Phase6-9:私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう
緩衝地帯、旗艦サピエンティア艦橋。
「……本国に通信を繋いでください。アエラの住民は、速やかにログアウトするようにと」
コンスルが静かにそう言って、それを聞いた全員が戸惑った。
『と、突然なんですか』
『もう勝利目前じゃないか』
「そ、そうですよ。ここからどう負ける要素があるんです?」
コンスルは座席に腰を下ろし、悔しそうに息を吐いた。
「完全に私のミスです。すっかり忘れていたことを、ここまで近付いてようやく思い出しました」
イーオン、ウォルプタース。
「あ、あれ? 攻撃が止んだ」
「相手の指揮官もようやく気付いたか」
「ええー、どういうことなの? もう降参ですー。教えてくださいー」
シイナは庇の上に寝転がり、ごろごろと転がった。
「アークが初めて実戦投入されたショウタイムの時のことだ。四年前だったかな。かなりの時間とロスを費やして建造された戦艦だったこともあって、大きな期待をされていたんだ。実際、俺も期待していた。このゲームを始めて一年やそこらのぺーぺーだったからな」
「それ、関係あるの?」
「大ありさ。アークには特殊な主砲が装備されている」
「主砲?」
興味を持ったシイナが体を起こす。
「リパルション・ブラストって言ってな。戦闘機や戦艦、ラインの乙女なんかを空に浮かせている技術を使って、斥力波を収束させて撃ち出す兵器だ」
「なにそれ強そう。なんでショウタイムで使わないの?」
「使ったとも。その最初の一戦だけな」
「……なにか問題があったんだね」
「その通り」
イッテツは携帯端末を操作して、動画を再生した。シイナがそれを覗きこむ。
「当時、俺が撮っていた映像だ」
動画は、ショウタイム中のウルブスのスクリーンを撮ったものだった。スクリーンには、アークがリパルション・ブラストを撃とうとしている姿が映しだされている。
スクリーンの前で観衆が沸く中、轟音と共にアーク正面の空間が歪んだ。それと同時に、サブスクリーンを見ていた観衆が悲鳴を上げる。カメラが動いてサブスクリーンを映すと、緩衝地帯の空に無数の爆炎が上がっていた。
「あー……」
「リパルション・ブラストは超強力だが、粒子砲と違って視認できない。当時は今以上に組織的な動きができていなかったから、敵も味方も巻き込んであらゆるものを吹っ飛ばして、後日えらい批判を受けた。それ以来使用されていない」
「……あ」
シイナは今の状況を思い出し、気付いた。
「嘘でしょ……ここまで計算しての陽動作戦だったの?」
「おそらくな。俺も気付いたのはさっきだ。この作戦を考えたやつは、相当なキレものだよ」
眼下の観客たちはアークに迫るアエラの軍勢に阿鼻叫喚だったが、二人の目にはリパルション・ブラストの的が素晴らしい位置にあるようにしか見えなかった。
緩衝地帯、飛行戦艦アーク艦橋。
「味方機、すべて撤退完了しました!」
「照準、完了してます!」
報告を受け、ヴァレイが頷く。
「リパルション・ブラスト、発射!」
「発射!」
射手が復唱の後、トリガーを引く。
収束された斥力波が、指向性を持って放たれた。
斥力波は空間を歪めながら、一直線にサピエンティアへと向かい、それを貫いた。直線状にあるビルや城などの大きなアーティファクトも貫いていく。少し遅れて、貫いてきた物の周囲を、規格外の斥力が襲った。サピエンティアのみならず、アエラの艦隊や召喚獣、地上部隊までが、致死量を遥かに超えるダメージを受けた。
最終的に残ったのは、イーオンからアエラへと一直線に伸びた、巨大な道だけだった。




