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霜注意報と、モフ毛マルチ作戦

夜――


ふくさんの家でご飯をご馳走になり家に戻る途中、空を見上げたたすくは、思わず足を止めた。


 


「……やば。星、やたらキレイ……ってことは、冷えるなこれ……」


 


空気がピンと張り詰めている。


タローも「ぴぃ……」と不安そうに鳴いた。


 


(この寒さ……明日、霜が来るかもしれない)


 


急いで納屋に戻り、日当たりの棚に並べていた苗たちを見つめた。


卵パックに並ぶ、小さな芽たち。


まだ細くて弱くて、土におろすのはこれから。


(……この霜に当たったら、全部やられちまう……)


 


そのとき――


コンコン、と扉がノックされた。


 


「夜分すまんのう」


 


まごじいだった。


 


「明け方、冷えるぞ。……芽、守る用意はしとるか?」


 


「いや、まだ……。畑にはまだ植えてないけど、この苗たちがやられたら終わりです」


 


たすくは棚の下から、ふくさんが袋に詰めてくれたものを取り出す。


 


「……これ、使います。タローの毛」


 


まごじいが目を見開いた。


 


「……あんた、それ、何のためにとっといた?」


 


「なんか……使える気がして。霜よけになるかもって」


 


まごじい、にやりと笑う。


 


「よう気づいたな。あったかくて、軽くて、通気もええ。

自然のマルチじゃ。立派な“苗床守り”になる」


 


「ありがとうございます、師匠」


 



 


月明かりの中、たすくとタローは苗たちの卵パックの上に、ふわりとモフ毛をかけていった。


柔らかくて、まるで毛布。


ひとつひとつ、大事そうに覆っていく。


 


「ぴぃ……(ぬくぬくしてね)」


 


タローが、鼻先でそっと毛を整える。


 


たすくは、静かに言った。


 


「明日が、無事に来ますように」


 


まごじいが、ぽつりと呟いた。


 


「その気持ちが、育てる力になるんじゃ。……あんた、立派な苗守りじゃ」


 



 


夜が明けて、霜の光る朝。


納屋の棚の上、モフ毛に包まれた芽たちは――

青く、小さく、でもしっかりと立っていた。


 


「……守れた……!」


 


タローが跳ねる。


「ぴぃぃぃっ!!」


 


たすくはタローの頭をなでながら、ぽつりとつぶやいた。


 


「よし……次は、畑におろす日だな」


 


――“育てる”物語が、いよいよ動き始める。


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