6月21日(2)~6月22日
趣味で書き始めました。
読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムなし。
・デスゲームなし。
・俺tueeeは少なめ、チート能力は多め。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名とは一切関係ありません。
そっと健介が耳を澄ませていると、「火、消えましたね」「どうする?」といった声が聞き取れた。
――目立つよなそりゃ。
見られるのは不味い。気取られないようにそっと反対側に進路を変えた時、視界の隅に倒れている傘が入った。
――あっぶねぇ!
目立つ目立たない以前に、現場に私物を置いていくところだった。
健介が傘以外に持ってきたのは自宅の合鍵、後は着ている服くらいだ。忘れ物はないはずだが、細かく確かめている時間は無い。
音を立てないように慎重な足取りで、傘を抱えて裏から脱出した。
幸いこちらには人が集まっていない。
しばらく走り続けるが、行けど行けども民家ばかり。
身を隠せる場所を探す背中に、何者か触れた。
「うお!何!?」
思わず立ち止まると、少女の声が話しかけてきた。
「誰も見てないから、変身解けば?」
「誰!?」
追いかけてきたのか。
慌てて顔をあちこちに向ける。
視界に傘をさした人影が映り込むが一瞬で消えた。
人影が立っていた方に近づく健介の背中に、罵声が続けて浴びせられる。
「隠してあげてるんだから、さっさと戻れって言ってんの!」
「あっ、はい」
声の主を探すのはひとまずやめる。
健介は小走りですぐ近くの駐車場に入り、鏡でいつも見ている自分の姿を思い描く。
赤い異形は純白の燐光に包まれ、その背丈は急速に縮んでいく。
まもなく人間の姿に戻った健介を降り続く雨が濡らした。手に持った雨傘を開く。
ぴんと張った布地が雨滴を弾き始めた時、一つの結論に行き着いた。
「ひょっとしてお仲間さん?」
「多分」
「ホントに!?すげー!で、アンタどこにいんの?」
「言わない」
「顔くらい見せてよー」と健介は喚くが、返事はない。
気配を探ってみたが、全く掴めなかった。影が見えた一瞬、気配が入り込んだ気がするが、自信は無い。
ひょっとしたら姿が見えない点に秘密があるのだろうか。
しばらく声の主について推測していたが、相手が顔を見せない以上、こんな所に長居する必要はない。
「ありがとな」と呟くと、健介は自宅に向かって何食わぬ顔で歩き始めた。
★
(クソ!なんでこんな事に…)
駐車場に停まる車のボンネットの前に、馬飼千鶴は立っていた。
歩き去っていく青年を視界の端に捉えつつ、内心毒づく。
彼女もまた健介と同じように、ある日突然不思議な力を得た。
もっとも千鶴の場合、きっかけは交通事故だったのだが。
手に入れた力の片方は「誰にも見つからない」と言う能力。肉眼は勿論、写真や防犯カメラ、鏡などに全く映らなくなり、触らない限りは誰にも気づかれないという破格の力。
立てた音や体臭すら認識されないのは既に実験済みだ。展開と解除も一瞬で済む。
この能力を一通り試した後、千鶴は万引きから始めて、個人宅や企業の社員ロッカーなど様々な場所で窃盗を働くようになった。
最初のうちは罪悪感や恐怖で眠れない夜を過ごしたが、3日経ち、5日経ち、1週間が過ぎても表沙汰にならないとわかると、以前と同じように安眠出来るようになった。
近所で発生した強い気配に気付いたのが昨日。
発生源は街で度々見かけた怪物ではなく、自分と同質の能力者らしい。
今日一日、動向を観察していたが、化け物に変身できるとは驚いた。
こちらも運動能力が上がったとはいえ、自動車みたいな俊足を見せる屈強そうな怪人と真っ向からぶつかろうとは思わない。
一瞬だけ見せた火炎の力は威力と言い、派手さと言い、自分とは相性が悪そうだ。
隠密行動の力は自分以外にも使うことができる。
普段は戦利品を対象としているが、今回はその応用。
見捨てても良かったが、彼―走り去ったヤンキーみたいな男が万が一捕まった場合、警察に自分のヒントを与える結果になりかねない。
超能力の実在が知られる事に比べれば、この程度は危険のうちに入らない。
しかし友好を結ぶつもりはない。
自分の正体を知って見逃す人間などまずいないだろう。
それに彼を感知できた様に、向こうも自分を感知できるはず。
姿を隠している間は捕捉されないようだが、四六時中隠して過ごすわけにはいかない。
千鶴にだって日常生活があり、独り立ちできるほどの社会性もまだ備わっていない。
(これからどうしよう)
しとしとと降り続く雨の中、千鶴は鉄靴を履いたまま、脇目も振らず歩いていく。
数枚の板金を組み合わせたこの靴こそ、千鶴が得たもう一つの異能であった。
念じるだけで両足に纏わりつき、履いている間は彼女以外の全てが静止する。
空中の雨粒を、千鶴の傘が弾いていく。
鉄靴を装備している間の千鶴は、数万倍の速度の時間流の中に、身を置くことが出来る。
その有り様は例えるなら、深海に潜るダイバーのようなものだ。
帰宅途中、犬を散歩させている老人とすれ違った。
彼らが姿を隠したまま歩く千鶴に、気付くことはなかった。
★
月曜日の昼食の時間。スマホを弄りながら、健介は先週の事件を追想する。
気持ち悪い柴犬に出会って、猿と戦って――変身した。
学校の様子は、見た限りでは先週と変わりない。
あの廃屋は結局どうなったのだろう。テレビでは取り上げられていなかったはずだが。
――名古屋 化け物
検索を掛けたが、アニメ関連のサイトや「名古屋」「化」「物」にヒットしたサイトしか出てこない。
SNSを漁っても、怪物を目撃したようなコメントは見当たらない。
(けどこの状況に気付いている奴は間違いなくいる)
化け物との2度の遭遇において、思わぬ助けが入った。
親切な誰かはどうも女子のようだが、顔が分からない。
一度目の誰かと、二度目の誰か。同一人物か、それとも違うのか。
顔くらい見せても罰は当たらないと思うのだが。
「何調べてんの、ニュース?」
楓が画面を覗き込む。
健介は引き続き名古屋発のニュースを検索していた。
化け物や幽霊は取り上げられていないが、自動車の暴走や虐待、強盗に教員のわいせつなど暗いニュースが目立つ。
先月に遡ると、ショッピングモールで発見された生首など猟奇的事件が散見された。
「楓さぁ、何かこの辺であった事件とか知らない?」
「え、金山のやつでしょ」
楓の表情に怪しむような色が浮かぶが、これまで体験した事を喋るわけにはいかない。
どう言い訳したものか健介が思案していると、黙って弁当を突いていた省吾が話に入ってきた。
「なんだ、マツケンも気にしてるのか?」
「うん?あぁ、確か犯人まだ捕まってないだろ」
言われてみれば、あの爆破事件も異常といえば異常だ。
死傷者の数は分かっているだけで53人。生存者の誰も犯人らしき人物に心当たりは無く、爆発物も現場から見つかっていないらしい。
ニュースバリューの降下は緩やかだが進展が遅く、このまま事故として決着がつきそうな気配を健介は感じていた。
「行くんなら、ついて行ってあげてもいいけど」
「んー。じゃ、お願い」
健介の返事を聞いた楓はスマホを取りだそうとして、止めた。
盛り場じゃあるまいし、誘ったところで誰も応じないだろう。
母親の手弁当を味わいつつ、健介は合点する。
また当面、二人には事情を説明しない事に決めた。
怪物に変身した自分を見た二人に距離を置かれたら、流石に落ち込む。
受け入れる可能性は勿論あるが、その場合は危険に巻き込むかも知れない。
今すぐ全てを打ち明ける必要は無いように思われた。
日曜日の一件に関わった時も、近づいただけで異常を知ることが出来たのだ。
大体の事情は、探索せずとも把握できるだろう。
授業後、健介が二人と金山に向かっている時、二人の女子生徒と出くわした。
二人は楓の友人であったが、健介達とはクラスが違う。
あまり絡んだ事はなく、二人の遠野真由と相川千絵という名前くらいしか健介は知らない。
行き先を告げられた二人がついてきたのは、健介からすれば意外だった
現場となったビルは防護ネットで覆われており、内部では解体工事が始まっていた。
状態は窺い知れないが、おそらく業務を再開できる状態ではなかったのだろう。
通用口はぴったりと閉じられ、立ち入るどころか覗き見さえ許す気配はない。
「入れそうにないな」
「見りゃわかるよ」
省吾の口調は余命宣告を行う医師のように淡々としている。
健介もビルを覆うネットが視界に入った時には同様の事実を理解できていた。
「終わったなら、もう帰らない?」
「腹減ったし、何か食べてこうぜ」
健介の言を合図に、ゲートの前に立っていた四人は駅前に向かって歩き始めた。
健介はおおよその事情を把握した。
彼の背後には先刻と変わらず、灰色で隠されたビルが夕闇の中にぼんやりと立っている。
目の前に来るまでは気づかなかったが、やはり日曜日に出向いた廃屋―結局、あの家の住人はどこに行ったのだろう―と似た気配が漂っていた。
木曜の爆発火災もまた、人知を超えた異常事態の結果だったのだ。
しかし廃屋よりも気配がずっとか細い。ここに見るべきものはもうないのだろう。
(でも、それでどうすりゃいいんだ?)
止めなければならないとは思う。
しかし自分は高校生であり、不思議な力を身につけたとは言え、出来る事には限度がある。
殴れば倒せるようだし、警察とか自衛隊に任せればいいのではないか?
(また見かけたら、ぶっ飛ばせばいいか)
放っておけば、どこかで友人や家族が被害を被るかもしれない。
そうなる前に探知し、叩く。
それくらいなら、自分にも十分できる。
幸い、対処できる力はあるのだ。全く動かない、と言う選択肢を選ぶ気は健介にはなかった。
この年、街の至る所で変化は進行していた。
気付いた者は少なく、またその悉くが口を噤んでいた。
ありがとうございました。




