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合言葉 __前編__

「じゃあ約束だよ…大人になっても絶対に、絶対に忘れないから!」

私たちは息を吸った。沢山泣いてくしゃくしゃになった、顔を見合わせて、でも、またどこかで会えるよねって、お互い信じてる気持ちで笑いあった。

「いくよ!せーのっ!」

『私たちの、合言葉』

ーーラナンキュラス!



「…感動的だぁあああ、あぁあカーネルぅうう皆ぁああ離ればなれにならないでええ…ヒッグ…ってあれ?物語これで終わり!?続編ないの!?え~!!」


久々に本で号泣してしまった。あらやだ!恥じらいの乙女の筈が鼻水まで出てきちゃいましたわ!ぅう…ティッシュティッシュ…と涙でぼやけた視界の中でティッシュ箱をさがす。すると、呆れたような顔で、シルバー髪で赤い目の男の子がティッシュ箱を私に渡してくれた。


「うぅ…ありがど…ブーーーーッシュ」


「うわ…鼻のかみかたもっとお上品にできないのかよ…本当に女の子か?おまえ。」


目をひきつらせて引きぎみに彼は言った。あぁん?女子は皆家の中でのかみかたなんてこんなもんだよ!(個人差があります)

…って言い返してやりたかったけど、号泣しすぎて声にならなかった。するとそんな私を見かねたのか、大きく溜め息をつき、彼は隣に来て私の背中をゆっくり優しく擦ってくれた。


え?このシルバー髪で赤目のショタは誰かって?それは、時が四時間前ぐらいに遡る_



どうやら、二度寝していたらすっかり日が暮れてしまっていたらしい。

先程メイドさんが私の部屋に来たのは、婚約の面談の話がいくつかあがって、明後日辺りに面談をすると、私のお父さんからの伝言を預かったと伝えてくれた。


…ふむ…例えこのゲームが好きでやり込んでいた私でも、幼少期の内容は専門外だ!!!


そこが盲点であった…乙女ゲームは高校生活が始まるのと同時に始まる。確かに、婚約者はミアルルにはいたけど…。政略結婚だったから、もし婚約者ルートじゃないと、恋心とかは芽生えていない。婚約者じゃない別のキャラと恋愛を進めても、婚約者が王様に相談し、婚約を取り消してくれて、好きなキャラと無事にゴールインできる。


過去編とかはあったけど、一瞬だったからなぁ…


そんなことを考えていた私は、一人になった部屋にポツンと佇んだ。


…空気が寒く感じる…一人ってこんなに寂しかったっけ…

部屋が広い分、なんだか不気味と心がぽっかりあいた感じ…


「…あ、雨、降ってきた」


おもむろに顔をあげた先に、丁度窓があった。雨の水滴は、ポツポツと外の窓を濡らしていく。まるで、天気も今の私の気分みたいだ。


「…我が妹がいないとこんなに寂しいもんだっけかな~」


今でも鮮明に残ってる。あの子の辛くて悲痛な顔を。

…あぁ、私が何にも負けない、身体が硬くて、守れるロボットだったら、妹だけでも救えたのかな…


そんな暗いことを考えていると、また先程と同じように、コンコンと2回ノックが聞こえた。


「お嬢様~入りますよ~」


さっき来たメイドさんより年期の入った声。メイドさんのベテランさんかな?


「はーい!どぉーぞぉー!」


私が返事をすると、失礼致します、との声と共に、前の私のお母さんと同い年くらいのメイドさんが入ってきた。


「…!まだネグリジェのままなのですか…。今日は執事の新入りさんがいらっしゃるので、身だしなみをしっかりするように、と旦那様と奥様に朝言われたでございましょう?」


えっ。すみません目が覚めてからずっと寝てたのでワカリマセン。別人でーす☆…なんてバカ正直に言っても信じて貰えないだろうし…とりあえず、話を合わせよう。


「あ、あぁ…すっかりわすれてました…」


私は頭をポリポリとかきながら、視線を斜め上に移した。うわぁお天井あまり見てなかったけど装飾とかすごい!


「早めにお嬢様のところに伺っていて良かったです…。…ふむ、時間は間に合いますね…。それでは、急いで身支度を致しましょう。」


そう言うと、メイドさんが何かのスイッチをポチッと押した。すると、何も飾られてなかった一面の不自然な壁が、ウィイインとの音と共に、上へとあがって姿を隠した。

するとそこには、大きな化粧台と沢山の化粧道具、そして周りには壁一面にクローゼットが沢山ある部屋が出てきた。


さぁ!こちらに!と、大きな椅子に座るように促される。


私は、うわぁ…豪邸って隠し部屋もあるんだ…と更に私は驚いた。お金持ち…恐るべし…


そう思いながら、私は彼女の言うことに従い、椅子に座った。




*身支度中…





「…ふぅ、ジャスト残り10分前…計算通りですね!」


メイドさん達が安堵の息を漏らす声が聞こえる。

私は、ネグリジェから、ラベンダー色の可愛らしいデザインのドレスに着替え、メイドさんに薄ーくほんのりピンク色のリップを塗ってもらった。

鏡の中のミアルルはお人形みたいに更に可愛くなった。


ふぅ…ドレスに着替えるの結構大変だな…あの後、いつの間にかメイドさん以外にも、数人のメイドさんが来て、私のドレスの着替えを手伝ってくれた。


「…それでは、行きましょうか。旦那様がたがお嬢様をお待ちですので…。」


そう言うと、一瞬メイドさんの顔が、心配している顔になった。


…!そうだった。ミアルルの家庭は少々複雑だったんだっけ…


ミアルルには、兄が一人、姉が二人いる。ただ、その三人とミアルルは血が繋がってないんだ!前の奥さんは重い病気でこの世を他界。

アルレント伯爵は、その奥さんのことを溺愛していて、亡くなったときはひどく悲しんだそうな。ぽっかりと空いた心の穴を修復するために、とある侯爵家の長女と再婚した。

その長女が、現在アルレント家の奥方であり、ミアルルの母なのであーる。(ようするに子連れ結婚ってこと!)

まぁ、お母さん以外は全員ミアルルをいじめるんだよね。高校になっても(ゲーム中でも)嫌がらせ、暴力、暴言とかあったし、なんとなく察してたけど…完全に家庭内的暴力じゃん!!!日本ならアウトだけど、ここではそんな法律とかないらしい。

親が子供をぶつのは当たり前って感じ?


「私は、平気よ」


私は精一杯ニコッと笑った。本当は、足がすくむほど怖い。ここはゲームじゃない、現実だって考えると冷や汗が出てくる。殴られないようにしなきゃ…


メイドさんは、少し微笑むと、直ぐに元に戻り、ご案内致します、とゆっくり歩きだした。



*移動中



「…おぉ。ちゃんときたか。ま、孫にも衣装だな!少しぐらい着飾らないと、アルレント家の名に泥を塗るはめになるからな」


ガハハハハと下品な笑い声で私を見下して笑うのは、アルレント家の当主である。

…ふぅ。ミアルル大変だなぁ…確か乙女ゲーム設定によると、この伯爵は奥さんを亡くした悲しみを、自分の子じゃないミアルルに当たり散らすって書いてあったな…

暴力振るわれたらいやだし、無視しとこう。スルーしとこう。うん。何も聞いてなかった。


私は腕を擦った。


「まぁ、見てよあの毒々しい色のドレス!下品よねぇw!」


「全然似合ってないわ~w」


クスクスとミアルルの姉二人が私を笑う。

そして兄はチラッと私を見た後、フンッと鼻で笑った。


………


私は顔をポーカーフェイスを保っていたが、心には怒りマークがあふれるぐらいに多発していた。


すると、私の母がそそそ…と近づいてきて、耳元でこう囁いた。


「ミア、今日一段と綺麗ね」


母の顔を見ると、彼女はへらっと笑って、当主の隣へ戻っていった。


チラッと腕に見えた殴られた後が痛々しい。私はまた、ロボットだったら助けられたのに…と思った。

私はそっと、お母さんの隣に立った。


広い玄関ホールの前で、アルレント家が一列に仁王立ちし、その前を、メイドさんや執事さん達が道を空けるようにズラーッと並ぶ。


こんなに盛大に迎える執事さんってどんなにすごい人なんだろう?…ちょっと楽しみ!


ネガティブな気持ちを打ち消すために、私は今あることを考えた。


そう考えた時と同時に、大きな扉が、ゆっくり音をたてながら開いていった。

ちなみに並んでる構図はこうです

ミ 母 主 姉 姉 兄


メ 執

イ 事

ド さ

さ ん

ん 達


次の更新は来年辺りになります(`・ω・´)

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