託される思い
朝の宿舎。
誰かが呼ぶこともない。
気づけば、四人が揃っていた。
身支度。
武器の確認。
言葉は、ほとんど交わさない。
ヒナタが、剣を担ぎ直す。
「……行くか」
それだけ。
誰も、頷きはしない。
だが、全員が動いた。
ギルド。
朝の空気は、少し張りつめている。
人の数はある。
だが、ざわつきはない。
受付の前。
ヒナタが、短く告げる。
「魔王城」
「魔王の間に入る」
一瞬の間。
受付の表情が、わずかに硬くなる。
「……護衛を、付けますか」
「頼む」
即答だった。
しばらくして。
ギルドの外に、二組のパーティが集まった。
装備は整っている。
動きも無駄がない。
どちらも、名前を知っている。
魔王の間に挑み、
水晶には「全滅」とだけ刻まれたパーティ。
そこへ辿り着く前に、壊滅したパーティ。
護衛に出られる数が減るのも、当然だった。
護衛の一人が、前に出る。
リーダー格だ。
「どこまでやれるかは、分からん」
率直な声。
「だが」
「城の前までは」
「できる限り、万全で送る」
「道中の獣は、俺たちが処理する」
ヒナタが、短く頭を下げる。
「頼む」
出発。
町を抜ける。
森へ。
気配は、すぐに現れた。
獣。
以前より、動きが重い。
力もある。
だが。
護衛の二組が、前に出る。
迷いがない。
連携も、洗練されている。
倒れる。
止まらず、進む。
廃墟。
崩れた石壁の影から、さらに出る。
数。
質。
確実に、上がっている。
それでも。
護衛は、崩れない。
さらに森を抜ける。
視界が、開ける。
魔王城。
黒い城壁。
歪んだ塔。
城の前で、護衛が足を止めた。
「……ここまでだ」
誰も、無理を言わない。
自然と、握手が交わされる。
言葉は、少ない。
だが。
生きて帰れ。
倒してこい。
それだけは、はっきりと伝わった。
ヒナタが、一歩前に出る。
「必ず」
それだけ言って、振り返らない。
四人は、門へ向かう。
重い扉。
軋む音。
魔王城の中へ。
護衛の姿は、背後に残った。
ここから先は。
四人だけだ。




