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The broken brains is  作者: masaya
一章 精神崩壊
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シクリアシト

【ねぇ・・・人に死ノ宣告をするってどんな気持ち?】

・・・

・・・

・・・

「・・・せんせ?」

「・・・先生?」

「江戸木先生!!」

声がする方へと視線を向けると何年も医療機関に従事して来たであろう年輩の看護師でもある女性が呆れたような表情をしつつカルテを机の上へと置きため息を漏らす。年齢が親子ほど離れているせいか先生と付けて呼んでくれているが手のかかる息子のように良く世話をしてくれている。

「江里さん。すみません。ちょっと気になることがあって雲を見てました」

「はぁ・・・だからいつも患者のみなさんに雲先生なんて変なあだ名が付けられるんですよ」

「ははっ。愛嬌があっていいじゃないですか。先生、先生なんて言われますけど僕だってそこまで偉いものじゃあないですよ」

「先生はいつもそうやって笑ってるから若い子たちにも舐められるんですよっ!もう少しシャッキとしてくれないと・・・私の気苦労も考えてほしいですよ。まったく!」

頭から湯気でも出ているのではないだろうか?と、疑問が出てくるほど今日の江里さんの虫の居所は悪いらしい。触る神にたたりなし。その言葉が出てくると、すみません。と、謝罪の言葉を去っていってしまった彼女に向けると視線をカルテでは無くまた、青空へと向ける。ゆらゆらと気持ちよさそうに風が吹くままに流され続ける雲は羨ましい。一日中気持ちよさそうに空を遊泳している姿は幸せそのものではないだろうか。気持ちだけでも雲へと向けようとした瞬間、ガチャリ。と、ドアが開く音が耳へと入ってくる。時間を見るとまだ、午後の診察時間には早い。外来患者では無いことは分かる。と、言うよりも誰が勝手に診察室へ入って来たのかは見当がついていた。視線を後ろへと向けることなく机の引き出しを開ける。と、そこにはお得パックと言う売り文句が書いてあるお菓子が広がっていた。子供からすればこの引き出しはきっと宝石よりもキラキラと輝いているに違いない。そこから一つランダムに掴み机の上へと置き椅子を回転させ気が付いていないと勘違いしている侵入者へと視線を向ける。

「!?」

本人は今の今まで侵入したことを気がつかれていないと思っていたのか、体ごとこちらへと向けられたことに驚き体が固まりその場へ立ち止まってしまう。その姿に笑みがこぼれてしまう。机の上に置いたお菓子を手に取り目の前の少女へと手渡す。お菓子を見た瞬間に驚愕してしまい凝り固まってしまった体が動きだし頭を下げ嬉しそうにお菓子を手に取ると近くにあった椅子へと腰掛け子袋を開けチョコレートバーを食べ始める。

「今日もおやつを食べ来たの?」

優しい口調で言葉を向けると嬉しそうにお菓子をちまちま食べていた少女が何かを思いだしたかのようにポケットから手のひらサイズにまで何度も折りたたまれた画用紙を手渡してくる。

「僕に?」

少女は笑顔で頷きお菓子を食べつつこちらへと近づいてくると膝辺りに身を任せてくるなり、早く開いて見てみて。と、言わんばかりに人差し指を画用紙へ指す。一体なんの絵が描かれているのだろうか?

「よし。せっかく何か絵を描いてきてくれたんだから見させてもらいましょうか」

彼の言葉が嬉しかったのか少女も嬉しそうに両手を彼の膝に置き何度も跳ね始める。あまりにも嬉しそうにするものだからつい、彼も自然と笑みがこぼれてしまう。

「・・・これって・・・」

絵を見た瞬間に彼は戸惑いを隠せずにいた。そこに描かれていたのはどこかの病室だろうか?五つの椅子があり各自その場所には人のような何かが両手を組み座っている姿が描かれている。そしてその横には一つずつ生体情報モニタのようなものも描かれている。よく見てみるとある異変に気がつく。

「部屋に窓・・・が、ない?」

よく見てみると椅子に座っている人間の頭にもなにやら被らされているようにも見えなくはない。医療機関のやむを得ない場合は除くが閉鎖的な空間を作ってしまうため窓を設置するのは当たり前のことである。絵をよくよく見るとあまりにも異質な状況下に置かれている場面な気がしてならなかった。

「・・・う?」

裾を引っ張られるような感覚があり視線を向けると先ほどまで楽しそうにしていた少女が不安そうな表情へと変わりこちらを見てきていた。自然と彼の表情は曇っていたため不安になったのだろう。彼はすぐに笑みを向け頭を撫でると少女も安心したのか笑みを返してくる。それにしてもこの絵はどこの場面を視て描いたのだろうか?

「これってさ?どこの辺りを視て描いたの?」

彼はまだゆっくりとお菓子を食べている少女に自然と質問をしていた。彼女が描く絵の事について質問をして返答が返ってくるのは彼だけであった。と、言うよりも彼女が心を開いているのは彼だけしかいない。

「・・・あ」

彼の疑問に対して少女は手を動かし始める。少女は一種の失声症を患っているため上手く会話をすることができない。そのため彼女は彼から教わった手話を使い会話をする。声帯等に疾病は無く精神的なものであるため時間をかけていくしかない。周りは何かトレーニング等をして回復に向かいリハビリをするべきだと言っている。が、彼は周りとは違い少女が話しだしたい時に話せるようになればいい。そう思っていた。外傷では無く内傷。それも心となれば急かしは禁物だ。医療関係に従事している者ならば分かりそうなものだが、少女が喋り出す事を外部の人間が急かすため彼を除いた大人たちは急かし言葉を話せるようにしようとしている。それもあってか彼女は心を閉ざし彼にしか笑みを見せなくなった。まるで人形のようで気持ち悪い。彼女は陰でそう言われている。いい大人が陰で子供の悪口を言うなんて世も末だろう。

「なるほど・・・それで目が覚めたらその絵が頭の中にあって描いてみたってことだね?」

「・・・あう」

彼の言葉に少女は嬉しそうに微笑み大きくなずく。何かを考えるように彼は彼女が告げた言葉をメモしある場所へと電話をかける。少女には千里眼らしき能力がある。彼女には夢の中で誰かしらの思考が無意識に入ってくる。それもある一定の思考のみである。やっと小さな子袋のお菓子を平らげたのか満足そうに先ほど座っていた椅子に座り退屈そうにグルグルと椅子を回転させメモを書き終わるのを待っていた。それに気がつくともう一度引きだしを開けもう一つ同じお菓子を差し出す。

「もう少しかかりそうだからこれ食べててね」

彼の言葉に頷きお菓子を手に取るとゆっくりと袋を開け食べ始める。

「すぅ・・・ふぅ・・・」

書いたメモを読み返していると自然とため息が出てしまう。この時代にこの様なことが起こるものなのか?しかし、彼女の受信した電波(しこう)に嘘は無い。

「と、言うことは・・・研究所でなにやら人体実験でも行われてるのか?しかし、この時代に人体実験なんて・・・よっし」

何かを思いついたのかおもむろに机の上に置いてあった受話器を取りある人物へと電話をかける。

「もしもし?江戸木か?どうした?」

相変わらずいつ電話してもワンコールで彼は電話を出る。一体いつ寝ているんだ?と聞いたことがある。すると鼻で笑い。俺の課で熟睡できる日なんてないよ。あの事件を解決するまではな。と言われた事を思い出す。

「もしもし?どうした?お前の事だから単に雑談でもしようと思って電話してきた訳じゃないだろう?今忙しくてな。用件があるなら早く言ってほしいんだけどな」

「あ、ご、ごめん。ちょっと気になることがあってさ」

「気になること?どうしたんだ?・・・あ。言っとくがな!うちの情報は渡せないぞ?守秘義務ってやつだ」

「知ってるよ。最近、人体実験で立件した事件ってある?」

「・・・どうした?急にそんなこと」

先ほどの急かすような口調ではなく何かを探るような声色へと変わる。明らかに何かを知っているような雰囲気に守秘義務もあったもんじゃない。なんて思ってしまい笑いそうになってしまう。すると、江戸木の言葉を待たず電話の相手は言葉を続けてくる。

「あの子が何かを視たのか?」

「んぁ。絵を書いてくれてさ。それでちょっと異様だったからどう言う映像を視て描いたか聞いてみたんだ。そしたら赤い羽根が見えたって言うんだよ」

「赤い羽根?」

「そう。そして全員、僕と同じような白衣を着ていたらしい」

「お、おい。まさか・・・」

「確定じゃあないんだ。けど白衣、赤い羽根、そして絵にはなにやら見ようによっては人体実験されている絵にも見えるんだよね」

「ちょ、ちょっと待ってろ!今からそっちに向かうから」

「良いけど、絶対に秋冬ちゃんにはでかい声出さないでよ。出したらいくら君でも僕が許さないから」

「分かってる。じゃあ、今から三十分後に」

電話は切れ受話器を戻し幸せそうな表情を浮かべながらお菓子を食べている少女へと視線を向ける。

「今からちょっとしたお客さんが来ることになったんだ。どうする?向こうの部屋でテレビでも見て待ってる?」

少女は少し悩み視線を落とすがパッと明るい笑みを向け椅子に向け指を指しこのままここに座っていると告げ止まっていた手を動かしお菓子を食べ始める。

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