説得の後
「この集まりに、俺を?」
「そうだ」
湧哉の問いに即答した奥崎には迷いが全くなかった。他の選択肢など考えられない。絶対にこれしかない。そんな自信に溢れていた。
だが、阿良田はそれを了承しなかった。
「ちょっと待ってください!!」
図書室に机を叩く音と阿良田の声が響いた。その音に古野濱はびくっと体を震わせる。
そんな声にはびくともせず、奥崎は阿良田に向き直った。
「我ながら、なかなかいい案だと思うぞ。畑原が入るのなら、以前の私の行いは試験だったと考えればいい。そうすれば部外者を巻き込んではいないし、秘密裏にというのも守られる」
「だとしても、最後の部分はどう説明するんです!」
「誠心誠意と言うのは確かにあやふやなところだが、全力でと言うのは間違っていない」
「だからと言ってそんな屁理屈がとおるわけが―――」
奥崎の言葉を阿良田は畳みかけるように否定していくが、奥崎の次の言葉がそれを止めさせた。
「それに阿良田、お前の悩みである次の世代がいないという心配も解決できる」
「!!」
「畑原が加わらないとなれば私はここに残れない。お前が私を追い出さなかったのは、阿良田と古野濱は今年で卒業だからだろう? 私がいなくなり、更に二人がいなくなればALMは自然消滅することになる。お前が一番わかっているんだろ?」
「……!」
阿良田の顔は苦虫を潰したようで、奥崎の言うことが的を得ていることは明らかだった。
「俺達が卒業するまでには、まだ、時間がある。今、ここで、畑原を無理やり引き入れる必要はないはずです」
「何人か候補がいたんだろうが、完璧な逸材を探していたんだろ? お前が求めるほどのやつはいなかった。これ以上待っていてもそんな奴は現れない。考えてみろ。お前だって最初から全てをこなせたわけじゃないじゃないか」
奥崎はなだめるように阿良田に語り掛けた。それを聞いて阿良田に苦しそうに目を閉じた。阿良田自身、自分の矛盾に気が付いていたのだろう。ALMを残すためには奥崎を追い出すことはできない。しかし、規律を破った彼女をそのままにすることもできず、批判した。規律違反を誰よりも嫌っているにもかかわらず、それを容認していることへの矛盾。それに蓋をするように奥崎との間に距離を置いた。
「私だってこの集まりを残したい。お前たちが卒業しても私はこの学校に残り続けるんだから尚更だ。皆がいなくなった後に再建することはできるがそれは今まで続いてきた物とは全く別物になる。それじゃあ意味がないんだ」
奥崎は阿良田を攻めているわけではない。そんな資格は奥崎にはない。彼女の暴走がなければこんな事にはならなかったのだから、これはあくまで提案だ。受け入れられるかどうかは阿良田しだい。




