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117話 敵の素性

 「なにやってんのさ。」


頭上から声が聞こえた。


「左手がないからって、諦める?

論外。

そんな覚悟で魔族と戦おうとしてんの?」


聞き覚えのある声だった。


「魔族に勝つためなら、どんな手でも使わないと。」


顔を上げるとそこには逆手で持った剣で魔族が振り落ろした武器を受けているマリガルドがいた。


「ここで死なれたら、困る人間がそこにいるでしょ。」


周りを見ると、リーゼが駆け寄ってきていた。


たしかに、今は死ねない。


「なぁ、魔族の剣士。」


マリガルドは私に頷いた後、そのまま魔族にしゃべりかけた。


しかし、その圧は私に対してのものとは比にならないくらい重かった。


「エルフ族、か。魔法が得意な者が多いと聞いていたが、

そうか。お前が族長の双剣使いか。」


魔族はマリガルドの両腰を見て確信したようだ。


「お前、相当手練れだな。」


「へぇ、これくらいで手練れって言ってくれるのか。

人類サイドはチャンバラレベルなのか?」


挑発。それもバレバレの挑発。


そんな挑発に乗る馬鹿いない、いや。ピンセなら乗ったかもしれない。


私は手首から先がない左腕を見ないように右手で剣を握った。


そうだ。私には()()()()()()()


「なら、そのチャンバラをしてみるか?」


マリガルドは魔族の剣を受けたまま、右手をもう一本の剣の柄に置いた。


「とどめを刺しておきたかったが、手負いが一人いるとはいえ2対1の勝負を受ける気はない。」


魔族は後ろの方へ飛び、そのまま魔法陣を展開して消えた。




 テイリアスとファニアの背中が見えた。


そして、2人の足元に倒れている人も見えた。


背中に大きな翼、メリアか。


俺たちはファニアが作り出したのであろう何重にも重ねられた氷壁で身を守るようにしてファニアたちに近づいた。


「どうだ?」


2人とも驚いたようにこちらを見た。


「最悪。」


少し経った後、ファニアがそれだけ言った。


だが、それだけで分かった。


「何が起きた?」


俺はメリアの方へ動きながら聞いた。


「突然空から落ちてきて、見たことのない傷跡なの。」


テイリアスがアロブドを空に打ちながら言った。


俺はメリアの脇腹に目が言った。


その瞬間、俺の頭の仲である言葉が浮かんできた。


『銃創』


頭の奥から冷えていくのを感じた。


この世界で()()使()()()()()()()


その事実だけで俺は意識が飛びそうだった。






 「標的への命中を確認。こちらの位置が露見したため一時撤退します。」


「了解。」


ホルペル。


「なぁ、ソウタ!今日の“狩り”はもう終わりなのか?」


「違うよ。まだすぐに戻る。」


「じゃあなんで帰ってきたんだ?」


「疑問があったら何でも聞くの、変わらないね。」


「まぁ、お前とは長い付き合いだからな!」


「3年とかでしょ。」


「いやいや、そんなもんじゃないぞ!」


「それくらいだから。」


「ソウタは冷たいなぁ、っとと。()()からの報告共有と任務だよ。」


会話中にイングルの頬が赤くなった。


どこにいようと情報を共有してくれるのはありがたいけど、会話中はやめてほしいかもな。


「ん、なに?」


「敵勢力の主力級1人の左手をリュウが切り落としたって。」


「それで?」


「リュウはそのあと支援に来たエルフ族長(危険度最大)に遭遇して撤退。

負傷した人類の処理が任務だね。」


イングルは軽い口調で言う。


「まったく、軽く言ってくれるよ。」


「狙撃の名手のソウタが期待されてるってことだよ!」


「やっとちゃんと発音できるようになったね。」


「だってそんな言葉こっちの世界にはないんだから仕方ないでしょ?」


「はいはい。行くよ。」


「はーい。」


「生成―合成金属―。」


「いつ見ても綺麗だよなー。」


ちょっとやかましいかも。


「変形―狙撃。」


「よし、行くか!」


はいはい。


ホルペル。




 「ソウタが来たぞ!」


いや、そんなに騒ぐことじゃないでしょ。


「ほらほら!ソウタも胸張って威張ってこー。」


「そんなキャラじゃないの知ってるでしょ?」


「ごめんって。」


小さい生物は俺の肩に乗ったまま両手を合わせた。


こいつ、


「自分の可愛い部分を分かってやがるな。」


「久しぶりに褒めてくれたね~。」


褒めてねぇよ。


「ほら、任務の対象は?」


話題を変えるしか無い。


「だんだん的は陣形を立て直してきたようで、ついさっき後方からの攻撃部隊の半分以上がエルフ族長に蹴散らされたとの報告が入りました。」


へぇ、そんなにやばいやつがいるんだ。


撃つのが楽しみになってきた。


「ソウタ、狩りの前の顔になったな。」


「そりゃ、楽しみだからね。」


自分の愛銃―イグレッド―のトリガーに指をかけた。


感触はいつもと変わらないはずなのに、いつもよりもイグレッドが軽く感じる。


久しぶりの感覚だな。


この世界に来てから、全てが上手くいっている。


「イングル、行くよ。」


「はーい。」


「特殊分隊副隊長トリミヤ・ソウタ、」


「ソウタの補佐ナビゲーションシステム、イングル、」


「戦闘に入ります。」

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