168話:国士準男爵
島左近清興だ、今はワシはある称号を賜ることになった。ワシの目の前で国王ロバート・シュバルツの命を受けたルナ・キサラギは勅諚を読み上げた
「サコン・シマ儀、王太子ロミオの視察の道案内、ご苦労。そして過分なる献上品、大変満足している。よってそなたに【国士】の称号を与えるものなり!」
「ははっ!有り難き幸せ!」
【国士】という称号、恐らく新しく創設されたものであろう。一体の誰の入れ知恵か知らないが、取りあえず内容だけでも聞いておこう。勅諚を読み終えたルナにワシは早速、【国士】について聞いてみた
「ルナ殿、【国士】とはどのような称号にござろうか?身分は平民にござるか、それとも貴族か?」
「どちらでもありません。」
「何?(貴族でもなければ平民でもない。どうゆう事だ)・・・・では改めてお尋ねいたす。【国士】とは如何なるものにござろうか?」
「そうですね、【国士】というのは多大な功績をあげた名士に送られる称号にございます。【国士】は【準男爵】とは違い、貴族【公爵・侯爵・辺境伯・伯爵・子爵・男爵】と同格の処遇を受けられます。」
ワシは耳を疑った、貴族と同じ扱いを受けるとは・・・・・
「ルナ殿、ワシは貴族への昇進はお断りだと申したが・・・・」
「ご安心を、正式に貴族になったわけではありませんので・・・・」
貴族と同格の処遇でありながら貴族ではない、益々わけが分からない・・・・
「これは奇妙な事よ、貴族の身分ではないのに、貴族と同格の処遇を受けるとは・・・・」
「ええ、我が国では異例の事にございます。サコン・シマ殿は我が国で初の貴族と同格の身分を得られたのですから・・・・」
ふん、してやられたわ。【国士】の称号は身分は平民であっても事実上、公家【貴族】の仲間入りをしたも同然だ。ワシが貴族にならない事に業を煮やした国王の苦肉の策というべきか・・・・
「貴族と同じ扱いという事は、領地替えを致すのか?」
ワシが気になったのは、そこだ。貴族と同じ扱いを受けるという事は領地替えも行われるということだ。せっかく精魂込めて作り上げた土地を手放すのは如何にも惜しいことだ・・・・
「御心配には及びません、サコン殿はこれまで通り、御領地を経営なさって結構ですよ。」
「それを聞いて安堵いたした。」
「後、サコン殿は【準男爵】の称号もございますので、これからは【シマ国士準男爵家】と名乗られませ。」
「相分かった。それで貴族と同じ処遇とは如何なる事にござろうか?(【シマ国士準男爵家】とは急ごしらえだな。)」
「はい、まずは第一は国王陛下に拝謁することができること、第二に御茶会を開く許可があること、第三に所領の安堵及び領地替えの必要がないこと、最後に子々孫々に至るまで【国士】の称号を継承できる事にございます。」
第一、第三、最後は分かるが、第二の御茶会についてだが、ワシは御茶会の礼儀作法の事はよく分からぬ、元伯爵家令嬢のアリーナや、元王宮勤めの侍女のティアに聞けば分かるが、面倒だな・・・・
「ルナ殿、某は無骨者にて御茶会の心得はござらん。」
「御茶会の事なら奥方様とティアから学べばよろしいではありませんか。」
ティアはともかく、アリーナの事も調べておったか。よくよく考えれば、ワシの身辺は調べているであろうな
「貴族と同格という事は分かったが、某の立ち位置が分からぬが?」
「まぁ、領地の広さによって決まりますね、今のサコン殿の御領地の広さは【公爵】に匹敵しますから、サコン殿は立ち位置は【公爵】ということになりますね。」
「な、何と。」
ワシが【公爵】に匹敵するほどの領地の広さがあるのか、これからは言動に気を付けねばな。今になって徳川内府(徳川家康)の立場が理解できた気がする・・・・
「では改めておめでとうございます、サコン・シマ【国士準男爵】殿。」
「忝ない。」
役目を終えたルナはそのまま王都へ帰還した。ワシは皆を呼び出し、【国士】の称号を賜った事、ワシの通称も【国士準男爵】となった事、領地の広さによってワシが【公爵】の立ち位置にいる事を話した。皆の反応はというと、与一、ウルザ、アリーナ、サスケ、シグレ、ティア等からは様々な感想を述べられた
「というわけで、ワシは事実上、貴族の仲間入りしたも同然の立場となった。」
「やられましたな。」
「それは貴族になりたくない主様への当てつけじゃないのかしら。」
「ウルザ、陛下も苦心の末にお考えの事よ。」
「本当ですかね、俺も当てつけだと思いますが。」
「貴方はどう思うの、ティア。」
「わ、私も奥様と同様、陛下の苦心の末の御考えでしょう、私はそう思います。」
「まあ、なってしまった以上はやるしかあるまい。」
「左様ですね、ではサコン【国士準男爵】様、ご昇進おめでとうございます。」
「「「「「おめでとうございます。」」」」」
「あ、ああ、ありがとう。」
「旦那様、御茶会の事は私にお任せください。」
「ああ、頼む。」
改めて聞くとこそばゆいのう。さて問題はここからだな、ワシが【国士】という称号を得た事で、シュバルツ王国だけではなく、ワシに【準男爵】の称号を与えたジュリアス王国やシュンフェン王国等の同盟国がどうするか。まあ十中八九、シュバルツ王国と同様、他国も【国士】の称号を作るであろうな・・・・
「旦那様、まずは御茶会のための敷地を確保せねば。」
「お主はいいのか、家が没落しているし、それに・・・・」
「旦那様、ここまで来た以上、私も覚悟しております、例え冷やかしが来たとしても、私はサコン・シマの妻です、相手が誰であろうとも一歩も引きませんわ。」
「・・・・そうであったな、ははは(母は強しと言う奴か)。」
その頃、王宮の執務室にいたロバート・シュバルツはルナより報告を受けて安堵の溜め息をはいた
「そうか、受けてくれたか。」
「陛下、貴族たちから何か申されましたか?」
「あぁ、国の根幹を揺るがすほどの珍事だとな。」
【国士】創設の裏には未だに根付いている島左近の貴族昇進賛成・反対論であった。賛成派【新興貴族】と反対派【古参貴族】はそれぞれの思惑から互いに腹を探り合い、牽制しあっている。元々、仲が悪かった新興貴族と古参貴族は、島左近の貴族昇進の件も含めて事あるごとに対立していた。この事態に誰よりも頭を痛めたロバートはある決断をした。島左近を事実上の貴族にすることである。【国士】創設を発表した際は、古参・新興問わず誰もが、驚愕した
「陛下、【国士】創設は国家の身分制度を揺るがすほどの大事ですぞ!」
「佐用、これでは貴族の存在があって、ないようなもの!」
「そうです!何のための貴族制度があると言うのです!」
古参・新興問わず、【国士】創設に危機感を抱き始めた。新興貴族は島左近を自分たちの旗頭(お飾り)として貴族に昇進させようと動いていたが、【国士】創設によって、それが潰されたのである。古参貴族にとってはこれ以上、成り上がり貴族が増加を防ぎ、島左近の昇進を阻止しようと躍起になっていたが此度の【国士】創設によって貴族制度の根幹から揺るがしかねないほどの衝撃を与えたのだ。騒然とする貴族たちの中で1人の貴族がらロバートの前に現れた。古参貴族の古株であり、亡き王妃の実父であり、ロバートにとっては義理の父であり、白髭の老親士であるオルサン・ウォルゲン前侯爵がロバートの前に参上した
「畏れながら陛下、【国士】とは如何なるものなのか、お教えいただきとうございます。」
「うむ、【国士】とはシュバルツ王国に多大な功績をあげた者に送る称号の事だ。」
「先にお作りあそばされた【準男爵】とはどう違うのでしょうか?」
「【準男爵】は功績のあった平民に送られる称号、【国士】は【準男爵】の上位互換とも言える称号だ。」
「では改めてお尋ねいたします、【国士】の身分は貴族なのでしょうか、それとも平民でしょうか?」
「いや、貴族でもなければ平民でもない、ただ貴族と同格の処遇を受けることができる。」
「【国士】は六爵【公爵・侯爵・辺境伯・伯爵・子爵・男爵】のどの位置に相成りますか?」
「領地の広さで決まる。」
「腑に落ちませぬな、それだったら貴族の方が良いのでは?」
「では聞くが侯爵、今の貴族制度はどう思う。」
「どうと、仰いますと?」
「我が国だけではなく他国でも貴族の不祥事が相次いでいる。以前からある献金制度によって貴族になる者たちの中には悪政によって領民を苦しめ、品行が悪きものが続出している事はそなたも知っておろう。」
「はい、誠に由由しき事にて・・・・」
ロバートとオルサンの問答を聞いていた新興貴族たちは顔を真っ赤にし黙り込む一方、古参の貴族たちはふんと鼻で笑っていた
「一方、古参の貴族の中には身分に胡坐をかいて、我が物顔でいる者もいる、それも由由しきことだ。」
「・・・・左様でございますな。」
オルサンを始め、古参の貴族たちは次々と罰の悪そうな顔をしながら黙り込み、それを見た新興貴族たちは嘲笑を浮かべた。それらの様子を玉座で眺めていたロバートは呆れつつも貴族たちの前で堂々と宣言をした
「そこでワシは一石を投じることにした。【国士】創設はシュバルツ王国に蔓延する国病を治す一種の良薬だ。いわば再び我が国はもう一度原点に立ち返る良い機会じゃ。皆の者、ワシを信じ、共に王国の発展に力を尽くしてくれ!」
「「「「「ははっ!」」」」」
【国士】創設は果たして吉と出るか、凶と出るか、一種の賭けに出たロバートの行く末は以下に・・・・
※【国士】は私が考えたオリジナルの称号です。モデルは日本の官位の【従一位准大臣(儀同三司)】、または権大納言、権中納言、近衛権大将・中将・少将が元に作成しました。名前は本来の国士(国家のために人命を投げうって尽くす人、その国で特に優れた人物)からも取っています




