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今回は2話連続投稿してます。
こちらから入られた方は21話から先にお読みください。
そりゃそうだ。旦那様にはなんの不備も無い。問題は妻になった私だよね。
西園寺の嫁として必要な知識と教養は、今現在お勉強中。一般庶民出身で、血筋なんてたどりようもないし。お義父様やお義母様が生まれながらに持っている、上流階級特有のオーラも持ってない。
「貴文さん。もしかして結花さんのことを心配していらっしゃるの?」
旦那様が私をチラ見したため、お義母様が理由に思い当たったらしい。
「えっ、はい… ええ、そうです」
「それならなんの心配もありません」
ええっ! それってどういうことですか。まさか結婚したばかりなのに、いきなり離婚ってことですか?
「この数ヶ月、結花さんの人となりを見て、結花さんなら西園寺の嫁としての役目を、立派に務めていけると判断いたしました。だからあなた達の、結婚を許したのです。結花さんでは務まらないと思ったなら、たとえ式の当日でも結婚を取りやめさせるつもりでおりましたのよ。ねえ、あなた」
「ああ、そのとおりだ。私達が認めた西園寺の嫁だ。本家へ行っても大丈夫だ」
つまり婚約期間中、ずーっと厳しいチェックが入ってたってことですか。そしてそれにパスしたと。
うーん、やっぱりお金持ちの仲間入りをするのは、一筋縄ではいかないんですね。いまのお義母様の言葉、たとえ籍を入れたとしても、不適切と判断した場合、いつでも追い出すわよ! って聞こえました。
結婚はゴールではない人生の再スタートだと、誰かが言ってましたが、私の場合終わりのない嫁試験が始まっちゃったってことですかね… ウェェェ
「大丈夫だなんて簡単に言わないでください。大変なのは結花なんですよ。今だって僕と結婚するために、精一杯努力してくれてるんです。これ以上頑張らせるなんて… 」
「妻が夫のために努力するのは、当然のことだろう」
たっ、大変です。このままだと、親子喧嘩に発展しそうです。
新婚旅行から帰ってきて、さあこれからって時なのに、どうしたらいいんでしょう?
でもこのまま、大喧嘩になってさ、家飛び出して二人っきりで… その方がよくない?
まあなんにしても、今ココで私は何も言っちゃいけませんよね。成り行きを見守るしかないですよね。 頑張れ旦那様!
「これ以上の努力を強いて、結花に何かあったらどうするのかと言っているんです」
「何かとは何だ!」
「まあ二人とも落ち着きなさい。少し声が大きいですわよ。ほら結花さんが怯えていますわ」
えっ? 私、怯えた顔してた? むしろ旦那様の応援をしているんですけど。
「お優しいのね貴文さん。これからもそうやって、結花さんを守って差し上げなさい。そうすれば結花さんも、今まで以上に頑張ることが出来ます。女はね、好きな人の為ならば、どんな事でも出来てしまうものです」
お義母様のありがたいお言葉で、一触即発の事態が回避されました。ちっ…
「貴文さんが結花さんを守り、結花さんが貴文さんを支える。そうすれば、当主の重責や本家の嫁の苦労など、乗り越えていけますとも。あのお兄様と喜久恵さんでも務まっているのです、あなた達ならこの西園寺を、もっと盛り立てていけます」
あれれ、お義母様。なにげに本家の悪口を言ってますよね。
「それに心配なさらなくて大丈夫よ、結花さん。私があなたを、本家の嫁として恥ずかしくないよう指導いたしますから。誰からも文句のつけようの無い、立派な貴婦人にしてみせますわ。頑張りましょうね、結花さん」
「はっ、はい」
しまった!! お義母様のあまりの迫力に、思わず頷いてしまった。
私が素直に同意したので、お義母様はさらに上機嫌になり、お義父様と今後の話を楽しそうに始めた。
私が頷いちゃったので、旦那様はお義父様とお義母様に、もう何も言えなくなってしまいました。
旦那様は心配そうに私を見ています。“大丈夫なの、ユカ? ” って顔に描いてあります。
“大丈夫じゃないです” 私の顔にはきっとそう出ているはずです。私、最大のミスを犯しましたよね。
せっかく旦那様が、私のために御両親相手に戦っていたのに。それを心の中で応援していたはずなのに。旦那様の気遣いを、自分でぶっ壊すなんて。
あー私の馬鹿、間抜け、おたんこなす。
一番なりたくない状況に自分から飛び込んでいく。なんか前にも同じようなこと、しでかしましたよね私。
私はこの先も分岐点に立ったとき、更なる試練の道を選択していくのでしょうか。
このループから抜け出すには、やはりこの恋を終わらせるしかないのでしょうか?
とすれば、今度はお義母様相手に“やっぱり西園寺の嫁は務まりませんでした作戦” を展開させるべきですかね。
これなら楽勝な気がします。だって、本来の私の姿を見せれば、即作戦成功! って感じです。
ただ、問題は旦那様の存在です。
旦那様の「愛してるよ、一緒に頑張ろうね」攻撃で作戦を失敗する可能性が大です。
私はこの攻撃にめっぽう弱いのです。
お義母様の仰ったとおり、女は好きな人の為ならなんだって出来ちゃうし、頑張ってしまうのです。
だから気をしっかり持って“やっぱり西園寺の嫁は務まりませんでした作戦” をやり遂げて見せます。
私、この恋、絶対終わらせてみせます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
多くの方に読んでいただいたようで、とても嬉しく思っています。
この話しを思いつき形にした時、これはぜひとも世間様に発表せねばと、今思えば妙なテンションで投稿してしまいました。
途中何度か挫折しそうになりましたが、読者様の感想、評価に励まされ、こうして完結を迎えることが出来ました。
感謝でいっぱいです。本当にありがとうございました。