く踏みしめていた。
いまや逃げ場を失い、逃走の足を止めざるを得なくなったジョバンニへ向け、彼女の口から解き放たれる一言一言が、この混沌とした戦場の空気そのものを一変させていく。
「――もう全て判明しました! あなたの残酷な犯罪と、その冷酷極まりない行いの全てが!!」
エルヴィーラの手が、壁際で泣き崩れていた騎士団長の娘へ向けられる。
「……そこのあなた、ドンナ・アンナさん!」
「え……?」
悲しみに暮れていたアンナが涙を拭い、呆然とエルヴィーラを見上げた。
「――彼こそが、あなたの愛するお父様を惨殺した……『本当の真犯人』です!!」
大広間を切り裂くようなエルヴィーラの告白。
そして、顔を蒼白にさせるジョバンニへ向けて、彼女は吐き捨てるように言い放った。
「あなたは……愛をも、人の命をも踏みにじった『裏切者』よ!!!!」
「貴方は私に『貴方の愛を頂戴する』と言ったのです。私は彼に愛を捧げました。その直後逃げられましたが、この裏切られた騎士団長の話を聞いて、私はふと疑問に思ったのです!!」
登壇の上から響くエルヴィーラの叫び。
「な……なんですって……? 『暗殺者ピロー』ではなく……ジョバンニ様が……お父様を……!?」
ドンナ・アンナの瞳から涙が途絶え、その奥に渦巻く光が完全な漆黒へと塗り替えられていく。
彼女が信じ込まされていた「異邦人たちの悪逆」という嘘。それが、目の前で優雅を装っていた男の惨薄な欺瞞であったと知った瞬間――絶望は底知れぬ「殺意」へと昇華した。
「ウ……ウソだ!! 騙されるなアンナ! この女は狂っている!!」
ジョバンニが顔を蒼白にさせ、引きつった笑みを浮かべながら後退る。
「彼は『ドン・ジョバンニ』であり……『ボン・ジョバンニ』よ!」
ドンナ・エルヴィーラが力強く言い放つと、ドンナ・アンナはついに確信に至る。
「そう言えば、お父様を殺された夜も……『お命頂戴する』とか言っていたわ!!」
瞬間、会場が一瞬で激しくざわついた。
そう――ジョバンニの虚飾に満ちた嘘を見破っていたのは、最初からエルヴィーラであったのだ!
「そうよ! あの日仮面をつけていたのはこの男の可能性があるわ!」
「本当に騎士なのか!?」
「もしや殺人鬼では!?」
「平和主義者だと信じていたのに……」
「あの騎士様は、まさか暴力主義者だったのかしら!?」
口々に上がる村娘や男性たちの非難の声。
――その時である。
アマデウスとの交戦中、ソクラテウスの懐に入れた『ダークマター』が脈打つような激しい光を放ち始めた!
「何だ!?」
ソクラテウスが驚愕の声を上げ、アマデウスとの攻防の手を緩めると、自身の懐に入れた『ダークマター』へ視線を落とした。
対峙していたアマデウスもまた、その予想外の光景に目を奪われ、驚愕の表情を浮かべる。
「一体、何が起こっている……!?」
ドンナ・アンナの心から『暗殺者ピロー』への疑いが完全に晴れ、その怒りの矛先はジョバンニへと移った。だが、突きつけられたあまりの愚行と惨めさに、激しい憎悪をぶちまけるどころか、場全体が呆気にとられてしまっていたのだ。
「ボン様!! もう限界です!!」
泣き叫ぶレポレッロの声が響く中、ソクラテウスは懐から光り輝く『ダークマター』を取り出し、驚いた顔でそれを高く上空へと掲げた。
すると――掲げられた『ダークマター』は眩い光を放ちながら、粒子となって少しずつ空中へと消滅していった!
「!? こんなことが……!!」
あまりの現象に、アマデウスはその光景を直視したまま絶句する。
「初めてです……こんな事!!」
憎悪と誤解の解消によって『ダークマター』が浄化・消滅するという、あり得ない理を前に、アマデウスは感情を激しく乱して大声を張り上げた。
「ジョバンニーーーーッ!!」
完璧だったはずの計画が破綻し、回収対象の『ダークマター』すら消滅した。
アマデウスの激怒の叫びが大広間に轟き、宴会場は真のクライマックスへと雪崩れ込んでいく――!
「お前に仕事の依頼をしたのは大失敗でしたよ!!」
声を荒らげたアマデウス。
自身の計算と『シナリオ』が完全に瓦解し、仕事の失敗を自覚した瞬間であった。
彼は手にした黄金のキューを握り直し、憎悪を押し殺しながら言い放つ。
「どういうことだ、アマデウス!?」
テンゴが激戦の昂ぶりのまま詰問する。
「自分たちの目的のために、人を残虐に利用する計画を立てていた……そのために手先として使ったのがジョバンニだ、ということですか!?」
ソクラテウスも竹刀を構えたまま、静かにアマデウスを追及した。
一方、崩れた扉から乱入してきた憲兵団は大混乱に陥っていた。
「異邦人ども! 君たちも一人残らず逮捕する!!」
怒号を上げる憲兵隊長だったが、隊員は約10名程度。
対する指名手配犯の『スペラン』勢5人(テンゴ、チヒロ、ネルソン、モモ、ピロー)。
さらに『全宇宙友好協会』のソクラテウス、ハッスル慎吾、出張買取術師に、壊れた扉から破竹の勢いで乱入した強力な3人――『最強剣神X』、『天流斬血』、『野々市源五郎』の計6人。
そこへ異邦人のアマデウスまで含めれば、対象は実に12人。
憲兵10人では圧倒的に数が足りなさすぎた。さらに真犯人として浮上したジョバンニやレポレッロの逃走を抑えることまで計算に入れれば、もはや対応など不可能な領域である。
ついに隊員のひとりが、隊長の命に反するのを覚悟で悲鳴を上げた。
「た、隊長!! 逮捕する人数があまりにも多すぎます!!」
「5人を逮捕するつもりが、3倍近くに膨れ上がっただけだ!! 押さえ込め!!」
しどろもどろになりながら喚き散らす憲兵団。
だが現実には、壁際に追い詰められた村娘や村の男たちをパニックから保護することくらいしか手が回らない状態であった。
その隙を突いて、ジョバンニは裏口からゼルリーナを連れて強引に逃げ出そうと試みる!
「離して! この悪徳殺人鬼!!」
腕をきつく掴まれたゼルリーナが、強い眼差しで叫ぶ。
「おい! 不審者! ゼルリーナを返せ!!」
マゼットが、連避されそうになる己の嫁を救おうと猛然と駆け寄る!
流石のジョバンニも周囲の圧倒的な殺気と包囲網に参ったのか、舌打ちをしながら乱暴にゼルリーナの腕を振り払った。
「お前……崇高な騎士じゃなかったのか!?」
それまでネルソンと激しい刃を交えていたオッターヴィオも、ジョバンニの卑劣な化けの皮が剥がれたのを見て交戦を中断。怒りに震えながらジョバンニを強く睨みつけていた。
「……こんな形で『ダークマター』が消滅するなんて、思いもしませんでしたよ。……貴方のような殺人鬼を使うのはやめることにします」
アマデウスにとっても、憎悪の消失による『ダークマター消滅』は前代未聞の事態であり、ジョバンニという底の浅い男を担ぎ上げたこと自体が最大の計算違いだったのだ。
「だったら……さっさと引いたらどうだ!?」
テンゴが扇子を構え直し、アマデウスへ鋭い言葉を叩きつける。
「ええ!! そうさせてもらいますよ!! ……ただしジョバンニ! お前は早く逃げろ! お前もだ、殺人鬼のしもべ(レポレッロ)!!」
「ここは私が食い止める!」
アマデウスの声が大広間に響き渡る。その宣言にはどこか芝居がかった過剰な響きが混ざっていた。
だが、裏口付近にいたジョバンニはその声に即座に反応し、脱出を図ろうと足を進める!
「待て! ジョバンニ!!」
マゼットがすかさずゼルリーナを己の背後に匿い、逃げ出そうとするジョバンニの前に立ちはだかった。
カンカンカンッ! と激しい金属音が鼓膜を突く。マゼットの奮闘によってレイピア同士の火花が飛び交うが――ドン・ジョバンニの剣技の冴えは、あの騎士団長すら上回る域にあった。
「甘いな、青二才が!」
ジョバンニが一閃を滑らせると、マゼットの手からレイピアが虚空へ弾き飛ばされた!
「くっ……! ゼルリーナ、下がっていろ!」
「マゼット……!」
マゼットは素手でゼルリーナを庇い、彼女をかばうように必死に身を寄せる。
従者レポレッロはその一瞬の隙を見逃さず、脱兎のごとくジョバンニの元へ走り寄って合流した。
「逃げるぞ、レポレッロ!」
「……は、はいっ!」
ジョバンニとレポレッロの二人は、壊された裏口の闇の中へと、まんまと滑り込み逃げおおせてしまった!
「逃がすかッ!!」
すぐさま二人を追うべく、テンゴたち『スペラン』と憲兵団が一斉に駆け出す。
「待ちなさい、ジョバンニ!!」
そして、誰よりも激しい憎悪を瞳に宿したドンナ・アンナもまた、ドレスの裾を翻して二人を追いかけようと後を追い裏口から出て行く。
「……どこへ行くつもりですか?」
だが――その裏口の眼前に、一瞬の残像を残して影が飛び込み、路を完璧に塞ぎ立てた。
先鋒アマデウスである。彼は黄金のキューを優雅に構え直し、冷徹な一線を描く。
「何人たりとも、不正に報いてはならない」
テンゴと共に追いかけようとしていたソクラテウスが、竹刀を強く握り直して言った。
「そうだ……罪を犯した奴には、しっかり償ってもらう!」
テンゴもソクラテウスの言葉に続き、強い目力をアマデウスへ向けた。
「そうですか。……ですが、それは出来ませんね。私がここで、全て食い止めますから」
恐怖に怯えた村娘や戦闘に参加しない男性陣は、壁際に小さくなって身を寄せ合っている。
いまやこの大広間の構図は、圧倒的な実力を秘めたアマデウス単身に対し、テンゴたち『スペラン』5人+『全宇宙友好協会』6人+憲兵団10人――合計21名という異彩を放つ対峙となっていた。
だが、アマデウスの狙いは二人を完全に逃がすこと。
ジョバンニとレポレッロが行き着く先は、かつて騎士団長を葬ったあの『墓地』――万が一の事態が起きた際、そこで落ち合うよう事前に取り決めてあったのだ。そこへ辿り着くまでの時間を稼ぐことが、アマデウスの果たすべき役目であった。
しかし、戦場はアマデウスの計算通りだけには進まない。
ハッスル慎吾が吹っ飛ばされ、正面の扉が豪快にがら空きになっていることに気づき、動いた者たちがいたのだ。この土地の地理を知り尽くした者たち――マゼット、オッターヴィオ、そして村の男たち数名が、正門から外へ跳び出し、裏手へと回り込む形でジョバンニとレポレッロの追撃を開始した!
「さぁ……どうします?」
アマデウスは不敵な笑みを浮かべ、行く手を阻む。
「ええい!! そこを通せッ!」
ハッスル慎吾がステッキを掲げて叫ぶ!
「……やはり『オーダー』の人間は非道ですね」
ソクラテウスが静かに怒りを滲ませる。
「あのままやと、あの野郎またどこかで殺人を犯すげぞ!?」
ネルソンが刀の柄に手をかける。
「そこを通さないっていうなら……」
チヒロが白い杖を構え直す。
「――正門から迂回して行くだけよ!!」
『宇宙の守護者』たち、チヒロ、ネルソン、モモ、ソクラテウス、ハッスル慎吾、最強剣神X、野々市源五郎、天流斬血の合計8名が一斉に振り返り、がら空きの正門へ向かって怒涛の勢いで走り出した!
しかし――。
大勢が正門へとなだれ込む中、テンゴと出張買取術師の二人だけは、裏口を塞ぐアマデウスの正面にぴたりと立ち止まっていた。
「隊長! 我々はどちらを追えばいいのですか!?」
壊れた正面扉の残骸の傍らで、憲兵の一人が悲鳴のような声を上げた。
大広間に残されたのは、圧倒的な存在感を放つアマデウスと、その前に鋭い眼差しで立ち塞がるテンゴ、そしてパンダのぬいぐるみを抱えた出張買取術師の二人。
対照的に、壊れた正門から夜の街へ飛び出していったのは、逃亡した真犯人ジョバンニとレポレッロ。それを追う激怒のドンナ・アンナ、手ぶらのまま凄まじい気迫で駆け出したマゼット、騎士団長の仇を討たんと刃を握り直したオッターヴィオ、そして冤罪を悟り手のひらを返して追撃に加わった村の男たち――計10名ほどの追撃隊。さらに、そこへソクラテウス率いる『宇宙の守護者』たち8名。モモもハッスル慎吾の救助から合流して、正門から雪崩れ込んでいった。
10名の憲兵団は、ここで「目の前の異常な異邦人3名」を抑えるか、それとも「逃亡した殺人鬼とそれを追う大集団」を追撃するか、二者択一の判断を迫られていた。
「――だったら、お前たち9人は全員で正門から向こうを走れ!!」
憲兵隊長が腹の底から怒号を叩きつける!
「ここは……隊長の俺一人だけで十分だ!!」
「「「はっ!!」」」
隊長の鋭い一閃の指示を受け、9名の憲兵が一斉に正門を飛び出し、夜霧の立ち込める街路へと怒涛の追跡を開始した!
静まり返る大広間。
残されたのは、裏口を背にして立ちふさがるアマデウス、そして彼と相対するテンゴと出張買取術師。そして、距離を置いて腰の剣に手をかける憲兵隊長一人――。
「……さぁ、お前たち異邦人ども。この街への不法滞在および騒乱罪で、まとめて取り締まらせてもらうとする……!」
アマデウスが黄金のキューを優雅に指先で滑らせ、冷徹な殺気を解き放つ。
「計画は失敗したが、まだシナリオは終わっていませんけどね…」
テンゴは扇子をしなやかに開いて構え直し、静かに息を整えた。
「不法滞在だか騒乱だか知らねえが……あいつらを追う邪魔をするってなら、力ずくで押さえるまでだ!」
その隣で、出張買取術師もぎゅっと抱きかかえたパンダのぬいぐるみを突き出し、愛らしい見た目とは裏腹の重厚な魔力を全身から滾らせる。
「……買取査定の邪魔をするお客様には、それ相応のペナルティを受けていただきますよ」
屋敷の静寂を破り、退路を断たれた大広間で、選り抜きの精鋭たちによる真の死闘が幕を開けたのだった――!
ここから後半戦に入ります。
ファンが付いてくれると嬉しいです。
けど、なろう系暗黙のプロットテンプレートしないとファン付かないだろうな………
今回は9千文字です。キリが良いからです。
まとめ
①ジョバンニ&レポレッロ→屋敷から逃走
②追走の先発をしたのはドンナ・アンナ。
③その後を追うようにマゼット、オッターヴィオ、村男数名
④ジョバンニを追う、宇宙の守護者達:スぺラン勢、チヒロネルソン、モモ
全宇宙友好協会:ソクラテウス、ハッスル慎吾、野々市源五郎、天流斬血、最強剣神X
⑤殺人鬼と不法滞在者を追う、憲兵団:9名
新キャラ
全宇宙友好協会:『野々市源五郎』
『天流斬血
『最強剣神X』!
判明 ソクラテウス 職業:サムライ
ハッスル慎吾 職業:ドラゴンナイト




