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猫耳少女の素敵異世界勇者録  作者: apricoap
黒の勇者と白の勇者
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黒の勇者と白の勇者とその出会い1

初前後編


怖くて見れなかった小説情報久々に見たら100pt超えてました。

この場を借りて感謝を。

楽しかった‽


少なくとも話していて僕は楽しくなかったよ。

魔王陣営との最初の出会いがあれじゃなかったらどんなに良かったか。


うん、気を取り直して旅立ちの話だ。

もう言ったと思うけどこの世界には五つの国があるんだ。

あれ?言ってなかったっけ。


まあいいや。


その五つの国のちょうど真ん中らへんににどの国にも所属しない都市が一つある。


世界のワールドウーンズといういかにもな深ーい穴をぐるっと取り囲むように作られた五国管理の都市スタブだ。


それで魔物が穴から湧き出るのを防いでいるんだって。


重要なのはこれ、転生する時の世界説明にも書いてあったのです。

ね?いかにもって感じでしょ?

ほかの勇者たちと合流しようと思ったらここだと思ったわけさ。


だからこそ僕はそこを最初の目的地に定めた。

他の勇者たちもここを目指していると信じてね。


結論から言うとこの僕の判断は正しかったわけだけど。














「んー意外に安全な旅だったなあ」

ガタゴトと揺れる馬車の上で風を感じながら背伸びをする。

これは春のうららかな日差しによる眠気に抵抗する一手だ。

このキャラバンの護衛としてではなくて客として乗っているから別に寝てしまってもいいけど今寝ると夜に目がさえて暇になるのは勘弁である。


「街道沿いに旅をすりゃ襲ってくる魔物も若いはねっかえりどもさ。賢いやつらはあえてこんな不利なところでは襲わねえ。そして、得てしてそういうやつらの方が強い」

「ふーん」

いかにも熟練っぽい馬車の御者さんの言葉を聞いてこんなことならもうちょっと早めに出発しても良かったかもしれないなと少し後悔する。


実際に襲ってきた魔物が皆無とは言わないけど、皆すぐにクリスタルになった。

あまり種族をばらしたくないからこの旅の間は本当に何もしていない。


「予定通りいけば今晩白の国のやつらとも合流するからさらに安全になるし……そろそろ見えるころじゃないか?」

馬車の上に立ち上がり御者の人が指さす方向を手を目の上に当てて西日を遮りながら馬車の群れ、続く街道、街、そこから延びるもう一本の街道と少しづつ遠くを見ていくと確かに連なる点が規則正しく並んでいるのが見える。


「そういえばスタブへ向かうのに何で白の国のキャラバンと合流するの‽」

記憶通りなら目的地に対して遠回りだった気がするのだけど。


「そりゃこんな大人数で闇の森を突っ切るわけにもいかないからな。向こうさんも似たような事情なんだろうよ」

あの森広い道ないもんねえ。


そういう適当なことを言っている間にもキャラバンは進んでいき、街で待つ白の国のキャラバンと合流したのはちょうど白の神様の化身ともいわれる太陽が地平線に沈みに黒の神様に領域を受け渡すころ合いだった。


白の神様は規律や正義をつかさどる神でよく黒の神様と対比される存在だ。


だからかキャラバンの護衛の装備もその色が濃く、統一性のない雑多な装備の多い黒のキャラバンと比べて整っている。


言葉を選ばなければまるでごろつきと騎士みたいな差だということになる。

レベルで能力が決まる特性上、強さはそんなに変わらないと思うけど。


そんな白の国のキャラバンの中で特に白い髪を長く伸ばしたイケメン一人が特に目を引く。

隊長と思わしき人は別にいるのになぜかその人が中心にいるような錯覚を覚えるような視界の隅に引っかかってしまう感じだ。


そんな彼だが、視線に気が付いたのかこちらを振り向く銀色に輝く目と目が合ったので手を振っておく。

するとまるで有名人が観衆に手を振るような感じで振り返してきた。

イケメン補正のせいかまったく嫌味に見えなかったことが微妙に悔しい。



「直接会いに行くべきか否か。それが問題だ」

視線を外して足をぶらぶらさせながら考える。


「一目ぼれなら行って来な。うちのかかあに結婚を申し込んだときなんか十何べんも失敗したんだ。若者は失敗を怖がらずに玉砕してこそだぜ」


「そういう意味じゃないんだけどなあ」

さすがに一目ぼれというやつじゃないと思う。


どちらかというと……でもそんな偶然はありえるのだろうか?


間違えてしまったら恥ずかしい。

でも、若者は失敗を怖がらずというところは確かにそうだ。

何事も行動しなければ始まらない。


心を決め勢いをつけて馬車から飛び降りる。

「じゃあ、ちょっと行ってくるよ。荷物見ておいてねおじさん」

「幸運を祈るよー」

勘違いしているだろうけどその幸運はもらっておこう。



「やあさきほど手を振っていらしたお嬢さんですね。わざわざ私に会いに来てくれたのですか‽」

白髪の男性に近づいていくと当然のことながらそのイケメン具合は遠くで見た時より近くで見た時の方が強い。


「うん、なんか気になったからね。それにお嬢さんは背筋がこそばゆいからやめてよ」

百分の百の本音である。


「それではなんて呼べばいいのか教えてくださいませんか?」

さりげなく微笑を入れてくるところがポイントが高い。彼が黒の神殿に寄ったならばならば一日で娼館のお姉さま方のうわさになることだろう。


「ミーア。それが名前だから呼び捨てでいいよ」


「そうですか。そういうことでしたら私もクルスと呼んでください。ミーア」


「お言葉に甘えるよ。クルス」

名前の交換が終わる。

さて、ここからが勝負だ。

確信の持てる情報を引き出さなければいけない。



「ねえクルスってキャラバンの護衛長い‽」


「いいえ。今回が初めてです。そういうミーアも身のこなしに隙が少ないですね。もしかして貴女も黒のキャラバンの護衛ですか?」


「ううん、お客としてくっついてるだけ。でも世界のワールドウーンズを目指している身としては戦うすべぐらいは覚えておかないとね」


「おや。ミーアも目的地は世界のワールドウーンズなのですか。私もそうなのです。護衛は片道だけの予定です」


「奇遇だね」


「奇遇ですね」


この微妙な探り合いは何なんだろう。

言い出せよ。いやお前から言えよみたいな感覚。


完全に無表情になってしまう『ポーカーフェース』を発動できないから笑顔が引きつってないか心配だ。


でもこの空気どこかで見たことがあるな。

自分から言い出さなきゃいけないような雰囲気だけど相手に先に発言してほしい感じ。


……ああこれあれか。お見合いだ。

なんか周りの人もそう思って空気を読んでか少しずつ遠くに引いているし、さりげなくウィンクする人や親指を軽く上げる人もいるし。

中にはため息を吐く人や隣の人の肩を慰めるようにたたく人もいる。

でもそこの方、その若者を応援するような生ぬるい眼はやめてくれませんかね。


「世界の両端から出発した男女が偶然であう。このこと自体は良く起きることなのかもしれません。ですが、それがあなたと私だったということはきっと奇跡でしょう。こんな奇跡が起こった幸運を黒の神様に感謝しなければば。」

クルスお前もそういう勘違いをしている一人か‽

はずれかという失望の気持ちが沸き上がる。

そうなったらいかにこの衆目から脱出するかを考えなければならない。


そして、どうにかこの場から離脱する言葉を考えているときにゆっくりと動くクルスの口に気が付いた。

『あ・わ・え・え』か。

確かに衆目の中で続けるわけにもいかないし……。


……一度信用してみようか。


「両端は大げさだなあ、黒の国と白の国は隣同士じゃないか。でもそれは奇跡が色あせているという意味は持ってない。僕も黒の神様に感謝を捧げたいね」


仕方がない。一芝居打とう。

周りの人にはお望み通りのメロドラマを見せてやる。


少なくとも片方の役者が大根の三文芝居でいいならだけどね。


「でもこんなところでこんな素敵な王子様に会えるなんてきっとこれは偶然じゃなくて必然。運命だよ。だからこそ、僕はこの運命を用意してくれた白の神様により感謝を捧げたい」

ちょっと無理やりだったかな‽

何しろ提案してきたのは向こうだし、確実に意図は伝わったはず。

合わせて見ろ。


「私が王子とは恐れ多いことです。ですが、あなただけの王子様でしたら喜んで務めさせていただきます。私だけのお姫様」

クルスが膝をついて首を垂れる。

周りのざわめきがうるさい。何だこの羞恥プレイ。

というかクルスお前はよくそんな涼しい顔で耐えられるな。

それとも今伏せているその顔は羞恥心でいっぱいなのだろうか。

どちらにしろ僕はもう叫びだしそうなので精一杯なのに。


「僕がお姫様とは光栄だね。こんなガサツなお姫様で良かったらエスコートしてくれない?僕だけの王子様‽」

ああ、シスターあなたの教えが役に立ってます。

『膝をついて首を垂れる男性にエスコートをねだる淑女の表情』なんて一生使う機会がないと思っていたのに人生というのはわからないものです。

今度がありましたら強制しなくても自主的にもう少し真面目に授業を聞きます。



ではとクルスは膝をつきひざの裏と背中に手を通し、そっと体を傾けると僕の体を持ち上げた。


いわゆるお姫様抱っこの姿勢だ。

この野郎こっちが抵抗できないのをいいことに自然にやりやがって。

周りの口笛がうるさい。

お前らが規律正しそうに見えたのは僕の目が節穴だったね。


「ではどちらに‽」

「王子様に任せるよ」

自然に割れた人垣の間を人を一人抱えているようにはとても見えないぐらい颯爽と進んでいったかと思うとすぐ近くの宿屋へ入っていく。


カウンターにいた宿屋の女将もメロドラマを覗き見ていた口かクルスから渡された金貨を受け取ると心得たように余計なことを何も言わずに二階の一番奥の部屋だよと部屋のカギを渡す。


キャラバンが二つもこの街にいるせいか宿の二階も人目があり、気を抜くことはできずにシスター曰く『あなたしか目に入らない』という視線でクルスを眺め続けなければいけなかった。


その苦行から解放されたのはクルスが部屋の鍵を開け、ベッドにやさしくおろしてくれてからだ。


扉を後ろ手でしめて部屋に音を遮断する魔法である『サイレンス』をかけていくクルスを眺めながらタイミングを計る。

いろいろ明日の朝のうわさは怖いけどこれで二人っきりだし、そろそろ確認しようか。

いや、それとももう少しだけ腹の探り合いを続けて確証を得てからの方がいいのか‽


「ミーア、あなたの前世は男ですよね?」

そう悩んでいたせいかクルスの口が開き機先が制された。


最終的にはどちらから確認してもいいから機先を制されたこと自体はいい。


……うん、そっちはいいんだ。

でもさクルス、お前はよりによってその質問から入るのか……。


大丈夫ノクターンに行く予定は今後も一切ないから。

健全に完結まで走って行きます。

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