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一人の戦い

 朝は、少しだけ冷えていた。


 

 宿舎の窓から入る光で目が覚める。


 体を起こす。


 外はもう明るい。


 


 ヒナタはとっくに起きていて、剣の手入れをしていた。


 セレネは水を汲みに行っている。


 ステラは机代わりの棚で、本を読んでいる。


 もう何日も一緒にいるみたいな顔をしているのが、少しおかしかった。

 






「行くぞ」


 ヒナタが立ち上がる。


「今日のは軽いやつだ。実績づくり」


 軽い、と言いながら、もう戦う顔だった。


 



 四人で町を出る。


 



 石畳が途切れて、土の道になる。


 パン屋の煙が、後ろに小さくなっていく。


 


 森が近づく。


 


 空気が変わる。


 


 匂いが違う。


 音が少ない。


 


 ここから先は、魔王の支配域。



「今日のは黒影の主だ」

「あいつ落とせば、この辺は静かになる」



 ヒナタとセレネは迷わない。


 何度も通った道みたいに、まっすぐ進む。


 ミドとステラは、その後ろをついていった。


 


「基本、俺が前出る」


 歩きながら、ヒナタが言う。


「セレネ、回復だけ頼む」


 


「はい」


 


「ステラは……まあ、後ろでいい。無理すんな」


 


「はい」


 


 それから、ちらっとミドを見る。


 


「お前は……わかってるよな」


 


「はい」


 


「死ぬなよ。レベル1は普通に死ぬからな」


 


「はい……」


 


 軽く笑われる。


 冗談みたいな声だったけど、たぶん本気だ。


 


 森に入ってすぐ、獣が飛び出してきた。


 


 黒い影。


 牙。


 


 ヒナタの剣が一閃する。


 


 それだけで、終わった。


 


「……速い」


 思わず呟く。


 


 だが。


 


 二匹。


 三匹。


 


 数が増える。


 


 ヒナタは前に立ったまま、全部を受け止める。


 


 剣。


 足。


 肩。


 


 無理やり、守る動き。


 


 強い。


 でも、刃が前に出ない。


 


 何度か戦って。


 


 ようやく開けた場所に出た。


 


「休憩」


 


 ヒナタが座り込む。


 


「……もうちょい奥だな、主は」


 


 息は乱れていない。


 けど、肩が少しだけ下がっていた。


 


 ミドは、少し迷ってから口を開いた。


 


「あの」


 


「ん?」


 


「ヒナタさん」


「僕たち守ろうとしてるから、動き変わってません?」


 


 ヒナタが眉をひそめる。


「……どういう意味だ」


 


「……たぶんですけど……」

「守るの優先してるから、動きにくそうに見えます」



 少し沈黙。


 

 ヒナタは舌打ちした。


「当たり前だろ。守らねぇと死ぬだろ」


 


「でも」


 


 ミドはステラを見る。


 


「ステラって、どんな魔法使えるんですか?」


 


「え?」


 


 本から顔を上げる。


 


「普通の攻撃魔法とか……補助とか」


 


「例えば?」


 


「……これとか」


 


 小さく詠唱。


 次の瞬間。


 


 地面が抉れた。


 

 木が一本、半分から吹き飛ぶ。


 


 空気が震えた。


 

 沈黙。


 


「……おい」


 ヒナタが呟く。


「今の、上級だろ」


 


「はい」


 


「なんで使えんだよ」


 


「研究してますから」


 当たり前みたいに言う。


「魔法構築でも経験値、入るんです」


 


「……は?」


 


「知られてないだけで」


 


「積み重ねれば、普通に上がりますよ」


 


 セレネとヒナタが顔を見合わせる。


「……初耳だぞ」


「私もです……」


 


 ステラは首を傾げる。


「だから不思議なんです」


 ミドを見る。


「どうして、レベルが上がらない人がいるのか」


 


 苦笑いするしかなかった。


「……僕も知りたいです」


 


 少しだけ、空気が和む。


 


「一回、ちゃんと四人で戦い方考えません?」


 ミドが言う。


「ヒナタさん一人で戦うより、たぶんそっちの方が早いです」


 


「……作戦ってやつか」


 


「はい」


 


 ヒナタは少しだけ笑った。


「ガキのくせに、指揮官みてぇなこと言うな」


 


「すみません」


 


「……まあいい」


 剣を担ぎ直す。


 


「やってみるか。四人で」


 立ち上がる。


 





 森の奥。


 


 黒い気配が、少し濃くなっていた。


 


 もう、すぐそこにいる。


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