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まごじい登場。畑と、伝説のモフうんこ

朝――


命のごはんを終えたたすくは、裏手の小高い丘へと足を向けた。


納屋の裏。そこに、元村長が耕していたという畑がある。


 


「……雑草ボーボーじゃん……」


地面はカチカチ。触った感じ、スコップも入らなそう。


 


「これ……俺、マジでやんのか……?」


 


ぶつぶつ言いながら立ち尽くすたすくの背後から、杖をついた老人が現れた。


 


「……その土じゃ、何も育たん」


 


「うおっ!?」


 


小柄な老人。深いしわ。日焼けした肌。鋭い目。


 


「……まごじい、ですか?」


 


「そう呼ばれておる。ふくの旦那じゃ」


 


「昨日、村長にどうだって言ってくれたの……」


 


まごじいは無言でしゃがみ、土をつまむ。


 


「痩せとるな。風に削られ、雨に叩かれ……生きとらん」


 


「……この畑、生き返らせられますか?」


 


たすくの問いに、まごじいは湯気の立ったお茶を差し出した。


 


「まずは、“癒す”んじゃ。人間も土も、まずは命を取り戻さにゃ」


 


「なるほど……」


 


「で、耕すぞ。はい、スコップだ」


 


「えっ」


 


「えっ、じゃない。掘るんじゃ」


 


「ちょっ、耕運機とか……ないんです?」


 


「なんじゃそりゃ」


 


たすくは空を見上げてつぶやいた。


 


「いや、俺……元ホームセンター勤務なんすよ……

このサイズなら“らくらく耕運くん・静音軽量モデル”が売れ筋で……」


 


杖が地面をピシャリ。


 


「喋る暇があったら手を動かせ!!!」


 


「ひぃっ!! はいぃぃぃ〜〜!!」


 


スコップを握って、エイヤと土に突き刺す。


 


「……か、硬っ!? 腰いてぇぇぇ!!!」


 


「甘えるな。村を耕す者は、腰の一本や二本、くれてやるつもりでやれ」


 


「腰は一本しかないです!!」


 


タロー「ぴぃ(がんばれ)」

モーさん「モォ(おぉ……)」


 


たすくが悲鳴を上げながら土と格闘していると、まごじいが鶏小屋の裏を指さした。


 


「で、うんこは?」


 


「うんこ?」


 


「タローのうんこ、どこやった」


 


「ああ、臭いし、裏に寄せときましたけど……?」


 


「馬鹿もん!!」


 


ピシャーン!!!


 


「そいつぁ、上等な肥料になる!!

草食で匂い少なめ、発酵しやすい。お前、あれを捨てるなど命への冒涜じゃ!!」


 


「ま、マジっすか!? でも鶏糞とかのほうが……」


 


「鶏糞は強すぎて根が焼ける! モフのはな、ちょうどいいんじゃ!」


 


(たしかに……即効性の鶏糞、穏やかな牛糞、繊維質な馬糞。

あれ?タローのって、柔らかくて乾燥しやすくて……)


 


「いや……モフのうんこ、バランス良くね!?」


 


「よう言った。

“モフのうんこは、命の種を育てる宝物”じゃ」


 


「いやそれ、名言っぽいけどTシャツにはしたくない!!」


 



 


たすくは、タローのうんことモーさんの牛糞を手に――

まごじい直伝の比率で混ぜ始めた。


 


汗だく。腰ガタガタ。手のひらはもう土と一体化している。


 


「これ……俺、村長じゃなくて、堆肥職人だろ……」


 


タローが誇らしげに糞を見守る。

モーさんは、どこか神々しく鼻を鳴らした。


 


「タロー……お前、今すごい貢献してるよ……」


 


ぴぃっ(キラァ)


 


まごじいが静かに言った。


 


「明日は“芽出し”じゃ。発酵させて、命の芽を育てる。

お前の村、ここから始まるぞ」


 


「……はい、師匠」


 


――こうして、モフうんこと腰痛から始まる、村の再生が始まった。


次回、まさかの“卵パック栽培”に挑戦!?


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