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悪役王女の矜持  作者: ふう


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5/12

5 悪役王女は奮闘する

現世編

十七歳になったマルグレーテはいろいろ忙しい。



 あの建国祭の夜会から三ヶ月が経ち、(わたくし)はエコールサンク学園を卒業した。

 あれからエリオットの行方は分からず、本人不在のまま単位は取れていたので卒業となった。

 私がエリオットの秘密の恋人だと思っているリリーナ嬢に聞いてみてもなんの連絡もなく心当たりもないと言う。

 屋敷の自室からは身の回りの物と少しのお金が無くなっていて、机の引き出しにはこれまでの事を感謝する宛名のない短い手紙が残されていたので犯罪の可能性はなさそうだ。

 もしかしてエリオットは自分を冷遇し、私の婚約者になることを強要した祖国を見限り、私という呪縛から逃れて今、どこかで本当の自由を謳歌しているのかもと、気楽に考える事にした。

 そう思うことで私はエリオットへの罪の意識を軽くしたかったのかもしれない。


 そうして私は卒業後、一年後の王太女への即位に向けて後継者教育を始めた。

と、言ってももう十分政務も行なっているのだが。

 そして本来ならこの時点で婚約者を選ぶはずだったが今回私は誰も婚約者に選ばなかった。

 もちろん心配した両親や大臣達にも口煩く説得されたけどこれだけは譲れないのだ。

結局私は悪役王女の最強技「我儘+高飛車+傲慢」のコンボで押し切った。

エリオット以外は嫌だったのは本当だし、私は()()()()()で他の三人を選べない理由があった。

 まず、アンフォール公爵家の次男、リュシアンは見目の良さのため女たらしだった。

前世は私の婚約者に選ばれなかった後、隠す必要がなくなったためか派手に遊んで隠し子やら何人も恋人が現れて女関係で揉めて身を滅ぼした。

もし王配なんかにしたら愛妾を囲う事ミエミエだ。

 次にヴァンディール辺境伯家の三男のジョルジュは、いわゆる「脳筋」だった。

騎士道精神を重んじるのはよいが、「強さは正義」と思っている節があり、私が婚約者を選ぶまでは自重するように実家からきつく止められていたようだが、

前世ではその後やり過ぎて、騎士団からは反感を買い、結局辺境の領地へ戻された。

もし王配となっていたら、国際問題を武力で解決するとか戦争を起こしかねない。

 最後に、友好国のレントル王国のハインリヒ第二王子だが、本人は隠しているが、実は同性愛者(BL)である。

学園でも騎士課のガチムチや私の護衛騎士達を熱い眼差しで見つめているのを知っている。

前世では私の婚約者に選ばれなかった後、自分の護衛騎士だった者と駆け落ちした。

BL自体は読み物としてアリだが、王配にした後、「君を愛するつもりはない。」と言われるのはいろいろ困る。私は当て馬になるつもりは無い。

 という誰にも話せない理由で、三人とも婚約者に選ばなかった。

 それぞれまだ起こっていない未来の出来事ではあるが、三人とも前世とはほぼ変わっていないので多分同じ結末になるだろう。

そういえばエリオットだけが前世とは大きく違っていた。あ、私のせいか。

 だから私はこのまま誰とも結婚せずに王太女となり女王の座につくつもりだ。

将来、後継者の問題が出てくるだろうが、叔父様(王弟)のところに昨年生まれた双子の男の子のどちらか辺りを選ぼうと考えている。

それまではひたすら前世と違う未来を目指して頑張るのだ。

 


 そうして日々は過ぎ、ついに前世ではクロワルド王国の崩壊の引き金の一つになった飢饉、害虫による畑の被害が報告された時期となった。

 でも按察官達も調べたが、あの時最初に被害が出た伯爵領も、他のどこの領地からも害虫による被害の報告は上がってこなかった。

 そしてその一ヶ月程前、その伯爵領の近くの港にある検疫所で輸入品の肥料の一つに新種のバッタに似た成虫と卵が付いているのが見つかり、その積荷が焼却処分されていたことが分かった。

 もう前世のような蝗害による飢饉は起こらない。

私は初めて肩の荷を一つ下ろした気分になった。

もちろん今世では何も起こっていないので特に褒められもせず何も変わらないのだが、私の気持ちは軽かった。

 数年前、念のため王立のアカデミーに害虫や日照りにも強い麦や農作物の品種改良を研究させたり、国庫や各領へも穀物の備蓄を増やさせたりしていたおかげで、むしろこの年の夏は麦も農作物も昨年より豊作となり国は豊かに潤った。


 そんな頃、ブレイズランド帝国の皇帝、ウィリアム三世の死去がわが国に伝えられた。

これについては前世と同じだった。

あの時はエリオットが葬儀のため一時帰国した。

そして間もなく伝えられた驚くべき報告に私は耳を疑った。

 何と、ブレイズランド帝国内で政変(クーデター)が起こり、次の皇帝になるはずだったエリオットの長兄のリチャード皇太子が廃嫡され次兄のローランド皇子が皇帝の座に就いたというのだ。

 残忍で悪評高かったリチャード皇太子は前世でも伝染病の新薬を売り渋ったため父王が亡くなり、クロワルド王国に戦争を吹っかけるきっかけにするためエリオットを暗殺し、この国を乗っ取り私を処刑した憎んでも憎みきれない最大の仇だ。

 それが突如、政変で捕らえられ、厳しい最北の流刑地に送られて両目を潰され一生牢に繋がれるという。

 そしてこの政変を主導したのは実名も顔も隠された王族だといい、エリオットと同じで長年冷遇されていた温厚篤実な第二皇子を次の皇帝にする後押しをしたということだ。

そういった内情を私の按察官達が調べ上げた。

 その報告を聞いた夜、私は一人喝采を上げた。

私がいくら頑張っても手を出すことが出来なかった隣国の皇太子を、まるで私の仇討ちのようにやっつけてくれたのだ。

ラスボスを倒してくれた顔も知らないヒーローに私は心の底から感謝した。

 そしてまた一つ、未来の不安が消えて希望が見えた気がした。


 それからしばらく経ち、前世と同じくブレイズランド帝国であの感染病の患者が出たとの情報を得た。

私はすぐさまその対応に動いた。

 まだ遠い隣国でのことなのに大袈裟に騒ぎ過ぎると文句を言う大臣達を一睨みして国境にある全ての検問所に伝染病対策を指示した。

 まず少しでも感染の疑いのある者は入国させずに隔離して一定期間止め置き様子を見て、発症した者は治療をし、何もなかった者は入国を許可するよう徹底させた。

 次に国の管理下となっていた救護院に伝染病の対処方法と治療薬の開発を急がせた。

すると驚くべき返答がきた。

その伝染病の対処と治療方法はすでに確立されており、治療薬についても王都の下町の薬師によって開発済みで量産も可能だという。

 さらにその薬師というのがあの建国祭の夜会でエリオットが糾弾された「王都の下町にある怪しげな薬屋」だったことを聞いて、あまりの偶然と前世との違いに驚きで言葉が出なかった。

 そうして前世で多くの死者を出し、クロワルド王国の崩壊の原因の一つとなった伝染病は、今世では蔓延することはなく、罹患者も二十人に満たない数で死者も出なかった。

もちろんお父様も元気で、前世で亡くなったあの日も何事もなく過ごした。

 しかも何と今回は伝染病の流行しているブレイズランド帝国から治療薬を売ってほしいと要請がきたのだ。

 前世のリチャード皇帝には返しきれないほどの恨みがあったが、今のローランド新皇帝には思う所はなく、適正な価格での輸出を承諾し、医療の協力も申し出た。

こうしてブレイズランド帝国の伝染病も終息に向かい、いよいよ前世、エリオットが暗殺されたあの日を迎える。

 今世ではエリオットは婚約者にはならず、行方も分からないままだ。

今、わが国はますます豊かで国内は平和で、父母とも元気だ。

帝国との関係は良く、不安な要素は見当たらない。

 そう、私は前世とは全く違う今を生きている。

私は未来を変えたのだ!!

 夜、もうすぐ日付が変わる頃、私は一人静かにベッドに横になり、明日から始まる私の知らない未来への不安と、エリオットの新しい未来に想いを馳せ目を閉じた。









注 現世は今の世の中

  今世は今の人生

  と、いう意味で使い分けています。

どちらも仏教用語ですが大目に見てください。


お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿になりますがよろしくお付き合い下さいませ。

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