12話 魔の手はすぐそこに
俺は扉がノックされる音で目が覚めた。人が気持ちよく寝てるところを起こすのはやめましょうね。「ショウ。いいかな?」なんだ、アイシャか。「いいよ。今起きたところだけど。」扉が開いて、アイシャが入ってくる。「おはよう。」「おはよう。」少し間が開く。え?挨拶だけってことはないよな。「ちょっと話があって、」「ん?なに?」アイシャは一ドアを閉めて部屋の中央にいある椅子に座って机に手を置いた。俺はベッドから出てアイシャと向かい合うように椅子に座った。、、まだ寝たかったな。「、、ショウって、どこの出身なの?」、、はい?、、え?「えっと?」「あ、いや、なんだか私たちにとっては常識のことでも聞いたときに驚いてる時があったからさ。まったく常識が違うところから来たのかなって。」違うも何も世界が違いますけど。まぁ、転生してきました!なんていうつもりはないけし、、。「えっと、説明するのも難しいくらい遠いところから来たんだ。」適当にかわさないと。「ふぅん、そっか。じゃあ、軽く教えておかないといけないかな。」いい機会かもしれない。「お願いする。」アイシャの鬼講座の始まりだった。アイシャの鬼、、もとい優しい講義のおかげで知らなかったことを知ることができた。どうやらこの世界には第4勢力というものがあるらしい。第1勢力が俺たち人類だ。そして第2勢力が魔族、第3勢力がエルフ族、第4勢力がドワーフ族らしい。異世界転生にはありきたりな種族だな。そして今は人類と魔族がお互いに嫌がらせをしあっている状況。どちらかと言えば魔族が優勢らしい。エルフ族とドワーフ族は存在してはいるらしいが、アイシャ自身も見たことはないという。「これが大体の今の状況かな。」「あ、ありがとう。」「いえいえ。」ほぼ強制的に教えられたから礼を言うものなのかはわからないけど。「ショウ、今日の予定は?」そうだな。昨日のハイゴブリンの報酬とこれまでの日々の積み重ねの報酬でそれなりの金はたまったからな。「今日はウドルフ商店街に行ってみようと思ってる。」「おー、買い物?」「そうだな。」「じゃあアリスも起こさないとね。」アイシャは立ち上がる。「準備が出来次第下に降りて合流しよう。」「分かった。」アイシャは部屋を出て行った。俺も着替えて準備をしよう。はぁ、完全に目が覚めてしまった。
下に降りるとアリスとアイシャが待っていた。二人ともクエストに行く服装ではなくちゃんと私服だ。よかった。まぁ、ローブは私服なのだろうけど、アリスは白いローブでアイシャが黒いローブ。そしてアリスは白いシャツ黒いリボンをつけて、黒いスカート、アイシャは紺色のワンピースのようなものか、。「ショウさんのほうが遅かったですね。」アリスが言うと、「まぁ、時間指定はしていないしいいんじゃないの?」とフォローしてくれた。ありがとう。「とりあえず、行きましょうか。」アリスの呼びかけに従って俺たちは宿を出発した。
商店街に着くと、アリスが真っ先に魔導書を扱っている書店に吸い込まれていった。俺はアイシャと顔を合わせる。「アリスって、面白いよね。」「あぁ、俺もそう思う。」「ま、魔導書は楽しいかなー。」さっきアイシャに教えてもらったけど、この世界はややこしくて、魔法もスキルの中に入るらしいけど魔導書で得ることもできるらしい。しかし魔法には適性があるため、魔導書で得る場合にも魔法の適正にあってなければ得ることはできないため、まぁ、魔導書を買って魔法を得ようとするのは一種の賭けといっていいだろう。「ショウ、私も見てくる。」そう言って書店の中に吸い込まれていったアイシャの声は弾んでいた。やれやれ、、あの人たち何歳だ?、、いや待てよ、、そういえば聞いてなかったな。俺は大体20過ぎだろうけど、。精神年齢は知らんけど。「ショウさーん!」アリスに呼ばれた。「あ、今行く!」俺も書店の中に入る。「ショウさん、これよくないですか?転移系の魔法です。」「アリス、たぶんそれ上位魔法だよ。」「あ、じゃあ無理ですね。」上位魔法?そんな概念がここでもあるのか?と、2時間前の俺なら思っていただろう。魔法にも種類があるらしく、下位魔法・中位魔法・上位魔法・伝説魔法とあり、そして世界で1人しか使うことができない固有魔法がある、らしい。なにせアイシャの知恵だから多分あっているけれど確証がない。「ショウさんって魔法は使わないんですか?」使えないのではない。使いたくても魔法攻撃1の人間が放ったところでだろ。風神斬りはあれは魔法らしいけどほぼ近接攻撃だし。「あ、アリスこれとかどう?」アイシャが魔導書を手に取り、アリスに見せる。「治癒魔法、ですね。下位魔法の発展だから、中位魔法ですね。」「そ。アリスってサポート系の魔法が得意そうだなーって思ったから。」「たしかに、前衛の魔法使い、という感じではありませんね。ショウさん。買っていいですかね?」「俺はいいと思うぞ。」何が良くて何が悪いのかわからないし。「それじゃあ買ってきますね。先に外に出ていてください。」「分かった。」
外に出ると、鐘が鳴り響いていた。店の中では聞こえていなかった。「ショウ、この鐘ってたしか。」え?鐘?正午とかかな?いやまだ全然午前中だ。この鐘のリズム、、なにか恐怖心が煽られるリズム。ってことは、、。「ショウ、まずいよ。この鐘は、、、魔族の襲撃だ。」その瞬間俺の全身に鳥肌が立った。魔力を感じた。俺ですら感じ取れる魔力量、、。「ショウ、たぶん少なくても500はいる。この魔力は、ゴブリンだけじゃないね。」アイシャが少し震えながら言う。おそらく魔力を感じすぎて体が勝手に震えているのだろう。俺は門を見る。門までは1kmはあるな。「休暇返上でクエストになるかもな。」そのときアリスも店から出てきた。「お待たせしまし、、た。なんですかこの魔力。」「アリス。クエストだ。」ふっ、決まった。「わかりました。」飲み込みはっや!「行くぞ。」俺たちは門に向かって走り出した。
さーて、さぼりかけてましたね。危ない危ない。ちゃんと書きますとも。さて、一難去ってまた一難、とはまさにこのこと。ウドルフ防衛戦、開幕でございます。最弱を脱却しかけているショウ、今回の防衛戦では役に立てるのでしょうか。楽しみにしてもらえると嬉しいです。