第44話 魔王
魔王城の中は、以前と同じだった。
廊下。
階段。
黒い影。
だが。
敵は、確実に強くなっている。
踏み込めば分かる。
一撃の重さ。
反応の速さ。
それでも。
進みは、前より早かった。
黒影の獣は、連携で処理される。
迷いはない。
黒影の球体が、淡く光る。
閃光。
反射的に、ステラが術式を展開する。
壁。
以前より、厚い。
ヒナタは、踏み込まない。
正面で受けるのではなく、半歩ずらす。
衝撃が、壁と剣に分散される。
セレネの支援が、遅れず重なる。
削られる。
だが、崩れない。
次の瞬間。
ヒナタが踏み込む。
一閃。
ステラの術式が、重なる。
球体の影が、わずかに歪む。
削れている。
確実に。
閃光は、もう一度。
だが、間隔は読める。
次が来る前に、削る。
繰り返し。
手順は、すでに揃っていた。
最後の強い光。
壁が、軋む。
だが、割れない。
球体は、黒い霧となって散った。
止まらない。
進む。
そして。
黒影の門番が、動く。
突進。
速い。
だが。
ヒナタは、正面に立たない。
剣を当て、流す。
反転。
距離が、詰まる前に離れる。
門番が、向きを変える。
その一瞬。
ヒナタは、踏み込まない。
待つ。
ステラの術式。
軌道を、わずかに逸らす。
門番の体勢が、崩れる。
ヒナタが走る。
跳ぶ。
一閃。
今度は、深い。
黒影が、大きく揺れた。
門番は、倒れない。
――だが、次は来ない。
輪郭が、崩れる。
霧散。
ヒナタは、剣を下ろさない。
確認するように、前を見ている。
振り返らない。
さらに進む。
やがて。
大きな扉。
魔王の部屋。
セレネが、静かに全員を治癒する。
光が、残る疲労を消していく。
「行くぞ」
ヒナタの声は、低い。
扉に、手をかける。
重い。
軋む音。
開く。
中へ。
扉が、閉まる。
薄暗い。
わずかな灯り。
広い空間。
音が、消えている。
その奥に。
――立っていた。
剣を持つ影。
構えず。
ただ、こちらを見ている。
魔王。




