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10話 最弱、さらなる惨状を目の当たりにする

「はぁ、はぁ、、お、お前、、そんな、蹴りが、、。なぜだ!!」ロイルは立ち上がると俺に向かって大剣を向ける。なんだろう、、なんて言ってるのか理解できない。いや、違う。理解はしているけどすべてに納得できずに反対しているような感じでもある。まるでこいつの存在すら認めたくないように。「お前、人の命をなんだと思っている?」俺は知らない間にそんな言葉を口にしていた。「命?あぁ、命か。俺にとっての人間の命は、、おもちゃだな。」何を言っているんだ?こいつは。ロイルは向こうで戦っているエドワードたちにも聞こえるような大きな声で話し始める。「リエットとルノイだっけか?あいつらだって同じだぜ?俺たち冒険者狩り(アベント)はみんな楽しんで冒険者を殺している!」冒険者狩り(アベント)、アリスからこの世界について教えてもらったときに聞いたことがある。それに、冒険者協会の掲示板に注意書きが書いてあった。最近冒険者が何者かに殺されるケースがあるということだった。「あいつら最高だったぜ?リエットとかいうやつは必死に命乞いをしてきたなぁ、、まぁ、顔面殴ったらすぐ泣きだしたがなぁ。あの顔は最高だった。」こいつ、、性根が腐っていやがる。「必死に命乞いをするあいつに剣を突き付けるときのゾクゾク感は忘れられないぜ?その後は、、」「もういい。」「おっと、少ししゃべりすぎたか。さてと、さっきは不意打ちを食らっちまったが、今度は俺からいくぜ?」不意打ちではなかったと思うけど。ロイルは一瞬で俺との距離を詰めてきた。ノールよりは遅いが、十分速い。下からロイルが大剣を突き上げてくる。とりあえず後ろに跳んでそれを避ける。ロイルは振り上げた剣を俺に向かって構えなおす。「さてと、俺はいつまで戦ってもいいんだが、お前のお仲間はそうはいかねぇんじゃないか?」俺はふと後ろを振り向いてみんなの状況を確認する。さっきまでどちらかと言えば優勢だったエドワードとノールが背中合わせになり、ハイゴブリンに囲まれている。アリスはアイシャの作った結界の中でアイシャとなんとかしのいでいる。、、他の冒険者はみんなハイゴブリンに群がられている。多分もう助けられない。「よそ見していていいのか?」ふと気づくとロイルに距離を詰められていた。「くっ!」ぎりぎりのところで剣が間に合ってロイルの剣を受け流せた。あと少し遅かったら俺は脳天から真っ二つになっていただろう。「受け流しただけで満足すんなよ?」ロイルは90度回転した。なんだ?と思う間もなく俺の腹にロイルの足が食い込んだ。「がっ!!」とてつもない蹴り、、。くの字に体が折れたまま俺は木の幹に体を打ちつけた。「ごふっ!」口の中で血の味がした。「ショウ!」エドワードが叫ぶ。「おっと、お前の相手はゴブリンだろう?」ロイルがそういうとゴブリンたちがエドワードに跳びかかっていった。「くそっ!」「エドワード!まずは自分の安全を考えて!」背中合わせにノールがエドワードに言う。「、、わかった。ショウ!立て!」「あいつらの言うとおりだぜ?早く立てよ。もっと楽しませてくれよ。」ロイルが近づいてくる。「ショウさん!」遠くからアリスの声が聞こえる。俺だって早く立ちたいんだけど、、。全身がズキズキ言ってて動かないんだよ。くっそ、、どんどん足音が近づいてくる。「はぁ、もうおしまいかぁ。」俺は木の幹にもたれかかりながら上を見上げる。「おっと、そんな目すんなって。もうお前は負けているんだからよぉ。あ、そうだ。お前には仲間の最期を見せてやろう。見てみろよ。」ロイルに指刺されたほうを見ると、エドワードが折れた剣を振り回していた。「く、来るな!来るなぁ!」「ギギギギ、、」ゴブリンたちがじりじりと距離を詰めている。、、ノールは、、、アリス達と結界の中で震えている。「来るなよ、、来るな、、、来るなぁぁぁ!!」ゴブリンたちが一気に跳びかかる。カラーン、剣が落ちるのが見えた。「ギギ、」バキ、バキ、バキ、と異質な音が聞こえる。ゴブリンが何かを投げた。俺の足元へそれは転がってきた。「ひっ、、。」思わず声が出た。エドワードの右腕だった。「おっと、食われているな。さてと、次はお前の番かな?」ロイルに髪をつかまれて顔を覗き込まれる。「あ、そうだ。お前のパーティーのアリスとか言ったっけか?あいつを犯してやろうか?そうだな、そうしよう。」ロイルは立ち上がると、ハイゴブリンを斬りながらアリスたちのほうへ向かう。くっそ、、体が動かねぇ。「きゃぁぁぁ!!」アリスがロイルに髪をつかまれている。ノールとアイシャは、、、ノールはしゃがんだ体勢のまま首を飛ばされて血が噴き出ている。アイシャは右肩を抑えているが指の隙間から血があふれている。すぐ近くにゴブリンが来ているが、全く反応していない。諦めているようだ。あのままだと食われる。くっそ、、動けよ、最弱だからって、、逃げていいわけがないだろ、、。俺は木の幹を伝って立ち上がる。目の前にゴブリンが来た。「ギギ、ギギギ。」ふう、なんだ、、まだ剣は握ってるじゃねぇか。戦意はまだある。さっきのスキルの感覚、、勝手に体が動く感覚、。あれを思い出せ。あの時の頭がおかしくなるような怒りを。仲間を殺されて感じた怒りを。死んでいった仲間を侮辱された怒りを。あぁ、そうだ、思い出した。俺はあいつを殺さないといけない。「凶刃(きょうじん)の舞・酷・(つい)の番。」また勝手にスキルを唱える。説明は見せてくれよ。『終の番:魔力をすべて消費し、その魔力分全ステータスを加算する』え、強いな。俺の魔力はさっきの戦闘で少し消費したから今は31か。あー、魔力が剣に吸われていくのがわかる。その分体が軽くなる。「お?お前、魔力が消えたな。何してんだ?」ロイルはアリスを突き飛ばして俺に剣を向ける。「きゃっ!」「アリス、俺が言えることじゃないけど、アイシャだけでも守ろう。」「、、わ、わかりました。アイシャ!」「あ、あ、アリス、、隊長が、エドワードが、、ノールさんが、、」「今は気にしちゃだめです!」「あ、、あ、、」「失礼します。」パーン!とアリスはアイシャの頬を叩いた。アイシャは頬を触る。「い、痛い。」「アイシャ、お願いです。生きて帰りましょう。じゃないとエドワードさんもノールさんも安心できませんよ。」アリスの声が震えている。「そう、、だね。、わかった。シューゲル。」アイシャの周りに氷のつららが落ち始めてゴブリンたちを串刺しにしていく。「みんなの仇、ここで討つ。ノインカ。」アリスとアイシャの周りに結界ができる。「へぇ、まだやるのか。」ロイルは俺をにらむ。「お前、さっさと殺してやるよ。」あ、さっきの感覚だ。何も感じない。ただこいつを、仲間の仇を殺すことしか考えていない。「今すぐに殺してやる。凶刃の舞・酷・無神突(むしんづ)き」俺は猛スピードでロイルめがけて突きを繰り出す。「なっ!」この技は防いだり受け流そうとすれば最期、受け流す前に貫通する。ロイルは俺の予測通り剣で受け流そうとする。「受け流せる限り意味ない!」「そんなことはない。」ロイルの剣に俺の剣が触れた瞬間、ロイルの剣がぼろぼろと崩れていく。「な、」ドス、とロイルの胸に剣が刺さる。「お、、お前ぇぇぇ。」ロイルが俺の剣を掴む。「茶番に付き合うつもりはない。」俺は剣をひねりながら抜く。「かはっ。」ロイルが血を吐きながら胸を抑える。抑えたところから血が大量に流れている。「全く、すぐに調子に乗るからいけないんですよ。」どこからか声がした。と思うと、ロイルのそばでしゃがんでいるフードを被ったやつがいた。「お前、何をしている。」そいつは振り向きながら言った。「なにを?あぁ、ロイル君を回収しに来ました。」「なんだと?」「すみませんが急いでいるので。」「逃がすわけねぇだろ。」俺は剣を構える。「さてどうでしょう。お仲間が危ないですよ?」はっとアリスのほうを見ると結界の周りにゴブリンが壁のように厚く重なっている。「くっ。」「わかってもらえたようでよかった。」「返せよ。」「は?」「俺たちの仲間を返せよ。」「それは無理ですね。人間命は1つ、それを取られないように生きている、2回もチャンスがあるわけない。それでは。」そいつはロイルを軽々と背負う。「逃がすか!」俺は剣を投げようと振りかぶる。「ショウさん!」名前を呼ばれてハッとする。振り向くと、アイシャの魔力が尽きかけていた。俺が振り向いた瞬間にロイルを背負ったやつには逃げられてしまったが、仕方ない、仲間の命が優先だ。「凶刃の舞・酷・乱華千本」一気にアリスたちの周りのゴブリンを掃討する。「助かりました。」「、、ありがとう。みんなの埋葬してくる。」アイシャは震える声でそう言ってから立ち上がった。「手伝うよ。」「もちろんです。」11人、裏切り者が4人いたから7人の仲間のうち、5人を失った。エドワードの懐中時計と、他のメンバーの遺品をアイシャは1つの袋に入れた。ノールのパーティーの遺品はアリスが集めていた。最後にエドワードを埋めた後、アイシャは跪いて土下座した。「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、。私が弱いから、、私が弱かったから、、」アリスがアイシャの肩に手を置く。「そんなこと誰も思っていませんよ。」「でも、、」「でもじゃないです。アイシャさんに助けられてここまで生きていた人だって多いんですから。」「許して、、くれるかな。」「許すも何も、誰も責めていませんから。、、ショウさん、これからはどうしますか。目の前にガデルがありますが、、。」さすがに無理だろう。「まぁ、この人数だと―」言いかけたところで言葉が遮られた。「行きましょう。」驚いて言葉の主のほうを見るとアイシャだった。「行きましょう。」「でも、アイシャさん。」「明日、行きましょう。エドワードたちが最後にやろうとしたクエストですから、私の手で終わらせたいです。」んー、とは言っても危ないけど。「ショウさん、、行きますか?」アリスに聞かれて悩む。「ショウさん、、お願いします。」アイシャ、、。「、、危ないと思ったらすぐに退くぞ。」「ありがとう。」「最後は優しいんですから。」「あ、でも、、とりあえずウドルフに戻りませんか?報告はしないといけないですし、、」確かにそれはそうだな。「アイシャ、クリスさんに言ってこのクエストはキープしてもらおう。」アイシャは少し考える。「、、わかった。とりあえず今日は帰ろう。」俺たちは帰る支度をした。そして帰り始める前にアイシャがみんなを埋めたほうを振り返って、「みんなのこと、絶対忘れないからね。見ててね。」と言ったのが聞こえた。「アイシャさーん!帰りますよー!」一番先に行っていたアリスが振り向いてアイシャを呼んでいる。「はーい、今行く。」アイシャが走ってアリスに追い付いていく。

はい、できました。長いですね。ちょっとこれからは軽く楽しい話にしたいと思います。書く側の精神疲労が半端ないので。

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― 新着の感想 ―
前回に引き続いて重い内容だったけど、心理描写が細かくて読みやすかったです! アイシャは特に辛い思いをしたはずなのに、最後には前を向く姿に感動しました。 次回からの明るくて楽しい話!こちらも楽しみにして…
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