35、掃討作戦
掃討作戦の指揮はブルーがとった。有識者の話ではあまり発達した村ではなく魔物の数も少ないから若い者達だけで大丈夫だ、それに国を守る者達まで外に出す訳にはいかないと王に進言し結果的に勇者一行と若い騎士の20人程で行く事になった。
掃討作戦の場所はやはり王都に近い魔物の村であの時と同じように子供の魔物もいる。あの時の思いを若いこの子達にさせる事を思うと辛い。
ブルーがたてた作戦は二手に別れて村の入口を抑えそのまま村の中心まで攻めていくというほぼ力技の作戦だ。ただ戦力が割かれるのでどうだろうと思っていた矢先、先行部隊が偵察から戻ってきて、裏口の門は完全に潰れていて開ける事ができないとの情報を得て戻ってきた。
これで完全に門から攻め込むスタイルになってしまった。
「とんでもなく不安だ。」
女子テントの中で呟くこのテントは私とマリアのみで、他の人は全員男性らしく、女子テントと男子テントはほぼ同じ大きさなのだが、こちらは広々としていて、向こうはぎゅうぎゅうらしい。
正直、私は一緒でも構わないけどマリアは由緒正しい貴族でまだ若い女性なのでまあこうなった。そして今は誰もいない。マリアはまだブルーと作戦について話し合っている。私は子供でもう遅いからとテントに帰された。
「正面突破できるかな?いや幾らなんでも厳しいかな。でも数で押せる?うーんでも皆、実戦経験ないし。」
私が寝ているかもと気遣ってそっとマリアがテントに戻ってきた。表情は険しい。会議上手くいかなかったんだな。
「リコまだ起きていたのか、明日は早いもう寝なさい。」
「マリアさんお疲れ様です。その明日どうなりました?」
「変わらないよ。ブルーは正々堂々、正面突破それしか言わない。」
「そうですか。」
腹を括るしかない。強いとバレてもいいからとにかく早く殲滅しよう。向こうは急にくるのだから態勢が整う前に全て終わらせないと。こちらの死者を0にするにはそれしかない。
マリアは眠る前に女神に祈っている。いつからだろう私達は旅に出てから僧侶のジェーンでさえ祈らなくなった。なんだかマリアの姿に悲しくなって私は目を背けてベッドに入った。
「皆さん、これから奇襲作戦を始めます。この村は人間を酩酊させる事のできる薬の開発やそれを使用し人間を誘拐した挙句、奴隷にし売買する事で生計をたてているのです。子供もいますが新しい芽を摘むと思って掃討しろとの事です。」
皆、黙ってブルーの話を聞いている。とうとうこの日がやってきた。全く嬉しくない不毛な事をする日だ。人間は本当に過ちを繰り返すのか。馬鹿らしい。
そう思った時だった。青い空からバサバサと音を立てて大きな鷹が現れた。皆ぼーっとその光景を眺めている。人が乗っているようだ。
「構えー!」
ブルーの叫びにはっとして皆が各々の武器をかまえる。
「待ちなさい!私は魔王様の側近です。魔王様から伝言です。この村の者達は無実だ。魔物の数をちまちまと減らす位ならまっすぐ魔王にかかってきなさい。との事です。」
「村の者達は無実?あの有識者達は?」
「いやそもそも王様が言い出したらしいぞ。」
「なんだと俺達何も知らぬまま虐殺しようとしてたのか。」
「待て待て魔物の言うことを聞くのか。」
「仕方ないよ勇者様だって騙されてたんだから。」
ザワザワと口々に話している。キースはそういう男かもしれないな。あいつ本当に。許さないぞ。でもその前にこの状況どうにかしないと。
「どうしますか?今すぐに魔王様の所へ連れて行きますよ。魔王城へ来ないなら私たちが出向きますとも仰っておいでです。」
側近と名乗った者が鷹の上から声をかけてくる。皆黙っている。どの行動が正しいか思案しているのだろう。
「我らはまだまだ経験の少ない青二才ばかりだ。上の指示を仰ぎたい。数日待ってはいただけないか?」
私は声を張り上げて叫ぶ。側近と名乗った者は真っ直ぐに私を見つめて言った。
「分かった。7日待つ。またここで。」
そう言って飛び去った。何とか凌いだかあいつは多分ここにいる者は殆ど歯が立たないな。子供が物怖じせず喋った事が珍しいのかジロジロと見られる。でもそんな事を気にしている場合ではない。皆、1度王都に帰そう。
私は全員、王都へ転移させた。騎士達は寮へ、私達4人は王城の前に。
「リコ、君がやったのか!」
マリアはびっくりして私を見るがそれどころではない。魔王が攻め込んでくるかもしれないのだから。早く王に伝えなくては。
ブルーも王城に着いた途端中に入り人を呼び付けている。有識者や専門家を呼べと要請しているようだ。
カイルは私を見て、やっぱり普通の子供じゃなかったと私だけに聞こえる声で呟いた。
ブルーが大騒ぎしたおかげで王との謁見が許された。




