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課外活動②

 頭の中は何も考えていない。無意識に身体が動いていく。オーウェンをサポートしながら、大きなヒョウの魔獣の爪を剣で弾き飛ばす。


「くそっ! 減らねえ」


 オーウェンのその言葉を聞いた瞬間に男は自身のポケットから魔獣粉を取り出した。


「ああ⁈」


 男は叫んだ。何故なら、魔獣粉からかなりの粉が溢れているからだ。男の叫び声でオーウェンは視線をそちらに向けた。


「おいっ!! 早くそれを捨てろ!!」


 魔獣粉がある限り、魔獣が集まるのだ。そのため、取り扱いにはしっかりと気をつけないといけないのだが、男は袋の蓋を開けたまま、パニックになっていた。


「くそっ! よこせ!」


 そのため、男から奪いとったオーウェンは近くの水たまりに落とした。水につけると、効果が薄まるのだ。

 だが、その時だった。オーウェンの背中に向かって、大きなヒョウの魔獣の爪が襲いかかった。


「オーウェン氏!!」


 リリアムは叫んだ。自身の剣は他の魔獣に刺さっている。先程まで無意識に身体が動いていたのに、オーウェンに爪が向かっている姿を見て頭の中がはっきりとした。その瞬間、剣を手放して彼の元に向かっていた。


「ぐっ!!」


 オーウェンの目にはスローモーションのように映った。何故なら、間近に迫った大きな魔獣の爪が自分ではなく、オーウェンを守るために飛び出したリリアムの背中に当たったのだ。


「リ……リリアム!!」


 リリアムがオーウェンの胸に倒れ込んだ。


「リリアム! リリアム!」


 背中から血が流れ出て止まらない。オーウェンの手も真っ赤に染まった。そして、魔獣は一気に距離を詰めてオーウェン達の周りを囲んだ。だが、今はリリアムだった。


「リリアム! 大丈夫か?」


「オッ、オーウェン氏は……無事……?」


「俺は大丈夫だ。お前が守ってくれたから……」


「にししし……オッ、オーウェン氏……なっ、涙目だ……」


 オーウェンの瞳には涙が浮かんでいた。そんな彼の瞳に手をゆっくりと伸ばしたリリアム。


()、お前の……真っ直ぐに……こちらを……見る……瞳が……好き……だった……」


「幾らでも見せてやるから、死ぬな! 絶対に死ぬな!」


 リリアムの目は段々と掠れていく。瞳に伸ばされた手も下に落ちそうになったのをオーウェンが支えた。


「リリアム! 頼むから……死なないでくれ……」


 魔獣が大きな雄叫びを上げた。


「うっうわあああ!!」


 二人の近くで元凶である男は身体を丸めて震えていた。オーウェンは目を閉じたまま動かないリリアムを抱きしめたまま動かない。


 そのため、大きな魔獣の爪がオーウェンに降りかかった。その瞬間、その場は大きな光に包まれた。


「リリアム!!」


 現れたのはヴィヴィアンとリノザだった。そして、彼女達は驚いた。一年の課外活動の筈が、魔獣に囲まれている上に強い大きな魔獣がいるではないか。


「リノザ」


「はい。結界魔法を展開いたします」


 リノザは即座に結界魔法を展開した。もちろん、魔獣とヴィヴィアンだけを結界の外に追い出してだ。


「私の愚弟をよくも可愛がってくれたな……」


 その瞬間、大きな炎の渦が魔獣を焼き払った。そして、リノザの水魔法でその火の後始末を終わらした。


「終盤の魔獣が何故ここにいる……?」


 ヴィヴィアンの呟きは水たまりに落ちている魔獣粉に向かった。


「これのせいか……」


 魔獣粉を手に取った彼女の元にリノザが駆け寄った。


「ヴィヴィアン様」


「リノザ……」


 そして、すぐに持っていたものを彼女に見せた。リノザはそれを見て息を呑んだ。この魔獣達は意図的に呼ばれたものだとわかったからだ。


「リリアム……」


 オーウェンの小さな呟きが彼女達の耳に入った。


 オーウェンはリリアムを抱きしめたまま動かない。そんな彼にヴィヴィアンは声をかけた。


「オーウェン君」


「…………」


「オーウェン君」


「…………」


「オーウェン君!!」


「……俺のせいで……リリアムが……」


 意気消沈している彼にヴィヴィアンは深いため息を吐いた。そして、大きな声で叫んだ。


「愚弟!!! 良い加減に起きろ!!!」


 その声に、リリアムは勢いよく起きた。


「ごめんなさい!!」


 そんな彼にオーウェンは目を見開いて驚いていた。


「リッ、リリアム……?」


「あっ……あははは……てへ?」


 リリアムは首を傾げた。


「ごっ、ごめんね! そっ、某もやられたと思って……うわっ!」


 最後まで言う前にオーウェンによって勢いよく抱きしめられた。


「……良かった……」


 安堵した小さな声がリリアムの耳に届いた。そして、オーウェンの背中に自身の手を伸ばして抱きしめ返した。


「ごめんね……オーウェン」


「本当だ。…………と言うよりも、何故、元気なんだ?」


「あっ……それは……」


 リリアムは懐からペンダントを取り出した。


「これのおかげなんだ」


 オーウェンが首を傾げたので、リリアムがそのペンダントの効力について説明した。


 リリアムのペンダントは魔道具の類だった。魔道具というのは魔力のこもった道具の事だ。それは、ヴィヴィアンからのプレゼントだった。主に効力は即死では無い限り、一度だけ治癒魔法が発動されるというものだ。その発動条件はリリアムの脈の動きが低下した時だ。そして、発動された瞬間にヴィヴィアンとリノザが瞬間移動でペンダントの持ち主がいる場所に飛ばされるというものだ。


「……凄いな」


「そうでござろう! リノザちゃん作でござるよ」


 その言葉でオーウェンは視線を彼女に向けると、にっこりと微笑みを返されるだけだった。


「…………姉上は心配症ですからな」


 これをプレゼントされた時の姉の顔は少し歪んでいた。


「愚弟。これをしっかりと持っておけよ。今度は……私が必ず守るからな」


 姉は転生前の事故の事を後悔しているのだろう。俺が……姉を守るように車から庇ったのだ。その事を彼女は覚えていたのだろう。別に罪悪感など感じなくてもいいのに、彼女はずっと気にしていた。


「なら、リリアムの身体は大丈夫なのか?」


 リリアムはその問いには答えない。何故なら、背中には打ち身のような痛さがあるからだ。


「治癒魔法も万能では無いので、それだけ深手を負ったなら、少し寝込んでしまうかもしれません」


 リノザが眉を下げながら、申し訳ありませんと頭を下げた。そんな彼女は焦った。


「いやいや! 生きているだけでいいんでござるよ! だから、大丈夫!」


 だが、オーウェンは心配症のようで俺をお姫様抱っこで抱えたまま、森から抜けて、先生達の元へと向かった。その時の姉とリノザは目を輝かせて二人を見ていた。そして、魔獣粉を保持していた男はしっかりと先生に突き出した。ヴィヴィアンとリノザが冷たい笑みを浮かべながら。

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