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青鬼夜行

趣味で書き始めました。

読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムなし。

・デスゲームなし。

・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。

・読みづらい。

・残酷な描写や暴力表現あり。

・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。


(ウチの近くで暴れるんじゃねえよ…)


 6月18日木曜の午前1時。

紀里野道隆(きりのみちたか)は、パソコンの電源を落とすとスウェットの上下から外出着に着替えた。

休日の前の晩、投稿動画サイトを巡回していた所、知覚内に怪物の気配が侵入したのだ。


 奇妙な夢を見た1週間ほど後、道隆は自分の在り方が根本から変わった事に気が付いた。

常人離れした能力を喜んだ道隆だったが、生き方を改める事はしていない。

犯罪行為に用いれば、より豊かな暮らしを実現できると思われるが、実力の底が分からない。

事が露見した際の代償を考えれば、大それた行動を起こそうとは思わない。


 ただし、近所で異常事態が起こった際は解決に尽力する。

ヒーローを目指しているわけではない。生活が脅かされる可能性を廃したいだけだ。

この状況が公になった場合、名古屋のモノの流れが滞る恐れがある。

その中でも、漫画やゲームなど生存に必要ないサブカルチャーは真っ先に入ってこなくなるだろう。


 無論、人命救助にも大して興味はない。

親しい友人も恋人もいない以上、救助すべき対象は家族くらいのもの。

無報酬で危険生物を駆除しているのだから、文句を言われる筋合いはない。


 カーテンを閉め切り、私室の電灯を消した後で変身。

道隆の姿が白い燐光の中に消え、しなやかな体躯を持つ青い人型が代わりに出現した。

濃灰色の肌をセラミックに似たブルーの甲殻が鎧のように覆っており、背中から1対の背びれが生えている。

口元は皮膚が後退しており、剥き出しになった筋肉と骨は白い殺傷部位を形成していた。


 変身した道隆が操るのは「水」と「結界」。

その肉体を霧や水に変化させて、あらゆる隙間を通り抜けることが出来る。

彼はいつも通り現場には向かわず、人目を引かずに済む「戦場」作りから始める事にした。







――金だ。


 "それ"が路上から寝静まった住宅地を眺めつつ、最初に欲したもの。

彼がこの世に最初に生まれ落ちたのは月曜の午前1時。

親兄弟と呼べるものは誰もいないが、生きていくうえで必要なことはすべて理解していた。


 だから知識に従って、すぐそばの家の窓に懐から取り出したバーナーを照射。

"それ"――強盗殺人犯は焼き破りによって、ある民家の1階居間に侵入した。


 殺人犯は静かに寝室まで歩き、部屋で寝ていた生き物――老婦人の首を斧の一振りで砕く。

赤い液体がとめどなく溢れ、布団をあっという間に染め上げる。

隣で眠っていた夫の眠りは深く、目を覚ましたのは首と胴を切り分けられた後だった。


殺人犯は住人を始末すると、金目のものを探し始める。

箪笥の引き出しを次々と開けていき、鏡台を物色し、押入れの中身を寝室にぶちまけていく。


――!


 バッグの中に財布が入っていた。

それを懐に突っ込み、家から逃走するべく縁側に近づいた直後、彼を不可視の腕が掴んだ。

抵抗を試みるが、そもそも何も触れてない。身体そのものが動いている。


 困惑した彼は寝室に指を立てるが、爪が全て剥がれた以外に目立った成果は得られなかった。

まもなく彼の身体は障子を破り、ガラスを砕きながら縁側に転がり出る。

殺人犯はそのまま拾われた小石のように持ち上げられ、夜空の中を十数分、風船のように飛んでいく。

飛行は茶屋ヶ坂公園の上空に到達した時点で中止。その身体はあらん限りの力で地面に叩きつけられた。







 園内の階段に強かに打ちつけられ、痛みに身を捩った殺人犯の胴体を青い右足が貫く。

襲撃者は殺人犯の腹を貫いたまま、足を右に左に執拗に動かして傷口を広げる。

痛みと異物感に激怒した殺人犯は自分を貫いた者に向けて、握りしめたままだった斧を振り下ろす。


 殺人犯の胴体を踏みつぶした者――道隆は素早く足を引き抜き、分厚い刃から逃れると階段下に着地した。

彼はその存在を感知した後、人気のなかった茶屋ヶ坂公園を戦場に指定。

全域に一般人除けの結界を敷いた道隆は、園内に潜んだまま殺人犯の体液を思念で掴み自宅から引き離すと、ここに運んできたのだ。


(よく見ると人間じゃねえな。コイツ)


 道隆はオレンジの複眼で起き上がった生き物を見た。

一見すると黒ずくめの上下に身を包んだ男のようだが、顔のパーツが福笑いのように出鱈目についている。

顔の表面は凹凸が全く存在せず、卵のようにつるりとしている。

立ち上がった異形の男は、縦についた右目で青い衣に包まれた魔人を睨んだ。


 殺人犯に致命傷を与えるべく、道隆は上空の雲に「語り掛ける」。

遥か上空に浮かぶ雲は命令を受けた瞬間に魔力を帯び、超自然の速度で蠢きだした。

雲を構成する水滴が、電気を蓄積し始める。





 腹に風穴を開けた殺人犯だったが、走行に支障はなかった。

心臓など重要な器官に損傷はなく、出血も収まりつつある。

腹部に穴をあけた殺人犯は階段を駆け下りるが、道隆が腕を突き出すとその歩みは止まった。

体内の「水」が道隆によって、その場に縫い止められているのだ。当然、血液の循環も滞ってしまっているはずだが、男は気にせず足を動かし続ける。


 その時、変身によって鋭敏化した感覚が上空で起きた変化を捉えた。


 まもなく空気の壁を突き破り、稲妻が地上に落ちる。

轟音を伴った光の束は、殺人犯を瞬時に焼き尽くした。雷霆は道隆にまで及んだが、変身した彼の身体は雷を問題にしない。

殺人犯の消滅を確認すると、道隆は公園一帯に敷いておいた結界を寸断する。


 殺人犯が消滅した際、年季の入った財布らしき物体がその場に残った。

道隆は興味を惹かれたが、表面の血手形を認めると即座に視線を逸らす。

恐らく人を襲って手に入れたのだろう。真偽は明日以降のニュースで確認できるだろうが、火種を抱え込むような真似は避けるべき。


 直後、道隆の姿が公園から消える。

彼がいたあたりには霧が漂い、それは数百m上空に到達すると、透明な液の集合体に変化した。

飛行する液体は、寝静まる千種区を見下ろしながら自宅を目指す。

同居する家族に身体の変化を隠している為、外出がばれたら面倒だ。正体を晒した所で、愉快な状況にはならないだろう。


ありがとうございました。

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