部外者から
撮影された場所がわかればカメラの発見も容易だと思ったのだが、古野濱は唇をぎゅっと結んだままだった。
「簡単に言えるならこんなことになってませんよね。すみません」
ここで無理にでも聞きだすことはできただろうが、そんなことができるはずもなかった。古野濱も何か言おうと必死になっていることはわかっているし、それがどんなに辛いかも察しは付く。ましてやそれが女子ともなれば余計にだろう。
「もし話せそうになったら私にでも阿良田にでもいいから言ってくれ。無理することはないから」
「……」
古野濱は俯いたままコクコクと頷いた。今にも泣きだしそうだ。ここ数日で様々は印象を受けた人だったが、今回は見ていて辛くなるものだった。
「そしたら他の手を考えないといけないですよね」
「そうなんだが、時間がないのも事実だ。私は仕事が山積みだし、お前たちにできることとなると限られる……」
畑原への無理強いをしなくなったのは本人にとっても喜ばしい事だったが、それによって手の打ちようが無くなってしまったことも事実だった。正面からやりあおうにも相手は身を潜めている。居ることはわかっているが姿を探す手段がないのだ。
「なにか考えるにしても、それなりのことをしないと……」
「奥崎先生」
湧哉の言葉をしばらく無言だった阿良田が遮った。
「なんだ阿良田? 何か考えがあるのか?」
「いや、俺が言いたいのは畑原の事です」
「お、俺?」
突然自分のことを話題に上げられ、湧哉は戸惑った。いったい何事だろう。
「ここに集まったのは畑原への説明のため。そしてここから先の話はALMの仕事。畑原のこれ以上の介入は認められない」
「ちょ、このまま帰れって言うんですか!?」
「そうだ。ALMのことを漏らしたというだけでも特例だ。これ以上ひっかきまわされたら困る」
「ひっかきまわすって……! 俺そんなつもりは―――」
「『秘密裏に、他者を巻き込まず、事の収集には誠心誠意全力で当たる』! これがALMの規則だ! 既に秘密裏というのは破られた。部外者であるお前がこれ以上関われば二つ目も破られることになる!」
「そ、そんな……」
荒々しくなった口調と対照的に、前髪の隙間から覗く阿良田の視線は冷たい。購買で初めて会った時に奥崎を見ていた時と似ている。いや、それ以上かもしれない。
湧哉は思わず奥崎を見る。彼女はまっすぐ湧哉を見つめ返していたが目を閉じながら立ちあがると答えた。
「確かにそうだな」
「……!」
「『秘密裏に、』―――」
奥崎は先ほど阿良田の言った規則をゆっくりと口にしながら歩きはじめた。
「『他者を巻き込まず、』―――」
長机の周りを一歩一歩進んでいく。
「『事の収集には』―――」
阿良田の横を通り過ぎ―――
「『誠心誠意全力で当たる』」
―――奥崎は湧哉の元までやってきた。
「確かにこれはALMの決まりだ。これが曲がることはない」
椅子に腰かけたままの湧哉を奥崎は見下ろす。
「つまり、私はそれを破ってしまったわけだ」
「?」
「私がお前にしたことは全て規律に反しているだろう? まったく、私が一番守らなくちゃいけないっていうのにな」
奥崎は湧哉に向かってニカッと笑った。どういう状況なのかさっぱりわからなくなった湧哉をよそに、奥崎は背後にいる阿良田へ声を飛ばす。
「阿良田、規律を破った場合はどうなる」
「……ALMを去らなければならない」
「なら、私はここを出て行かなきゃならないということだな」
「それは……」
「お前の考えてることはわかってるよ。私だってそうはしたくない。でもな、お前と私の考えを叶える方法が1つだけある」
少しの間を置くと奥崎は湧哉に手を差し伸べながら言った。
「畑原、ALMに入らないか?」




