表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/212

立つ鳥、なるべく跡を濁さず

獣舎に戻り、部下達を集めて僕がクビ&追放になったことを告げると、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


「そんな舎長! いきなり辞めるなんて、俺達明日からどうすれば!?」

「舎長が来てから、我々の待遇も良くなったのに……」

「いっそ全員で国王陛下に直訴して、追放の撤回を!」

「み、みんな、落ち着いて!」


やっとのことで部下達を宥め、僕は言った。


「こんなことになってごめん。残念だけど、僕が追放されるのはもう決定なんだ。新しいテイマーの人が来るまでしばらくかかるみたいだから、それまでみんなで、獣達が暴れないように抑えておいてほしい」

「ど、どうやって……?」


(いぶか)る部下達。僕はそれぞれの獣の担当者を決め、その担当者の言うことを聞くよう、獣達に最後の命令を与えていった。これで僕がいなくなっても、獣達を抑えておくことができる。


「一匹ずつ、言うことを聞くかどうか確認して! 従わない子がいたら、もう一度僕から命令し直すから言いに来て!」


そう部下達に指示を出すと、一人の部下が僕のところにやって来た。


「舎長、こいつがどうにも……」


部下の言うことを聞かないのは、ドラゴンのバルマリクだった。この獣舎にいる中で、最も大きく強い魔獣だ。

僕は何度か命令し直したが、結局バルマリクは誰の言うことも聞かなかった。


「……仕方ない。バルマリクは僕が連れて行くよ」

「そうしていただければ助かります。しかし大丈夫でしょうか……?」


部下が不安そうに言う。それはそうだろう。王宮で飼っている魔獣を勝手に連れ出せば、お咎めがあってもおかしくない。


でも、問題を起こすのが目に見えているのに、ここに置いていく訳には行かなかった。バルマリクが暴れて誰も抑えられなければ、どんな被害が出るか分からない。


僕は腹を括った。


「どうせ追放なんだ。少しぐらい悪さしてもいいよね」


そう言ってバルマリクの頬を撫でる。バルマリクは喉を鳴らした。


「GRRUUU……」


そのとき、何かが僕の足元に纏わり付くのを感じた。見ると、スライムのポルメーだ。ポルメーは僕の足を這って、上の方に登って来ようとしている。


「……お前も、一緒に来るか?」


そう尋ねると、ポルメーは嬉しそうに「PUUU!」と鳴いた。


 ☆


夕方近くになって、ようやくバルマリクとポルメーを除く獣達が、それぞれの担当者の言うことを聞くようになった。一時はどうなることかと思ったが、少なくともこれでしばらくの間はしのげるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ