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167話:ベーカリー【2】

ここは【ガルバ町】のとある宿にベーカリー・ゴーンズという野獣がおった


「誰が野獣だ!」


「どうかしましたか?」


「何でもない。」


ベーカリーは昨日のうちから部屋を大掃除し、ベーカリーなりに整理整頓した結果、あっという間に部屋中が綺麗になり、普段から汚部屋を見慣れていた宿の住人たちは目を見張るほどである。ベーカリーにとって異性を部屋にあげるのは今回が初めてであり、心臓がバクバクしていた


「ベーカリーさんの部屋なんて初めてですが、意外と綺麗にしているんですね。」


「あははは・・・・」


「ところでベーカリーさん、少し汗臭いですよ。」


「そ、そうか。それじゃあ、シャワー浴びてくるわ!」


ベーカリーはそういってシャワーを浴び始めると同時に羞恥心にかられた。せっかくアリエルを迎える準備をしたというのに、自分の汗臭さにうんざりしていた


「(くっ、せっかく頑張ったのに!)」


ベーカリーはシャワーを浴び終え、濡れた体をタオルで拭き取り、着替えを済ませた。鏡を見て身嗜みを整えた後、アリエルの下へ向かった


「すまん、遅くなってしまって・・・・アリエル。」


部屋を見渡すがアリエルの姿形がなく、部屋中をくまなく探したが影一つもなかった


「もしかして俺に気を使って外に出たか。」


扉を開けたが、アリエルの姿がなかった。ベースの頭の中によぎったのは、アリエルが家に帰ったという考えだった


「くっ!俺とした事が下手こいた!(ぐぅ~)・・・・飯にしよう。」


ベーカリーは自身の汗臭さに後悔しつつも、腹の虫が鳴ったので、何か食べに行こうと金を出そうと机の引き出しを開けたら・・・・


「ない。」


ベーカリーは全ての引き出しを開け、確かめたが金が1エンとなかった。部屋中を探し回ったが、どこにもなく、財布の中も調べたが、1エンもなかった


「一体誰が・・・・アリエル!」


この部屋にいたのはベーカリーとアリエルだけ、ベーカリーがシャワーを浴びている間にアリエルが部屋を物色し、金目の物を奪った可能性が高い


「あのアマアアアア!」


アリエルに騙され、金目を盗まれたと気付いたベーカリーの雄叫びは挙げたが、誰も聞いておらず虚しく響くのみであった





「ふふふ、大量、大量♪」


一方、アリエルは金目の物を物色したが、見つけたのは金貨5枚「日本円で5万円」、銀貨20枚「日本円で2万円」、銅貨50枚「日本円で5000円」を収穫した


「ふふふ、男って本当に単純よね、しおらしくすれば、簡単に引っ掛かってくれるから♪」


そう、アリエルの正体は恋愛詐欺師であり、自身の美貌を使って、女に不慣れな男たちをたらしこみ、金銭を巻き上げていたのである


「あの時は危なかったけど、あの野獣が助けてくれたおかげで助かったわ。」


アリエルは被害者たちに追い詰められていたところを何も知らないベーカリーが助けてくれたおかげで危うく難を逃れる事ができた


「そろそろ、ここも危ないわね、見つかったら面倒だし。」


アリエルはその場を去ろうとした。長居は無用と思い、金を持って【ガルバ町】から脱出しようとしたら・・・・


「とうとう見つけたぞ。詐欺師アリエル!」


「け、警備隊!」


アリエルは目の前に警備隊が現れた事に驚き、何とか逃げようとしたが、既に警備隊が包囲しており、その場で腰を抜かし、現行犯で逮捕となったのである。アリエルを追いかけて来たベーカリーはその姿を見て、何も言えず黙って見送る他なかった


「俺って・・・女運がなかった・・・・ははは。」


その様子を眺めていた【お庭方】はそのまま姿を消し、主の下へ報告をするのであった






島左近清興だ、【お庭方】から報告でベーカリーに近付いた女子は男を垂らしこみ金品を巻き上げるコソ泥と判明した。ワシ自身としてはベーカリーが哀れでならなかった。あやつにとってはようやく席に春が来たと思ったら、それはまやかしであったが。報告を共に聞いていた与一は珍しく苛立ちを見せていた


「何とも、もどかしい気分ですな。」


「あぁ、ワシも同じだ。」


ベーカリーとは腐れ縁的なところはあったが、悪い奴ではなく憎めないところもあって、ワシも与一も何だかんだ付き合いが長く続いた。今回の件でベーカリーに同情するところもあった。すると与一は恐る恐るワシにベーカリーについて聞いてきた


「左近様、如何いたしますか、ベーカリーの事。」


「・・・・放っておけ。」


「さ、されど!」


「今の奴に励ましの言葉はかえって傷付ける可能性がある、あやつは繊細だからな。」


ワシとしても励ましてやりたいのは山々であるが、此度ばかりはワシらは何もしない方向で進めようと思っている。親切心でよかれと思ってやったことが、相手にとっては余計な御世話になってしまう。歳を重ねても、人の心というものは、分からぬものよ・・・・


「ベーカリーよ、後はそなた次第ぞ。」


その頃、ベーカリーはというと、自身の女運のなさに自虐していると・・・・


「何やってんのよ、黄昏ちゃって。」


「うん、ロゼットか。」


ベーカリーの下に現れたのは、ロゼットだった


「俺にもやっと春が来たと思ったらこの有り様だ。」


「そう、残念だったわね。」


「・・・・俺さ、1人で生きていこうと思うんだ。」


「・・・・そう。旦那に女ができたって噂を聞いたときはどんな娘が興味があったわ。」


「そうか。」


「旦那、今日は空いてる?」


「なんで、そんなことを聞くんだ?」


ロゼットは「はぁ~」と溜め息をつき、ベーカリーの正面に移動して、顔を向けた


「本当に鈍いわね、私が旦那を慰めてあげるって言っての。」


「いいよ、そんな気遣いは・・・・」


「今の旦那を見てると放っておけないのよ。少しは私の顔を立てなさいよ!」


「・・・・ロゼット。」


「ほら、行くよ。」


ロゼットはベーカリーの腕を掴み、そのまま娼館【イザナミ】へと連れていこうとした


「お、おい。」


「ほら、モタモタしない!」


「ちょっ、ロゼット!」


「男ならドンと構えてなさい!」


ロゼットに連れられ、ベーカリーはそのまま娼館【イザナミ】へと向かう二人を偶然見かけたサマノスケはマジマジとその様子を見ていた


「これは明日は雨でも降るんじゃないか。」


それから数日後、ベーカリーは何食わぬ顔で島左近の屋敷に訪れた、それは上機嫌で・・・・


「いやあ、ご機嫌麗しゅう。」


「・・・・何しにきた。」


「相変わらずつれねえな♪」


「随分とご機嫌だな。」


「分かるか♪実はな、ロゼットといい仲になったんだ♪」


「ほお~。」


「やっぱり俺にはロゼットしかいねえんだ、あの女狐と結ばれなくて良かったよ♪」


「はいはい(相変わらずだな・・・・)」


延々と続くロゼットとの惚気話を聞かされた島左近はうんざりしつつも、元気になってよかったと内心、思うのであった




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