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Phase6-6:私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう

 イーオン、ウォルプタース。

 それまでのチグハグな攻撃と劣勢に消沈していた会場は、ヴォークリンデの登場によって、開戦直後に匹敵する熱狂に包まれていた。

「え、どういうこと? どうなってるの? チート?」

 スクリーンに映るヴォークリンデの雄姿に、シイナは疑問符を並べた。

「お前は確かに悪くない情報を集め、良い人選をしていた。だが、それらはただの点でしかない」

 イッテツは携帯端末をいじりながら語る。

「イーオン空軍の強力な指揮系統。優秀な戦闘機乗り。有能な新人を見つけるスカウトマン。この点は線になる。どういうことかわかるか?」

 問題を出されて、シイナの頭脳が回転し始める。

「……そうか。ケイが本当に有能な新人にしか声をかけないなら、今回ライナーに抜擢された新人も、本当に有能だったんだ。ケイのフライングドッグは第二首都港の所属でハンスとは面識があるから、空戦の訓練を頼むこともできたかもしれない。そして、ヴォークリンデを含むラインの乙女は、空軍の管理下にある。つまり、強力な指揮系統の下で動いてる……」

 イッテツは首を縦に振った。

「もしかしたらガイドラインの連中が、面白半分で勝手に新人をラインの乙女に乗せたのかもしれないとも思っていた。だが開戦直後、ヴォークリンデは明らかに他の二機と同じ指揮下で陽動作戦を開始している。あのライナーは間違いなく、すでに別のキャラクターで長期間プレイしたベテランか、人間離れした技能を持った新人だ」

「じゃ、じゃあもしかして、イーオンが勝つの?」

「いや……それはまだわからない」


 緩衝地帯、西方面。

 ヤタガラスを含むイーオンの航空部隊の第二波が、アエラの軍勢に迫る。後部座席に乗るミヒロは、ヴェルグンデから送られてくるレーダーマップを興奮気味に見ていた。

「いいよノックス! そのまま暴れ回っちゃって!」

『わかった!』

 ノックスはインカムから聞こえてくる声だけでもわかるほどに、楽しそうに答えた。すでにマップ南側の光点は散り散りになり、隊列の帯は大きく乱れていた。

「こっちもそろそろショウタイムだ! 乗り物酔い注意!」

「ちょ、うわー!」

待ち受けていた竜騎士隊を見て、ケイは機体をロールさせながら降下した。地面ギリギリで機体を立て直し、低空飛行で竜騎士隊に後ろを取られる。

「って、後ろ取られてるじゃん!」

「いつものことだろ!」

 ケイは慌てるミヒロを一言で黙らせ、操縦桿を思い切り引いた。急激に機首が上がり、機体が一回転したところで、竜騎士隊に逃げ場は無くなっていた。ケイはトリガーを引き、機関銃を乱射する。弾丸の雨を浴びて、竜騎士たちは次々とログアウトさせられた。竜は羽ばたいて上昇する必要があるため、高度を上げるのに時間がかかる。高度を下げられてから上を取られると、どうしようもなくなるのだった。

「どうよ!」

「三時から熱源!」

「ちょっとは余韻に浸らせろ!」

 右から特大の火球が飛んでくるのが目に入って、ケイは急加速してすんでのところでそれを回避する。捻りながら高度を取り、その火球を放ったものと対峙した。

「あのトカゲ野郎め……」

 サラマンダーはもう別の方向を向いて、火球を放とうとしているところだった。ケイは出力を上げ、混戦の空を突き進んでいく。操縦桿の先端の安全装置を外し、粒子砲のスイッチに指をかけた。

 その時だった。ヤタガラスは突然吹いた突風に煽られ、コントロールを失った。

「おわっ」

「わわわ、な、なに?」

 きりもみしながら落下していくヤタガラスの中で、ケイは咄嗟に姿勢制御装置を再起動し、コントロールを取り戻す。斥力が正常に発生して、なんとか墜落は免れた。

「ナイス立て直し! なんなのよ今の風、天候は安定してるのに……」

「なぜ……」

「ん? どうしたの?」

 水平飛行を続けながら、ケイはすでにその風の発生源を見つけていた。上空。月の光を浴びて影になっているが、そこに浮遊しているのは、ケイが一番よく知っているキャラクターだった。アオミノウミウシをモデルにした霊獣を駆り、風の斧槍を持った女騎士。

「なぜ……ルシオラがここにいる……?」

 ケイの視線の先、そのシルエットの背後で光の玉が上がった。

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