Phase4-2:人は、彼らが信じたいものを容易に信じる
「あの、先輩というのは?」
「ああ。ここは孤児院みたいなものなんですが、引き取り手が見つかったり、進学したりでここを出ていく子もいるんです。自分も実は孤児なんですけど、ここでの生活が好きなので、子供たちの世話係として残らせてもらってて」
「はあ、なるほど……」
話をしながら歩いていると、応接室に通された。二人掛けのソファが向かい合って置かれており、間にはテーブル。弥永は鞄を脇に置いて、ソファに腰かけた。
長谷川は一度応接室を出ていくと、数分後にお茶とお茶菓子をお盆に載せて戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
弥永は湯気の立つお茶を啜った。それからお茶菓子にも手を付け始める。
「……なにか?」
「あ、いえ、なんでもないです……」
お盆を持ったまま弥永をじっと見ていた長谷川は、声をかけられてすぐに目を逸らした。どこか落ち着かない様子で、そそくさと応接室を出ていく。
「……目的に気付かれたか?」
弥永が考えながらもお茶菓子に下鼓を打っていると、ノックの音がした。
「んむ、はい」
ゆっくりとドアが開いて、覗いた顔に弥永は小さく驚いた。そして立ち上がる。
「やあ。はじめまして、というのはおかしいですかね。ルシオラ」
「そうですね。でもはじめまして、コンスルさん」
二人は握手を交わした。
「本名は土佐です。どちらでも好きな方で呼んでください」
「あ、弥永です。土佐さんと呼ぶので、できれば私のことも弥永と呼んでください」
「わかりました。どうぞ座ってください」
促されて、弥永はもう一度ソファに腰を落ち着ける。土佐も対面に座った。
「驚きました。キャラクターそっくりですね」
「弥永さんも。ルシオラに負けず劣らずの美人ですね」
「や、やめてください。あんまりそういうの慣れてないんで」
「ああ、社交辞令ですよ」
「……」
「ははは、冗談です。なにもないところですが、ゆっくりしていってください」
「はあ……」
軽く踊らされて、弥永は肩を落とした。
「で、どうします。早速レナのところへ行きますか?」
「ああ、そうですね。お願いします」
「わかりました。ではとりあえず、部屋に荷物を置きに行きましょう」
「宿直室ですっけ?」
「はい。大した部屋ではありませんが、シャワーもありますし、鍵もかかるので」
「ああ、お気になさらず。……むしろ助かります」




