魔王
魔王城の中は、以前と同じだった。
廊下。
階段。
黒い影。
だが。
敵は、確実に強くなっている。
踏み込めば分かる。
一撃の重さ。
反応の速さ。
それでも。
進みは、前より早かった。
黒影の獣は、連携で処理される。
迷いはない。
黒影の球体が、淡く光る。
閃光。
反射的に、ステラが術式を展開する。
壁。
以前より、厚い。
ヒナタは、踏み込まない。
正面で受けるのではなく、半歩ずらす。
衝撃が、壁と剣に分散される。
セレネの支援が、遅れず重なる。
削られる。
だが、崩れない。
次の瞬間。
ヒナタが踏み込む。
一閃。
ステラの術式が、重なる。
球体の影が、わずかに歪む。
削れている。
確実に。
閃光は、もう一度。
だが、間隔は読める。
次が来る前に、削る。
繰り返し。
手順は、すでに揃っていた。
最後の強い光。
壁が、軋む。
だが、割れない。
球体は、黒い霧となって散った。
止まらない。
進む。
そして。
黒影の門番が、動く。
突進。
速い。
だが。
ヒナタは、正面に立たない。
剣を当て、流す。
反転。
距離が、詰まる前に離れる。
門番が、向きを変える。
その一瞬。
ヒナタは、踏み込まない。
待つ。
ステラの術式。
軌道を、わずかに逸らす。
門番の体勢が、崩れる。
ヒナタが走る。
跳ぶ。
一閃。
今度は、深い。
黒影が、大きく揺れた。
門番は、倒れない。
――だが、次は来ない。
輪郭が、崩れる。
霧散。
ヒナタは、剣を下ろさない。
確認するように、前を見ている。
振り返らない。
さらに進む。
やがて。
大きな扉。
魔王の部屋。
セレネが、静かに全員を治癒する。
光が、残る疲労を消していく。
「行くぞ」
ヒナタの声は、低い。
扉に、手をかける。
重い。
軋む音。
開く。
中へ。
扉が、閉まる。
薄暗い。
わずかな灯り。
広い空間。
音が、消えている。
その奥に。
――立っていた。
剣を持つ影。
構えず。
ただ、こちらを見ている。
魔王。




