救援隊、出動ッ!
「見えた!11時の方向!」
双眼鏡を片手に米田が報告する。
「レンジャー1こちらタイガー1、合流する」
仁村がハンドサインで輸送車に合流を促した。
『助かる!戦闘準備をしてくれ。すぐに防衛線を立て直す!』
茂みの中に隠れた輸送車から人員が次々と飛び出し千田の指揮のもと散開していく。
仁村もレオパルト2を雑木林の中に突っ込ませ砲身だけを出して警戒する。
少ししてHQから指示が入った。
『レンジャー1、動かすのは1個分隊までだ。レンジャー2を回収して態勢を立て直せ。パトロールは入り込んだ敵先遣隊の駆逐をせよ』
『レンジャー1、了解』『パトロール、了解』
千田は素早く派遣隊を組み立てた。
『周藤隊はタイガー1と共に前進。レンジャー2と合流して態勢を立て直せ!』
命令に従ってレオパルト2の隣にいた分隊が動き出した。仁村は手を挙げて合図を送る周藤に合図を送り返した。
日に焼けた肌とセミロングの髪が特徴の周藤咲曹長は前線で部下をぐいぐい引っ張っていく姉御肌の生徒だ。
周藤隊は仁村達の前方に左右に分かれて広がった。
『仁村、ゲリラはあたしらに任せな。行くよ!』
周藤隊は身軽に林の中を駆けていく。
「これよりレンジャー2の救援に向かう。特にゲリラ注意。剛、銃はすぐに撃てるようにしとけよ」
そう言って仁村は拳銃のセーフティを外し、薬室に弾を送り込んだ。
「相変わらず頼もしいよ、まったく」
「2人とも」という言葉を呑み込んだ的場はふっと頬を緩めた。
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ざっ、がさっがさっ
ゴトゴトゴト…
周藤は先を急いでいた。レンジャー2の基幹は後退しAクラスと対峙している。そんな中、散り散りになったであろう味方が孤軍奮闘していると思うと自然と周藤の足も早くなった。
「待ってなよ…!今行くから…!」
無意識に口にしていた言葉に周藤隊の仲間が無言で頷いた。周藤隊は隊長の影響か仲間を特に大切にする為、特に結束の固いチームの1つだ。
パパパ…パン、パン
散発的な銃声が聴こえ、周藤は素早く周りを見渡した。
「あっちからだ」
隊員の1人が右前方を指差す。その先はちょっとした崖になっていた。
灌木が茂る崖の先は背の高いススキが生えており、彼我の位置が一目で見て取れた。
崖下手前の小さな盛り土の裏に味方のクラスメイトが3人肩を寄せて隠れ、奥から倍以上のAクラスがススキをかき分けて迫っていた。
先程の発砲音は3人が牽制の為に放ったものの様だが、下からは相手の位置が見えていない様だった。
「援護する!射撃用意!」
撃ち下ろす形となった周藤隊は絶対的に有利だった。
「撃て!」
周藤の号令で一斉に放たれた弾丸はススキなどものともせずにAクラスに降り注いだ。
逃げ場など無いと悟ったのか、隊長らしき人物が手を振り上げた。
オオオオー!
すると今まで獲物を追い詰める様ににじり寄っていたAクラスはススキから飛び出して突撃を敢行した。
「混乱してトチ狂ったか!?」
周藤は目を疑った。周藤にとっては思いつきもしない行動だったからだ。
とはいえ取り残された味方が隠れる場所までは距離がある。周藤らに至っては崖上だ。その突撃は壊滅をもって決着した。
「なんだったんだ、あいつら」
「Aクラスってあんなとこよ」
眉をひそめた周藤に隊員の1人が救助用のロープを降ろしながらクスリ笑って答えた。
「た、助かった…」
崖を登ってきた3人は一様に息を切らせて座り込んだ。
「早速で悪いんだが、知ってる限りの状況を教えてもらえないか?」
周藤の質問に1人が申し訳なさそうに答えた。
「僕もよく分からないんだ。塹壕を掘ってたところを襲われて…みんなパニックになっちゃって。逃げるのに必死だったんだ。気づいたらこの3人だけだった」
「そうか。やたらと接触が早かった様だが、車か?パラシュートか?」
この質問には3人とも首を横に振った。
「エンジン音はしてなかったと思う。HALO降下が出来るなんて思えないけど…」
「ふむ。エンジン音がしなかったというのは収穫だな」
そして周藤は無線機を取って報告を始めた。
「レンジャー1こちら周藤、取り残された味方3人を保護。早い接触について話を聞いたところエンジン音はしなかったそうだ」
『こちらレンジャー1、了解。よくやった、その調子で前進してくれ』
「了解」
周藤は落ち着いてきた3人を振り返って訊いた。
「立てるか?あたしらについて来てくれ」
その頼もしくも穏やかな笑みに3人は跳ね起きて応えた。
「「「は、はい!」」」




