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4/4

どれくらい食べる? どれくらいうんちする? そして、どんな匂いがする?

よし。

レックスは家にいる。

猫は食べていない。

掃除機にも宣戦布告していない。

ソファのそばで寝ている。

「ダメ」という言葉も知っている。

時々、

その言葉が自分にも関係あるような顔をする。

もう、

ほとんど家族だ。

そして、

ここからが面白い。

ペットを愛するのは簡単だ。

そのペットが、

目と尻尾と性格だけでできているように見えるうちは。

でもレックスには、

胃もある。

次の朝。

あなたがキッチンへ行くと、

レックスはもういる。

器の前に座っている。

見ている。

ただ見ているわけではない。

最後に食べたのは、

まだ大陸の境界線が今ほどはっきりしていなかったころです、

と言いたげな目で見ている。

キッチンには大きな袋。

Prehistoric Protein Junior

パッケージには、

幸せそうな小さな恐竜が描かれている。

笑っている。

清潔。

すっきりした体。

緑の芝生の上。

猫はいない。

袋もない。

結果もない。

どうやら、

このパッケージを作った人は、

恐竜と暮らしたことがない。

あなたは計量カップを取る。

一杯。

レックスが見る。

二杯。

まだ見る。

三杯。

首をかしげる。

その顔は言っている。

「食べさせてるの?

それとも商品を見せてるの?」

ここで初めて、

一つ分かる。

小さなレックスは、

小さなおもちゃではない。

小さな生物エンジンだ。

タンパク質。

脂肪。

ミネラル。

水。

そしてメーカーが、

なぜか詳しい説明を避けながら、

「天然ハンティング風味」

と呼んでいる何か。

自然の中では、

動物は食べ物を見つけなければならない。

追う。

捕まえる。

引き裂く。

食べる。

人間はその全部を見て、

こう言った。

「これ、

チャック付きの袋にできます?」

文明は答えた。

「もちろんです」

そして、

計量カップまで付けた。

ペットフードというのは、

考えてみるとすごい発明だ。

自然を、

棚に置ける形へ詰め込もうとしている。

売り場には、

こんな商品が並んでいてもおかしくない。

Rex Junior

成長期の小型獣脚類に。

Dino Sensitive

繊細なお腹と、家具には繊細ではない性格に。

Urban Rex

匂いは控えめ。

コントロールは多め。

No-Cat Formula

狩りの満足感。

法的トラブルは少なめ。

そしてもちろん、

Prehistoric Protein

肉82%。

結果18%。

最初は、

一袋買う。

次に、

もう一袋。

そのうちキッチンの棚が一段、

レックス専用になる。

次は冷蔵庫の棚も一段。

そして気づくと、

肉の値段に関しては、

売っている人より詳しくなっている。

ある日、

レシートを見る。

そして分かる。

動物の大きさは、

目で見える。

動物の食欲は、

銀行アプリで見える。

でも、

食べることは生物学の半分でしかない。

どんな仕組みにも、

入ってくるものがある。

そして、

出ていくものがある。

次の朝。

あなたは廊下を歩いている。

裸足で。

この時点で、

もう間違っている。

そして床に、

何かを見つける。

足跡ではない。

かわいい引っかき傷でもない。

羽でもない。

違う。

本物の痕跡だ。

しかも、

かなり本格的なやつ。

人間を一瞬で数歳老けさせるタイプの痕跡だ。

あなたは止まる。

見る。

それからレックスを見る。

レックスもあなたを見る。

バルシクは棚の上から見ている。

その顔には、

こう書いてある。

「で?

珍しいペットってどう?」

あなたは普通の犬用の袋を取り出す。

広げる。

袋を見る。

それからもう一度、

白亜紀の消化管が残した成果を見る。

そして分かる。

この袋を設計した人は、

期待値がかなり控えめだった。

うんちは、

下品な話ではない。

正直な話だ。

生きた体は、

食べるだけではない。

処理する。

そして最後に、

あなたが払ったお金を、

加工済みの形で世界へ返す。

食べ物が変われば、

結果も変わることがある。

レックスがテーブルから何か食べれば、

結果も変わることがある。

おばあちゃんが言う。

「ほんの一口だけよ」

すると家族全員が、

いつの間にか実験参加者になる。

同意書はない。

そんな朝を一度経験すると、

質問は静かに変わる。

「かわいいね?」

から、

「この色、

大丈夫?」

へ。

それから、

「袋どこ?」

「これ何で洗うの?」

「なんでこんな匂いするの?」

「獣医に電話したほうがいい?」

「昨日チーズあげたの誰?」

おばあちゃんが言う。

「だって欲しそうにしてたから」

あなたは答える。

「その結果を、

みんなで確認したよ」

そして次は、

匂いだ。

ここで、

広告の中にいたレックスが、

かなり遠ざかる。

レックスから匂うのは、

レックスから出てきたものだけではない。

レックス自身が、

レックスの匂いをする。

もし羽毛があるなら、

羽毛。

皮膚。

ほこり。

寝床。

湿気。

羽毛ではなく、

鱗や別の皮膚なら、

匂い方も変わる。

肉中心の食事なら、

それも関係する。

口の中。

食べ残し。

寝床。

どこで転がったか。

濡れたか。

全部関係する。

そしてソファで寝たなら、

ソファも研究に参加する。

あなたが玄関を開ける。

レックスが走ってくる。

うれしい。

尻尾が動く。

爪がカチカチ鳴る。

頭をあなたのお腹に押しつける。

そして、

来る。

ひどくはない。

死ぬほどでもない。

ただ、

ものすごく説得力がある。

濡れた鶏肉。

暖かいテラリウム。

肉の入った冷蔵庫。

雨上がりの動物園。

そのあいだのどこか。

レックスは幸せだ。

自分が匂っていることなど知らない。

そもそも、

何を問題にされているのか分かっていない。

ただ存在している。

バルシクは上から見ている。

もう何週間も、

ずっと記録を取り続けている担当者みたいな顔だ。

あなたは消臭スプレーを買う。

「マウンテン・ブリーズ」。

シュッ。

これで部屋は、

山にいる濡れた恐竜の匂いになった。

次はラベンダー。

今度は、

白亜紀に負けたラベンダーの匂いになった。

そして、

少しずつ考え方が変わる。

「どうすれば、

この動物を完全な無臭にできる?」

とは聞かなくなる。

代わりに聞く。

「この匂いは、

何を教えている?」

何を食べた?

どこで寝ていた?

濡れている?

寝床は清潔?

フードを変えた?

何か洗う必要がある?

匂いは、

体の情報だ。

そして体は、

毎日それを書き足していく。

編集者なしで。

その夜。

家族で映画を見ている。

レックスはカーペットの上。

子どもはその隣。

父親はようやくくつろいでいる。

母親も、

今日は恐竜の記事を読んでいない。

バルシクが、

久しぶりに棚から降りてきた。

これはもう、

外交上の大事件だ。

椅子に座る。

慎重に。

威厳を保って。

政変のあと、

ようやく国へ戻ってきた外交官みたいに。

画面では音楽が盛り上がっている。

主人公が、

何か重要なことを言おうとしている。

そのとき。

音。

小さい。

でも、

とても古い。

全員が止まる。

父親が母親を見る。

母親がレックスを見る。

レックスは前を見ている。

落ち着いて。

哲学的に。

自分の体内で今起きたことが、

世論とは一切関係ない、

という顔で。

バルシクが立つ。

ゆっくり。

騒がず。

何も言わず。

そして棚へ戻る。

避難した外交官。

そう。

消化は、

ときどきガスをつくる。

食べ物も関係する。

特に、

おばあちゃんがいる場合は。

「豆、

ほんの少しだけあげたの」

「なんで?」

「欲しそうにしてたから」

「うん。

みんな聞いた」

その日から、

あなたはフードの表示を前より真剣に読む。

消化しやすいタンパク質。

繊細なお腹。

新しいフードへの切り替えは、

少しずつ。

消化というものは、

静かなうちは個人的な問題に見える。

かわいいペットの中には、

化学工場が動いている。

ときどき、

広報発表もする。

でも、

愛の本当の試験は、

玄関で起きる。

あなたが帰る。

レックスが鍵の音を聞く。

走ってくる。

二十年ぶりに再会したような喜び方だ。

あなたが出ていたのは、

四十分。

飛びつく。

前足をあなたにかける。

あなたは言う。

「ただいま。

いい子にしてた?」

そしてレックスが、

あなたの顔をなめる。

本来なら、

美しい場面のはずだ。

温かい。

信頼。

つながり。

恐竜があなたを愛している。

ただし、

愛がちょっと怪しい匂いをする。

あなたは少し顔を引く。

レックスは傷ついた顔をする。

ちゃんと気持ちを伝えたのに。

あなたは顔を洗いに行く。

一回。

二回。

三回目は、

もう精神的に。

家庭で暮らす捕食者の口は、

すぐに「噛むかどうか」だけの問題ではなくなる。

肉。

食べ残し。

細菌。

歯。

歯ぐき。

昨日、

茂みの中で見つけて、

あなたが、

「何くわえてるの?」

と言い終わる前に飲み込んだ何か。

しかもその口で、

あなたを愛してくる。

愛は盲目かもしれない。

でも、

鼻はちゃんと働く。

そして春が来る。

朝、

目を覚ます。

床に羽。

ソファに羽。

カーペットに羽。

スマホの充電器に羽。

カップの中にも羽。

黒いTシャツを持ち上げる。

もう全部ついている。

バルシクが横を通る。

バルシクにも羽。

立ち止まる。

あなたを見る。

久しぶりに、

被害者の顔をしていない。

証拠品の顔だ。

もし私たちの小さな獣脚類に羽毛があるなら、

その羽毛が生え替わることも、

一緒に暮らす生活の一部になる。

自然なら、

草や土や風の中へ消えていくものが、

家の中では残る。

ソファに。

靴下に。

コーヒーに。

あなたは昔、

こう思っていた。

「まあ恐竜だし。

犬の毛はない」

進化が聞いた。

「分かった」

「じゃあ羽で」

あなたはブラシを買う。

次に粘着ローラー。

もう一本。

そして家には、

新しい季節が来る。

白亜紀の雪。

ある日。

レックスの首の後ろをかいている。

レックスは目を閉じる。

ご機嫌だ。

あなたは羽毛を分ける。

小さな点が見える。

動く。

そして消える。

あなたは止まる。

レックスは、

まだ気持ちよさそうにしている。

バルシクが遠くから見ている。

その顔は言っている。

「どう?

自然と知り合えた?」

あなたは、

一匹の動物を飼ったつもりだった。

でも、

生きた体というのは、

完全に一人ではやってこない。

体の上にも、

中にも、

小さな世界がある。

細菌をはじめとする微生物。

それらがつくるマイクロバイオーム。

そして時々、

そこに勝手に住みつく別の誰か。

レックスを見て、

こう判断する。

暖かい物件。

食事つき。

入居します。

寄生する側にとっては、

あなたが恐竜にいくら払ったかなど関係ない。

暖かい体がある?

ありがとう。

入ります。

あなたが迎えたのは、

レックスだった。

でも自然も、

セットでついてきた。

レックスは、

きれいな首輪をつけた一匹の動物ではない。

二本足で家の中を歩き回る、

小さな世界そのものだ。

そしてその世界は、

痕跡を残す。

床に。

ソファに。

服に。

予算に。

空気に。

そしてまた、

夜になる。

レックスがソファのそばへ来る。

くるくる回る。

横になる。

あなたのスリッパに、

頭を乗せる。

少し匂う。

セーターには羽が一本ついている。

キッチンにはフードの袋。

ベランダには、

レックスのタオルが干してある。

ゴミ箱には、

少し楽観的すぎた袋。

バルシクは椅子に座っている。

もう棚の上ではない。

ただ、

距離は取っている。

レックスが片目を開ける。

猫を見る。

あなたは言う。

「始めるなよ」

レックスがため息をつく。

目を閉じる。

あなたは無意識に、

顎の下をかく。

生き物と暮らしていると、

少し不思議なことが起きる。

最初は、

イメージを好きになる。

きれいな目。

尻尾。

玄関まで迎えに来るところ。

そしてそのあと、

全部を知る。

匂い。

消化。

羽。

汚れ。

袋。

夜の妙な音。

それでも、

うまくいっているなら、

愛情は消えない。

ただ、

広告っぽさが減る。

そして、

家っぽくなる。

よし。

レックスを、

全部まとめて受け入れた。

では、

あと一つだけ、

小さな問題がある。

フードがいる。

袋がいる。

どうやらブラシもいる。

歯も何とかしなければならない。

爪も。

匂いも。

リードは、

自分では買いに行かない。

マズルガードも。

そこで出てくるのが、

次のごく普通の人間の質問だ。

文明より古い歯を持つ生き物に、

いったい何を買えばいい?

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