第14話 盗賊と魔王
「この嬢さんになにか知ってそうっすね」
「ああ。でもなにも喋らなそうだ」
「っすね」
「もういい、行くぞ。魔王にかまっている暇はない」
「う~す」
ルックは気怠げにそういう。
だが……。
「行かせない!『黒炎』―――――!」
「ちょ、嬢さん?別に俺らあんたと闘おうなんて気、微塵もないんだけど」
ストロンはめんどくさげに私を見る。
私はストロンを強く睨む。
「えぇ……戦わないといけない?」
「っすね。戦わなきゃいけないっぽいっす」
「めんどくせぇ……」
「やりますよ」
「わーったよ……。『毒球』―――――」
また毒の球が出現する、が。
「『解除』――――」
私がそう唱えると毒の球は消える。
「あーっ!めんどくせぇ!こいつ解除魔法まで使えるのかよ!戦った時間ロスなんて騒ぎじゃ済まねえ、日が暮れちまう!この依頼に失敗すると、俺がお偉いさんから大目玉を食らう!ルック!逃げるぞ!」
「っすね!逃げた方が得策っす」
二人はそう言い残すと走り出す。
「クソ!つーか魔王がいるなんて聞いてねえよ!話と違うじゃねえか!」
ストロンの怒声が聞こえる。
かなりご乱心のようだ。
「ルックお前にも掛けるぞ!『速度上昇』―――――!」
その程度だったら余裕で追いつける。
「いやマジ、偉いさん何してるんすか。魔王と敵対することになるんなら俺らこんな依頼受けてないっすよ」
「ほんとにそうだよな……ってもう魔王追いついてきてるじゃねえか!クソが!」
「無数の炎」
私がそう唱えると、無数の炎が彼らを襲う。
「クソったれ!こんな量俺の魔法じゃ消化しきれないぞ……」
「っぽいっすね。俺が消化します。といってもこんな量連発されたら無理っすけどね」
「気休めでもいい、頼む」
「了っす」
なにか魔法を使うつもりらしい。
「『消化吸収』―――――」
ルックがそう唱えると、私が出した無数の炎を手に吸い込んだ。
「っぷ。キツイっす」
なるほど。私の魔法を喰ったのか。
そう言う魔法もあるんだな。
だが相手の魔力は恐らく白魔力。
魔力の覇気からして間違いない、
私の黒魔力とは相性が悪い。
喰ったところで、栄養になるどころか、むしろ胃もたれするだけで、邪魔になるだろう。
「うへぇ。なんかこれ不味いっす。しかもなんか気持ち悪いっす」
「なんだ?魔力相性が悪いのか?」
「っぽいっす。となると相手の魔力は黒魔力っすかね?」
「そうだろうな」
「胃もたれしているところ悪いけどもいうっぱつ行くよ『血喰イノ烏』――――」
そう言うと無数の烏がストロン目がけて飛び立つ。
「あ、こいつはいける『リヴィングジングス キル』―――――弾けなカラス」
「ブチッ――」「ブッシャァァァ―――――」と血飛沫の音がする。
ストロンに召喚魔法は効かないのか?
「『無量ノ蟻』―――――」
無数の蟻がストロンの体を這う。
「『リヴィングジンクス キル』―――――だから、効かないって」
蟻はまるで砂に変化したかのように崩れ落ちる。
「てかさ。こいつどんだけ魔力あんの?こんだけ使ったら普通は魔力切れで倒れるだろ……」
「こういう系統の魔法だったら別に痛くも痒くもないけどさぁ……」
今気付いたことがある。
私はこいつと相性が悪いのかもしれない。
✕ ✕ ✕ ✕
私たち「魔王」の家系が得意とする魔法の一つが召喚魔法だ。
召喚魔法は、私の想像を、記憶を魔力で形を作り、念を入れたものだ。
念によって、召喚獣は自我を持ち、召喚主に逆らわないようプログラムするのだ。
そうすることによって、召喚獣は自我を持ち、本物の動物さながら、考えたり、走ったりできるのだ。
また召喚獣のプログラムにはいくつか種類があり、私のはいわゆる「放任型」だ。
放任型とは、召喚獣召喚時に行うプログラムを召喚主に逆らわない程度のプログラムで召喚された召喚獣が放任型だ。
ほかにも「束縛型」「命令型」「一事項優先型」などが主に挙げられる。
「束縛型」は放任型とは間反対の型だ。
召喚時のプログラムを召喚主に攻撃しないというプログラム含め、多量に書き込み、そのプログラム以外の行動をとれなくするのが「束縛型」のプログラムの特徴だ。
ちなみに最近では放任型が主流だ。
次に「命令型」だが、これはプログラム時に召喚主の命令のみで行動する。と書き込むのが命令型だ。
但し、命令型は召喚主がなにもいわないと何もしないので、召喚獣に付きっきりじゃないといけないのがデメリットだ。
クロスが言っていた、「げーむ」の中で一番近いものを挙げるとすれば「ぽけーっともんすたー」縮めて「ぽけもん」がいちばん近い。
最後に「一事項優先型」だが、これはその名の通り、召喚時に一つの事項のみを優先し、行動する。とプログラムに書き込むのが、一事項優先型だ。
だいたい、任務などで使われる。場合が多い。
と、長々と説明したが、この召喚魔法で召喚した召喚獣が、相手の技で一瞬にして消し飛んでしまうのは少々いただけない。といったところか。
「ストロンさん。もうめんどくさいんで、使って下さい。二つあるんでしょ?」
「しゃーねぇ。めんどくせぇしな。でも、高いんだよなぁこれ」
「っすよ。使って下さい」
「わーったよ」
ストロンがそういうと、丸型の魔力道具を地面に向かって投げつけた。
「おらぁぁ!!!!『転移』――――!あばよ!魔王の嬢さん!今回は逃げさせてもらうぜ!」
「あっ!」
この魔力道具は転移系統―――。
逃げられた!
私がそう思った瞬間には、ストロンの姿は見えなくなっていった。




