表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は神様と共に  作者: 腹巻
10/42

勇者、間に合う

王都での式典も終わり、クリス達は馬車でアヤト国へ向かっていた。

前回使用したラプトル馬車は借物であったが、通常は軍馬スレイプニルの馬車を使用している。

速度はラプトルには敵わないが、力が強く大きめな馬車を引くことが出来る。

スレイプニルとは言っても足が8本あったりはしないのだが。


「アニエス、アルからの連絡はあったのか?」

「ああ。古い伝承を知ると言う、森の民を探しに魔の森に行くらしい。」

「魔の森に!?」

千年前の戦いに敗れ、森に消えたと言う魔族の一部は、森の民と呼ばれ今も魔の森のどこかで暮らして居ると言う。

「アルの能力は知っているが、魔の森には未だに知られていない強力な魔物がいる、大丈夫なのか?」

「案内役の森の民と繋ぎを取ったらしい。」

森をよく知る森の民なら大丈夫だろう、その言葉に少し安心する。


今回調べて判った事だが、王城の書庫には千年以上昔の資料は存在しなかった。

建国より千五百年の歴史を持つミルドレイク王国に建国当時の書物が全く無いのはおかしい。

戦乱の最中に消失したとも考えられるが。

当時の書物は木簡やパピルス(植物を加工した紙)に書かれていたが、今書庫にあるものはすべて羊皮紙か上質紙に変わっている。

今ある歴史書等は、比較的に新しく書かれた物だ。

魔王誕生以前の資料はどこにも無かった。

何者かが知られたくない歴史を消してしまったのだろうか。


思考は魔王城での儀式に移る。

勇者召喚の術を魔王に渡したのは誰なのか?

古の祭壇に封印されていたものとは?


魔王ランカイについても詳しく分かっていない。

ア国で起こったクーデターから魔王軍蜂起までに何が起こったのか。

ランカイはある日突然、魔王に覚醒して力を得たと言う。

クーデターには帝国の商人が関わっていたと言う証言がある。

この商人とは誰なのかもいまだ判明していない。


魔王の残した最期の言葉、どんな意味なのか、ハルが世界を滅ぼすとでも言うのか。

ここで考えても答えが出ないことは分かっているが、最悪の事態を考えてると焦りが出てしまう。




◇  ◇  ◇




クリス達の乗る馬車は順調に進む。

国境の街「フラーノ」まで後2日というところ。


街道を塞ぐ様に停められた2台の馬車が見えた。

「何だ?あれは。」

御者席に座るラグナがすぐ事態を察した。

「山賊だ!定期便が襲われてるぞ!!」


クリスはすぐに武器を掴んで飛び出す。

前をいくラグナを追い抜き、山賊の集団へ飛び込んだ。


突然の襲撃で混乱する山賊たちは、クリスを見ると慌てて剣を振り回す。

だが勇者に普通の攻撃が当たる筈もなく、近くの仲間を斬る事になる。

密集しているが故の事故だが、山賊たちにはどうする事も出来ない。

クリスが剣を振るうたびに、数人が倒されていく。


馬車の護衛と斬り合っていた頭目が、新たな敵に気付いて誰何した。

「てめぇらは誰だ?」

50人程いた山賊は、すでに5人も残っていなかった。

恐るべき速さで部下を倒していくクリスを見て、大声で撤退の指示を叫んだ。

たが時すでに遅かった。次の瞬間、ラグナの大斧によって、頭目の意識は刈られた。



「すまない。助かったよ。本当にありがとう。」

山賊の頭目とやりあっていた護衛は、いくつも傷はあるものの命には別状なさそうだ。

彼は組合で何度か話をしたこともある程度には顔見知りだった。

「ああ、間に合ってよかった。それより状況を聞かせてくれないか。」

乗合馬車が賊に襲われるなど、あまり聞かない話だ。

普通、定期に運行する乗合馬車は、庶民の足として利用されているが、情報伝達手段としての役割もあり、保安上、高価な物や大金を積むことは禁じられている。


そして乗合馬車を襲う行為は重罪で処刑確定、王国とアヤト国の2カ国と自由組合から追われる事になる。

山賊や盗賊が襲うには割りに合わないのだ。


護衛と乗客の話と、頭目から聞き出した話を合わせると、今回の件は商会の使用人が、山賊と組んで襲わせたという事が判った。

想定外にも馬車が故障した為、予定の時間に間に合わず御者を買収して、荷を載せ替え乗合馬車を襲わせたらしい。


ここから一番近くの街”ニアス”にはアニエスが向かい、兵士が到着したのは夕方になってからだった。


森の中へ逃げていた乗客の捜索は、日が傾くまで続けられ、3人が戻ったものの、 組合員の男性と、共にいる5歳位の女の子の2人の行方は判らなかった。

首謀者とされる使用人の男はそのまま逃走したらしい。


クリス達が行方不明のこの男性がハルであったと知るのは、”ニアス”の組合支部に着いてからであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ