クラスの出し物
実行委員に任命されたが自分のクラスが何をするのか知らなかった。悠の時と同じく聞かされずに任されたわけだが今回は澤の方から内容を伝えに来た。それによると―――
「カツサンド?」
課題のプリントに走らせていたペンを止めて湧哉は聞き返した。
「意見の中にあったの。学食のカツが美味しかったからそれを使うのはどうかって」
「確かに学食で食べたカツはうまかったな。あれなら結構売れるぞ」
「他にも案があったけどせっかくだからやってみようと思うの。焼きそばなんかだとガスや鉄板を借りないといけないけど、学食の調理場を使わせてもらえばカツは揚げられるから食材費に多少金額が掛かっても大丈夫そうだし」
「なるほど。それなら食材費だけで何とかなるもんね」
湧哉の課題を手伝っている悠も納得しているようだ。
業者にガスコンロや鉄板を借りるとどうしても一万円を超えてしまう。しかし、カツを揚げるフライヤーがすでにこの学校にはある。それを使わせてもらえるならばそのほうがいいに決まっている。
「でも他にも調理場を使いたいクラスがあるだろうから実行委員会の集まりで確認しないと」
「もしかぶったら?」
「その時はくじ引きだと思う。もし当たらなかったときのために他の案も用意しておかないと」
「他にはどんな意見があったの?」
「食べ物だったらクレープとかたこ焼き、それ以外だと男装女装喫茶とかもあったけど……」
「それは却下!!!」
「僕も同じく!!」
湧哉と悠はそろって手のひらを澤に向け拒絶の意を示した。
どうやら去年の悲劇をもう一度起こそうという人物がいたらしい。頭の中である人物が浮かぶが湧哉も悠も口には出さなかった。
「私も恥ずかしいから違うのがいいかな~って思ってる」
澤も苦笑いをで答えた。結は男装することに何のとっかかりもない様子だったが澤のような女子もいるらしい。結が澤ならばやらない言った理由はこれのようだ。
「しかしくじ引きか……。完全に運次第だな」
たとえいい案が合ったとしてもくじ引きに勝たなければいけないらしい。これに負ければ喫茶店をやるはめになるかもしれない。それはなんとしても避けたかった。二年連続でやる気にはとてもなれない。
「そのくじ引きっていつやるんだ?」
「今日のお昼休みに視聴覚室で」
「昼休みかよ。次の休みで購買行っとくか」
「そんなに時間はかからないと思うけどそのほうがいいかもしれない」
課題もあるので昼食ぐらいゆっくりととりたかったが今日はそうもいかないらしい。だが食べそびれるのも嫌なので今回は先に買っておくことにした。
「大まかにはこんな感じかな。何か他にわからないこととかあったら言ってね」
「おう、わざわざありがとうな」
「ううん、こっちこそありがとうね。引き受けてくれて」
澤は申し訳なさそうに頭を下げると自分の席に戻っていった。
後姿を見ながら悠はつぶやいた。
「結にも羞恥心ががあればなぁ」
「全くだ。あいつのおかげで貧乏くじひかされるのはごめんだからな」
「もっと乙女心を学ぶべきだよね」
「あれじゃあ男と変わらないからな」
ハハハと声を出して笑う二人。だが今日の湧哉は付いていないようだ。
「だぁれが男だってぇ」
「か、門白……」
「い、いつからいたの……?」
「澤ちゃんがいなくなったあたりから」
バキバキと指を鳴らしながら話す結の姿は恐ろしく湧哉も悠も弁解を求めて口を開き始めた。
「待て待て待て! は、話せばわかる!!! そんなことしながらこっちに迫ってくるなって!!」
「そうそう! 指を鳴らし過ぎるのは良くないよ!! 関節が太くなって余計に男らしく―――」
「あんたら! いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
咆哮とともに二本の手刀が振り下ろされた。それはそれぞれの頭を直撃した。
その後しばらくの間、痛みに悶える二人の声が教室に響いていた。




