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お泊り作戦

 一限の授業の後、湧哉は悠に朝の出来事を話した。

「それでどうしたの?」

「この流れで断れると思うか?」

「無理だろうね。人数が少なかったとはいえ皆の聞いてる前だったし断りづらい。それと自分で言ったことも確かだしね。それだけならまだしも結が来たタイミングが悪かった」

「なんでああいうときに限って早めに朝練が終わるんだろうな……」

「今更仕方がないね。決まったことだもん。でも、結に僕たちが討論会の準備をすること言っておけばよかったなぁ」

 悠も浮かない顔だった。討論会の手伝いをするという予定があったにも関わらず、湧哉が文化祭の実行委員になってしまったことに不満はあるらしい。

「課題の提出日が来週の水曜日だろ。文化祭は土曜と日曜だから―――どう考えても無理だ」

 課題はまだ三割程度しか進んでいない。休日にこなすペースが速くなったとしてもぎりぎりだ。悠の手伝いもただでさえぎりぎりだったというのに……

「限られた時間の中でやるしかないね」

「時間もないし門紅が解いてくれたりとか……」

「それはしないよ」

「デスヨネー」

 結局のところ奥崎の課題、悠の手伝い、実行委員の三つを並行してやっていかなければならないようだ。 奥崎の課題はギリギリだとしても、悠の件は電話をかけて終わりではない。聞いた意見をまとめ上げ、討議の流れも考えなければならない。これは悠がやるのだろうが、いくらなんでも討議前日にそれをすべて行うのは厳しいだろう。遅くても金曜、できれば木曜には電話をするのは終わらせておきたい。

「よーし、こうなったら」

「お、なんかいい意見でも浮かんだか!?」

 何か秘策でもあるのかと期待した湧哉だったがそうではなかった。策の一つではあったが。

「ハタハタ、今日はうちに泊まりにおいでよ」

「はん?」

「明日は学校休みだし僕の家で課題やろう。あ、でも昼間は記念館で電話ね」

「お前の家で?」

「そのほうが進み早いでしょ?」

 効率を考えれば確かにこの方法はいいかもしれない。本当に効率だけを考えるのならば悠がやったほうが早いがそこは釘を刺されている。

「う~ん……」

「何か問題あった?」

「いや問題はないけど……」

「じゃあ決定ね。家にも連絡入れとく」

 そう言うとすぐさまスマートフォンを取り出して打ち込み始めた。

「決定なのか……」

 課題のことを考えてくれるのは嬉しいが悠と二人っきりで延々と課題をすることを想像すると楽しそうには思えなかった。息抜きの時間がどれくらい取れるだろうか? 湧哉としては好きな時に取りたいが悠が本気で終わらせにかかるのであればそんなに甘くないだろう。

「家は問題ないってさ。それと今日は少しだけ意見聞くのに電話してみよう。実行委員の仕事が終わったら記念館に来てね」

「……」

 今日良かったのは目覚めだけで、他は湧哉にとっては辛い一日になりそうだ。

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