36、勇者達
「という事は7日後手を打たなければ王都に攻め込んでくると。そういう事か?」
「はい、そうです。」
「とんでもない事になったな。」
「そもそも王様があの村を選ばなければ!」
「そう騒ぐな。かねてより勇者達の経験不足が課題だったのだ。だから仕方なく。」
「無実の村を。これならどっちが悪者かわかりゃしない!」
「貴様!勇者といえど口が過ぎるぞ!」
王付きの衛兵がブルーを拘束する。ブルーは暴れる。王は呆れた表情で衛兵に言う。
「こいつはいいのだ。離しなさい。」
衛兵は納得いかない様子でブルーから手を離した。拘束を解かれたブルーはわざとらしく服を整えた。
「とにかく手を打とう。ロードをここへ。」
衛兵は部屋を出ていく。ロードがくるの?キースはロードを信用していたしここに呼ぶのも当然か。
キースは全員詳しく話すように促した。マリアは主に作戦の概要をカイルは側近の様子を事細かに話している。人を観察するのが得意らしい。
私はここでも子供扱いなので何も聞かれなかった。と言っても皆、話してしまったので特に言う事もないが。
「キースこんな深夜に何事だ?と君達は今回の勇者達か。揃いも揃って何があった?」
この後キースから全てを聞かされたロードは落ち着いて考えを巡らせているようだ。ロードは20年前からさほど変わっていなくて拍子抜けした。
「そうか、緊急事態だな。君達はまだ経験が浅い、だが魔王城へ行かなければ魔王が王都に攻め込んでくると。しかも期限が7日か。どうしたものか、やはり私とジェーンとで行く方がいいのではないか?」
「いや、2人は危険過ぎる。」
「だったらもうあれだな。」
「いや駄目だそれは。」
「いやもうそんな事を言っている場合では無い。」
そしてキースとロードは言い争いを始めた。喧嘩になりそうだ。専門家達も子供達も完全にひいている。
「だから、俺とジェーンはこの子達に付いて行くって言ってるだろう!」
「そうなると王都は誰が守るのかって聞いてるだろう!」
「お前も勇者だろうが!自分の身は自分で守れよ!」
「そんな無責任な、民はどうなる!」
「こんな時だけ民は民はって。いい加減にしろ。」
駄目だヒートアップしている。こういう時いつも仲裁するのはジェーンだった。だけどここにはいない。ジェーンがいてくれたらきっと。もういい加減にしなさい!って。
「いい加減にしたら?この子達にそんな醜態を晒すのはやめて。」
2人を諌めるこの声は、部屋の入口に視線が集まる。入口の女性は黒いワンピースに黒いベールをしていて見た目では誰か分からない。でもこの声は。
「ジェーンお前どうやって出たんだ!」
「呼ばれたのよ。あなたの秘書に。」
キースはますます顔を赤くさせている。やはりジェーンだ。昔は僧侶らしく全身白い服を着ていたのに。喪に服しているのか、それとも自戒の為に?ジェーンと呼ばれた人は顔を隠したままロードの隣に座った。
「ブルー、マリア、カイル、リコ、君達は外してくれ。」
王の言葉により部屋を出た3人は歩き始めたが私は魔法でなるべく小さなネズミに変身して話を聞く事にした。
ジェーンとロードの2人はついて行く案を詰めていたのかキースは完全に言い負かされた。
「分かった。とにかく2人はサポートにまわれ。君達は魔王を倒した最後の勇者だ。皆の希望だ分かっているよな?君らを失う訳にはいかないんだぞ。ジェーンお前は本来犯罪者だ。でも魔王に勝てない状況が続いてお前の価値が上がっただから監視付きではあるが自由に過ごせているんだ。」
「城内をでしょう。でも分かっているわ自分の立場は。」
「とにかくお前達は死ぬなよ。」
「リコー!どこにいるんだー!」
まずいバレたか遠くの方でマリアの声が聞こえる。ここまでか仕方ないお手洗いの前で待機しよう。
「リコ、トイレにいたのかちゃんと誰かに言ってからにしなさい。探したぞ!」
「ごめんなさいマリアさん、寮に戻る前に済ませておきたくて。」
しゅんとしてマリアさんを見る。
「まあ見つかったからいいよ。さあ戻ろう。」
マリアは私の頭を撫でた後手を引いて離さなかった。
これは問題児だと思われているな。ブルーは少し馬鹿にしたように笑い、カイルはやっぱり子供かと言い散々だ。
結局6人での魔王城行きが決まって残り6日というところで3日休みが与えられた。まあ最後のというやつだろう。
「リコ大丈夫だ!ロード様がきてくれるのだからあの人は強い!私のお師匠様だからな!」
嬉しそうに話しているマリアは休みの間もロードに稽古をつけてもらうそうだ。
カイルは故郷の孤児院で神父様に会うらしい。
「僕は王都にいます。ここが好きなので、それに何かあった時すぐに対応できるし。」
「そう、私は両親の墓参りに行くわ。」
それぞれの休みが始まった。私はあの村へ帰ろう。この姿のままで。




