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馬車の皇女様

「あっ……」


首領の体が後ろに倒れ、地面に横たわった。

命に替えても、依頼主の名は明かさないということか。賊ながら見事なものだ。


一方、手下の覆面達は道路を離れ、林の中に姿を消していく。今から追っても、捕まえるのは難しそうだ。仮に捕まえたとしても、首領のように自決してしまうのが落ちだろう。


「…………」


暗殺者達を生け捕りにはできなかったが、とりあえずできるだけのことはした。長居は無用だ。僕も撤退しよう。

口に指を当て、音を鳴らしてバルマリクを呼ぶ。バルマリクはクナーセン将軍とマルグレーチェを乗せたまま、僕の近くに着陸した。将軍とマルグレーチェは、バルマリクを降りて走り寄ってくる。


「大事ないか!?」

「もう、心配したわよ! 怪我はない?」

「大丈夫です。心配をおかけしてすみません……」


僕はズボンを直すと、首領の足元に散らばる液体の正体――ポルメーを呼んで肩の上に止まらせた。首領は小便だと思って避けたのだろうが、そうそう都合よく小便が出てくれるはずもない。バルマリクから降りる前に、ポルメーをズボンの中に潜ませておき、前から飛び出させたのである。


「行きましょう」

「うむ」


僕達がバルマリクに乗り込もうとした、そのときだった。


「お、お待ちください!」


馬車を護っていた兵のうち、騎馬兵の一人が馬を降りて飛び出し、僕達の前に跪いた。


「あなた方は、クナーセン将軍閣下にアシマ・ユーベック卿ではありませぬか!」


しまった。面が割れてしまった。慌ててバルマリクに跨ると、その兵士は立ち上がってバルマリクの首に取り付き、さらに言った。


「お忘れでございますか!? 辺境伯の下で警備隊長を務めております、ローグ・ガルソンにございます!」


兵士は兜のひさしを持ち上げて見せる。その顔には、確かに僕も見覚えがあった。

将軍が問いかける。


「ローグ・ガルソンであったか。では、馬車に乗っておるのは辺境伯か?」

「いいえ、それが……」


ローグ・ガルソンが首を横に振った、ちょうどそのとき、二台の馬車のうち、前に停まっていた方の扉が開いた。使用人らしい男性がまず飛び降り、扉の下に収納されていた階段を下ろす。


続いて降りてきたのは、金色の長い髪をたなびかせた十代後半ぐらいの女性だった。着ている白いドレスは見るからに上等な造りで、明らかに身分の高い女性と分かる。


ローグ・ガルソンが言った。


「リーラニア帝国第三皇女、キアラ・シャルンガスタ殿下にございます」

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