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【かの箱別ライン】狂人同盟  作者: Psycho Punisher Mk.7


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《たそちゃんの一日》1/ 愛する人の自室にて、あの夜を想う…………



個人で運営していたブログに以前投稿した小説(https://psypuni7.com/37245-2/)の続きです。



挿絵(By みてみん)



「しっかしこれ、まっこと不思議な色でごじゃるな………」


ブローを終えたごじゃるが僕の後頭部の髪が一番多い部分をかき分けつつ言う。


「………そう?」


「うん…………全体は真っ白なのに中だけ青、それも軽く光ってるように見えるでごじゃる…………」


ごじゃるに言わせると〝生えてきた段階では青なのに途中で白に変色するのは極めて奇異〟なことらしくて、あの夜以来ことあるごとに僕の髪を触りながらそう言った。それの何が〝極めて奇異〟なのか僕には分からなかったけど、ごじゃるに触れられるのが嬉しかった僕はその度その話題にゆっくりと付き合った。


「でもなんか、あれじゃない?」


「?うん、」


「ゲーミングPCみたいじゃない?その青いとこの色味」


「あー……………笑」


人差し指だか親指だかを後頭部やサイドの髪にさくさくと差し込んで持ち上げる、ごじゃるの指の感触が気持ち良かった。


「確かに、ちょっと笑」


「ね?笑」


「でも、めっちゃ綺麗でごじゃるよ。」


「………そう?」


「うん。これは、あれでごじゃるな」


「………………?」「うん。」


「よぴの心が綺麗だからでごじゃる」


「え?笑」


「よぴの心が綺麗だから、こんな綺麗な髪が生えてくるんでごじゃる笑」


あの夜以来、ごじゃるは人が変わったように僕に優しくなった。体の関係もずっと続いていたけど、恋人と言うより子供か妹でも世話するかのように目を配り、付いて回ってはあれこれと世話を焼いてくれた。今日は僕がお出かけする日だけど、そういう日の()()()こうして髪をとかして化粧もして、服まで着せて送り出してくれる。


「えー笑」


「絶対そう。」


横に流して耳にかけた前髪をぱちん、とピンで留める。


「これは(しん)の奥の奥、(こころ)の底の方からくる色でごじゃる」


「なんだよそれ笑」


「んー。」「よぴ好き、」「好き好き」「よぴ好き、」「んー。」


椅子に座った僕の肩越しに両手を回し、どさり、と負ぶさるようにのしかかって右のこめかみのあたりにちゅっちゅ、と唇を押し付けてくる。


「ちょっと!笑」


「んー。」「好きなの」「ほんと好き、よぴ」


「化粧が崩れるって!笑」「せっかくしてくれたのに」


「好きっ、」「好きっ好きっ」「ほんと来てくれてよかった、よぴが…………」


至近距離で見るごじゃるは、やっぱり顔色があまり良くなかった。真っ白な肌の奥が薄っすらと青みがかっていて、目の下は黒く窪んでいた。


あの夜から少し経った頃からごじゃるはずっと調子が良くないみたいで、ここしばらくはずっとそんな様子だった。僕の前では変わらずいつも気丈に振る舞ってくれていたけど、視線を外した瞬間の横顔やふとした時に見せる後ろ姿が疲弊の色をたたえていた。


「よぴ…………」


「どうしたの」


「…………ぐす、」


「……………………」「……………………」


「…………ぐす、」「………………う、」


「……………………」「……………うん。」


「うっ……………うっ、」「ぐす、」「うぅ…………」


「……………………」「……………………」「どうしたの?ごじゃる」


心の綺麗さが地毛の色に表れるなら、ごじゃる程綺麗な心の持ち主はいない。


こんな優しくて柔らかな色味をした綺麗な金髪、他で見たことないもの。


言えないけど。


言ったことないけど。


内も外もこんなに綺麗な人他にいないよって、いつも思ってる。


「うっ、…………」「うっ、…………」


「ごじゃる、何でも言ってよ。」


「……………………」「……………今日。」


「うん……………」


「体、空いてる?」


「……………………」「………………ん?」


「夜、体空いてる?」


「……………………」「……………………」


〝夜体空いてる?〟はうちの家での、


有体に言ってしまえば


セッ〇スの誘いだ。


「え……………」「う、うん。空いてる、と」「思う……………」


「ほんと?」


「うん」「まじちゃんから、呼び出しとかが、」「なければ……………」


「ほんと?」


「う、うん……………」


「じゃー、待ってるでごじゃる、夜」


「え、」「うん……………?」


「じゃー、」


気を付けて行ってくるでごじゃるよ、と言って


今度は座ったままの僕の頭頂部に一度だけキスをして、


ごじゃるは足早に(自分の)部屋から出て行った。



──────────────────────────────



「……………………」「……………………」「まじちゃーん……………?」


こんこん、とノックしたまじちゃんの部屋からはしばらく待っても何の反応も無くて、恐れながら扉を開けて中に入らせてもらった。


「……………………」「………………あれぇー………?」


昨日の夜、〝明日の朝11時に部屋に来るように〟とまじちゃんは確かに言っていた。お使いを申し付けたいような話だったから多分仕事に関わるようなそれなりに大事な用件だった筈────壁にかかった時計は今正に11時を指そうとしていた。


「……………………」「…………………えぇ?」


まじちゃんは時間を違えることを絶対にしない人だった。


〝そんな人をバカにしたこと、出来ない………〟〝到底。〟〝ね?たな、〟〝かん…………?〟


と言って、この何年かで10分以内程度の遅刻を数回かましたことのある僕の肩に手を置いてぎゅ、と握りしめ、時間を守ることの大切さをこの前説いたばかりだった。


ここに来る途中で側を通った風呂場や洗面所にはいなかったし、多分トイレにも行っていない筈…………


ちなみにこの家に拉致されて来てから約五ヵ月が経ったけど、まじちゃんがトイレに行くところは見たことがない。他人にそういう姿を見せたくなくて誰もいない瞬間を狙ったり夜皆が寝静まった後にこっそり行くような人もいるけど、そういうタイミングでふと注意を向けてみてもやっぱりまじちゃんがトイレに向かう姿は見られなかった。


多分まじちゃんは、トイレに行っていない。


〝うちでは〟とか〝僕やごじゃるがいる時は〟とかいう話ではなく、まじちゃんは多分〝トイレに行く習慣自体がない〟。


〝部屋でしてる〟とか〝外でしてる〟とかそういう意味でもない。


まじちゃんには多分〝排泄〟という機能自体がない。


僕はバカだし教養がないけど、それがおかしいことなのはさすがに分かっていた。


分かっていたけど、〝まあまじちゃんなら、〟〝まああるか、〟でギリギリ自分を納得させていた。


その程度にはバカで、教養がなかった。


「スゥー…………」「……………………」「……………えぇー?」


時計は11時を少しだけ過ぎていた。


キィ、とさっき入って来て開けたままにしていた扉が背後で軋んだ。


「(……………………)」「(どーしようかな…………)」


と一旦部屋の外で待つことも考えた上で扉をぱたり、と閉めて室内で待たせてもらうことにした。


「(……………………)」「(忘れて出かけたわけでもあるまいに……………)」


まじちゃんに限って絶対にありえない可能性について一回考えた上で、そう言えば昼間の日の高い時間帯にはあまり入ったことのないまじちゃんの自室にぐるりと視線を一巡させた。


「(……………………)」「(……………………)」「(……………………)」


まじちゃんの部屋はカフェか雑貨店のように白やベージュ、木目調のインテリアで統一されていて、塵一つ見当たらない掃除の行き届き具合だった────壁にはドライフラワーなんかがかけられていて、床に直置きされたテーブルの傍には僕が来た時のために、と言って買ってくれた特大のビーズソファが置いてあった。


「(……………………)」「(……………………)」「(………座って待たせてもらうか)」


この部屋の中で唯一自分の好きにしていいビーズソファ(テリトリー)にのしり、と腰を掛けてもう一度室内を見回すと、さっきまでいたごじゃるの部屋との対比が面白く思えた。


「(女の子なんだよなぁ、ごじゃるは)」「(それに比べると、まじちゃんはやっぱり大人だ…………)」


洗練された大人の女性の部屋、といったこのまじちゃんの部屋に対して、ごじゃるの部屋には白のつるつるとしたものやピンクのフワフワとしたものが多く見受けられた。所々には何かしらのキャラものも配置してあったり……………何のキャラなのかは知らないけど、さっき座らせてもらっていた椅子の目線の先にあった、白の棚の一角には同じたぬきのぬいぐるみの大・中・小がスマホの電波の表示のように横並びに並べて座らされていた。


「(そう言えば、)」「(セッ〇スも…………)」


あの夜以来僕はどちら共と週三ペースで逢瀬を重ねていて、自室で寝るのはせいぜい週に一回だった。


ごじゃるとする時はごじゃるの部屋で、まじちゃんとの時は今目の前にあるこのベッドの上で……………


ごじゃるはやっぱり若さのせいかスポーティーで、あの技この技を僕の体を使って試しつつ、上目遣いでずっと反応を確かめているような感じ………………まじちゃんは何をすれば僕がどう感じるかをあらかじめ知っているような感じで、何をされてどう反応しても〝うん、そうだね〟〝そう。〟〝偉いよ、たなかん〟となだめるように耳元で囁いてくれる。


二人のことが大好きだし、どっちとの行為も同じぐらい好きだけど……………


「(今日はどっちかと言うと)」「(まじちゃんの気分だな……………)」


二ヵ月ぐらい前に、まじちゃんによって僕は女にされていた。あの夜の後、そのほんの数週間後にこのベッドの上で……………


そのことや、それ以上のあれやこれやの行為をここでしたことを、まじちゃんはごじゃるにだけは絶対に黙っているように、と強く言い含めていた。


自分もまだだから、という理由でごじゃるにあれやこれやをさせないためのまじちゃんなりの策だったけど、ごじゃるは〝まじきちには絶対に内緒でごじゃる〟と言ってかなり色んなあれやこれやを僕に対して既にやっていた。


二人共が僕に対して〝相手はまだB程度しかやっていない〟と思い込んでいることと、互いが互いに嘘を吐き合っていることは僕しか知らない。


「(いい部屋だなぁ、ここ)」「(ほんと……………)」


まじちゃんの部屋は都内でも有数の一等地に建てられたこの家の二階部分、一番日当たりが良くて見晴らしのいい位置にあった。直射日光は入って来ないけど日中はずっと心地の良い明るさに満たされていて、カーテンを開ければ(軽く坂道になっている)家の前の道を行き来する人を上から眺めることが出来た。


「(多分こっち、)」「(こっちの位置、の筈……………)」


テーブルの奥側にこちらに向けて置いてあるテレビ兼PCモニターの後ろにある壁のその裏が、あの夜僕達が過ごした〝とてつもなく天井の高い部屋〟がある筈の位置だった。外から見るとこの部屋の窓に並列する形でもう一つ窓がついていて、そこがごじゃるがあの日の逢瀬に途中参加するのに覗き込んでいた窓だった。


「(じゃあここなんだ、)」「(ここの筈、なんだ)」「(多分……………)」


今自分がいる部屋と一続きになっている筈のその部屋の天井に、壁を貫通するような意識で目線をやった。


そこにきっと、あの日僕を吊るしていた鎖を繋いでいた金具か何かがある筈だった。


この家は二階建てだけど、地下室があって合わせると実質三階建てになる。あの夜僕とまじちゃんが一緒に過ごしたのはその部屋の地下部分で、僕が自室として今使わせてもらっている部屋もその地下階にあった。


「(……………………)」「(……………………)」「(……………………)」


まじちゃんとこの部屋で重ねている行為はいつも本当に素敵だけど、


あの日のあの夜の()()を超えるものはない。


本当の変質者だと思わせて失望されてしまうのが嫌だからまじちゃんにも言えていないけどあの夜の()()だけは本当に特別で、


日を追うごとにむしろ鮮明で特別な一夜として僕の中で格上げされていっていた。


「(はあ……………)」「(好きだ、まじちゃん………………)」


まじちゃんは折に触れて〝私の彼女なんだから〟という表現を僕に対してよく使った。


初めてその表現を聞いた時に彼女にしてもらえていたことに気が付いて本当に嬉しかったものだけど、


そういう付き合い始めの頃の色々を思い出すと今でも胸が苦しい程に、まじちゃんを好きな気持ちが溢れてくる。


全部夢だったらどうしようと思うし、たまにそういう夢も見るけど、


夢見心地で過ごしているあの夜からの数ヵ月が、どうやら嘘偽りのない僕の現実のようだった。


「(……………………)」「(……………………)」「(……………………)」


時計を見るともう11時を15分以上も過ぎていた。


それにしてもお出かけ日和だな、と思いながら窓の外の雲一つない空に目をやってあ、と気が付いた。


「そーだ……………!」


玄関まで行ってまじちゃんの靴を確かめればいいんだ、ということに気が付いた。


トイレには行かないまじちゃんでも出かける時に靴は履く。


外から帰って来て家に上がる時にそこで靴を脱いでお行儀よくちょんちょん、と揃えてから上がっていく姿は何度となく確認していた。


どこに行ったかまでは分からなくても今家の中にいるかどうかぐらいはその方法で確かめられる筈。


「よいっ、」「しょっと」


と立ち上がることを躊躇させる程に座り心地の良いビーズクッションから腰を上げてさっき閉めた扉の方に向き直ると、そこにまじちゃんが立っていた。


「……………………」「あ゛っ!!!!!!!!?」


「……………………」「……………………」


扉の横の壁に背をもたれさせ腕を組んだまじちゃんは、極めて無表情のまま僕の顔を正視していた。


「えっ、」「………………えっ、」「まじ、ちゃん…………?」


「……………………」「………………たなかん。」


「あ゛っ!!!!!!!!?」「びゃっ!!!!!!!!?」


等身大パネルの可能性を第一に考えていた僕は、手と、あともしかしたら足もバタバタとバタつかせて宙に跳ねた。


「……………………」「………………たなかん。」


「ま、まじ、ちゃん…………?」


「たなかん。」


「嘘…………」「………………えぇ?」


「……………………」「……………………」


「えっ、え、」「………………いつ?」「いつから、そこに……………」


「たなかん。」


心臓がどっきんこどっきんこ、と脈打っていて、


耳の奥でぼん、ぼん、と何かを弾くような音が聞こえていた。


「え、嘘嘘嘘嘘……………」「だっていなかったよ、絶対」「物音一つ、しなかったし」


「……………………」「……………………」


「えっ、え、」「…………………え、何」「どういう、こと…………?」


「……………………」「………………たなかん。」


「え、」「………………は、はい、」


「お座りなさい……………」「今尻を上げた、その場所に」


「……………………」「…………………へ?」


「座りなさい。」「そしたら、」


無表情に見えたまじちゃんは、よく見ると左の口角をぴくぴくと引きつらせていた。


「…………………はい、」


「ブチ殺してあげるから、その」「Yogibo(ヨギボー)の膨らみの」「その上で……………!!!!!!!!」


付き合い始めて数ヵ月、


今が一番楽しい時期のマイ・ハニーは


どうやら出会ってから初めてのレベルで激高しているようだった。



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