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【完】神様は嘘つき  作者: バひ゛ろン
15/19

15.材料と担い手と実行犯

 真っ直ぐに部屋へと帰った私は、玄関通路を進み、その真ん中辺りで足を止めた。

振り返って、扉をすり抜けてくる2人の神に相対する為だ。


「おかえり」

そう発すると同時、自分の命の無事を確認して一度ホッと胸を撫で下ろす。


「…ただいま」

そう俯き答える彼女を見かねて私は


「ありがとう、島さんのこと」

と伝えた。


すると彼女は少し驚いた様な素振りを見せ、

「…気付いちゃったんですね」

と照れ笑いを浮かべる。


「本人が会ったと言ってたし、その母親が赤飯と油揚げの話もしてたしな」


そんな私達の会話を尻目に弁天は

「はぁ…」

と大きくため息をこぼす。

そうして続け様に

「つまらん話は後にしろ…。材料は揃ったんだ、今はとっとと疫病神を払うぞ…」

と半ば悪態をつく。


「!?材料って…弁ちゃん酷ぃ…」

肩を落とすようにヒトミが表情を曇らせ言うと


「何を言うか。今回は全て姉上が過失…。去るならば社の処理を済ませるのが常道であろう?それを事後処理と皮肉で許されるとあらばこれほど安きことはない」

と彼女は少し語気を強めた。


「でも、あの状況で他の神を呼ぶなんて出来ないし…。麻衣に頼むなんてなおさら…」


しかし聞く耳持たず彼女は

「知ったことではない」

と一蹴。

「とかくアレを払う。ソナタも協力せいよ?」

と私を指差した。


「え」

そんな力ありませんけど?と内心。

私は不意打ちに固まる。


そして次の瞬間、

「それは駄目!」

と突如ヒトミが声を荒げる。


「ならばどうする?自らの手で破るか?」


「それは…弁ちゃんが…」


「我はアレを縛るので精一杯だ。かといって、姉上の力ではそれも出来ぬであろう?」


そうして沈黙が場を制す中、

「…私がやる」

と一言。

なおも危険だから駄目と主張を変えないヒトミに私は

「神は他にも沢山居る。だが、ヒトミは1人しか居ないだろ?」

と伝えた。

その言葉に驚きを見せたのはきっと、叶えた願いを自ら破ることの末路を私が知っている様子だったからだろう。


恐らくその訳を問うように

「なん、で…?」

と放つヒトミに


私は

「見てれば分かる」

と嘘を語った。

更には拝借した想いをさも自分の言葉のように

「島さんの事もそう…。1人で全部抱えて、私に心配させまいと笑って…」

と。

「私はもう、ヒトミだけに全てを背負わせるつもりない」

途端、私の名前を呟き、また俯き顔を隠す彼女をそのままに

「弁財天、作戦はあるんだろ?だったら私のやるべきことを聞かせろ」

と次いで吐く。


「…一回しか説明せんぞ?」


「あぁ」

私はスッと一度だけ首を縦に振った。


 作戦の内容自体はいたって簡単なものだった。

弁天が疫病神を術で縛り、放たれるであろう障気を同じ禍つ神であるヒトミが抑え、その隙に私が社を形成している願いを砕くというもの。


「壁に同化している札を剥がせば社は消える。…けど、容易には見付けられないと思う」

それは強い霊感を持つ者であれば感覚的に捉えられるという。

だが生憎私にはそんな力はない。

「全く視認出来ないということは無いと思うけど、麻衣の力はあくまで社に居続けたことによる匂い移り程度の、些細な力だから…」


「分かりやすいが…何か嫌な例えだな…」

思わず苦笑。


「伝われば良いのー!」

そう言ってムスッとした顔を見せたのち、一転して彼女は微笑んだ。

「麻衣の背中は私が守るから」

(絶対守るから!)

声と思いとに決意のほどを窺い知りつつ、


私は

「任せた」

と拳を突き出し、


彼女も

「うん」

と一言、同じく拳を出して互いに互いのそれを軽く打ちつけ合う。


「…もうよいか?」


『うん』


「…オンソラソバテイエイソワカ。主が命を持って、空間隔てし戒めが呪を解かん…」

弁天のその文言を合図とするように、ヒトミの手によって居間へと続く扉が開け放たれた。

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