47話 とりあえず斬らないように
「ルイさん!!」アリスが駆け寄ろうとする。ドアの外で何か光った。「アリス!」俺はとっさに剣を抜いて振った。キーン!と音がして床に何かが落ちる。、、矢、だな。ルイの背中に刺さっているものと同じ。「アイシャ!!」俺は浴室に向かって叫ぶ。起きている事象は分からないが、”何か”が起きていることは確かだ。「アリスはここでルイの手当を。」「はい!」アリスはルイの横にしゃがむ。「ルイさん!」「ショウ!どうしたの!?」アイシャとニルティアが浴室から走って出てきた。「敵襲だ。見ての通りルイが誰かに射られた。」「なっ、。」俺は外に出ようとしたニルティアの腕をつかんだ。「ショウ!?」「外で誰かが弓を構えて待ち構えている。」ニルティアの引っ張る力が少し抜けた。「ショウ、、さん。」ルイの声がした。「ショウ、さん。奴隷商が来ました。」なんだと?「ここは見つからないんじゃないのか?」「基本、は、、見つかり、、ません。ですが、、たまに、、。」そこまで言ってルイは突っ伏した。「ルイさん!」アリスが叫ぶ。おそらく気絶だが、矢に毒があるとまずいな。床に魔方陣が出てきた。これは、テイリアスか。「ショウ、まずいよ。」魔方陣から出てきたテイリアスはルイを視界にとらえると、すぐに魔方陣を展開した。「レスド。」眩い光がルイを包んだ。「これで大丈夫なはず。」「上位の治癒魔法。でも、治癒魔法は魔族に必要なかったんじゃ?」アイシャが言う。「確かに魔族”には”必要ないね。でも、人類には必要でしょう?」テイリアスは得意げな顔をした。「ごめん、そうだね。」アイシャが謝った。「それで、外の様子は見た?」「いや、まだだ。外で待ち伏せされてる。」「、外では今エルフが逃げ回ってる。でも、、どんどん捕まってる。」「じゃあすぐに助けないと。」ニルティアが出ようとする。「待って!今出ても飛んで火にいる夏の虫よ。あいつらはその助けようという気持ちをダシにしているの。出ちゃダメ。」「じゃあ、どうするの?」「奴隷はあいつらの商売道具、なら丁寧に扱う。」なるほど。「全員集まったところで奴隷商を襲うのか。」「うん。ショウ、それでいい?」「まぁ、それ以外には良い手がないな。だが、少しは先に暴れてもいいんじゃないか?」俺はニルティアを見る。「まぁ、少しなら。あまり目立つともう捕まった人を救えないからほどほどにね。」まぁ、暴れすぎたらさっさと退かれてしまうからな。一網打尽にしなければ意味がない。「じゃあ、行ってきます。」テイリアスが作った煙で視界を奪って扉からみんな出ていった。「ショウさんは行かないんですか?」アリスに言われる。「あぁ、すぐに出る。」、、けど俺は人を斬れない。こいつの呪いが発動してしまう。それだけは避けたい。まぁ、最悪そうなったときには、、マーレとテイリアスに片をつけてもらおう。俺は剣の柄を握って外に出た。
「なんだろ、これ。」アイシャが言った。たしかに、これは少し違和感があるな。「誰も、いない?」ニルティアが階段の下の方を見ながら言う。「、、いや、少しだけど魔力の反応がある。おそらくみんな隠れてる。」上の方から足音が聞こえてきた。俺は剣を抜く。アイシャたちも魔方陣を展開した。「あ、ショウさんですか?」上から降りてきたのは武装したエルフだった。「あ、はい。」「マーレ様からの伝言です。『この村を守って。』とのことです。では私はこれで。」「なぁ、マーレは来れないのか?」テイリアスに聞くと、「ティアの記憶を戻すことを優先する以上無理でしょうね。」と返された。ちょーぜつ短い伝言を伝えるとその人は足早に去っていった。「なぁ、どうやって攻めるよ。あの人行っちゃったけど。」「そうね。どこに捕らえられているのか分かれば楽なんだけど。」テイリアスが腕を組む。「とりあえず階段を降り切ろうか。」テイリアスの提案で俺たちは階段を降り始めた。「なんか、急に人の気配がなくなったな。」やっぱり人の気配を感じない。「なぁ、テイリアス。これってさ。」ちょっとさっきから気になっていた。「うん。多分幻影魔法だね。」そういうとテイリアスは地面に魔方陣を出現させた。「ウェアス。」なんだか一瞬で霧が晴れたような気がした。「ショウ後ろ!」ニルティアが叫んだ。俺は剣を抜き、しゃがみながら横に剣を振って振り向く。意図的に空振ったけど、そいつは後ろに跳んだ。「チッ!」なんか舌打ちされたんですけど。背後にいつの間にか近づいていたようだな。「テイリアス、これは穏便に、とは行かないかもな。」「もうそうなるでしょ。」あっさり周りを囲まれていた。「おい、あのエルフ高く売れるんじゃねぇか?」1人の男がテイリアスの方を見ながら言った。「よし、女以外は奴は殺してもいい。」女以外って、俺しかいないんですけど。んー、めちゃくちゃ多いな。多勢に無勢を極めている。こっちは4人、向こうはどんどん木の陰から出てくる。今の時点で20人はいるな。いやぁ、斬りたくないんだよな。「ショウ、来るよ。私が相手するね。」アイシャに背中をつつかれた。前から剣を構えた男が突っ込んでくる。「アロブド。」アイシャが男に向かって数発打ち込んだ。砂煙で見えなかったけどおそらく当てていないな。だんだん見えてきた。「ひ、、ひ、、。」男の周りには小さなくぼみができていて、男は腰が抜けているようだった。まぁ、このくらいのやつらなら俺が剣を抜かなくても対応できるだろう。「おらぁ!!」子供っぽい声とともにニルティアが男たちの急所を蹴り続けている、、。怖いな。獣人族は基本近接攻撃だから、あーゆーことは得意なんだろうけど、絶対にされたくない。「エモタズ。」テイリアスは魔方陣から3体のヴァレンスを出現させた。「行っておいで。」テイリアスの声でヴァレンスたちは男たちに向かって進み始めた。うわぁ、容赦ねぇ。どんどん敵が減っていく。俺は突っ立っているだけだが。「ショウ!あと少しだよ!」ニルティアが大声で叫んだ。なんかニルティアがぼやけて見えるな。、、なんだ?霧か?俺が足元を見て、また前を向くと、さっきまで元気に動き回っていたニルティアたちが倒れていた。
週末ではないですが、書けてしまったものは投稿しないと気が済まないので投稿しました!さて、奴隷商からの襲撃によって