Blutvergießen
私には何もする事ができない。どうしても世界を救うことができない。それでも、手の届く世界ぐらいだったら救えると思っていた。世界だと思っていた世界は小さな世界でありそれは世界の一割にも満たない。
「だから?そう言われても子供は学校が全てなんだ。それが全てでありそれが世界なんだ。だから、辛い事があるだろう?それが絶望なんだ。大人たちは言う。それだけが人生では無い。とね」
知らない世界の事を言ったところで誰にも伝わらない。心の中にも響かない。だったら私がやってきた事は一体何だったんだろう?ただ、正論ばかりを言い行動に移していた?きっと何かしらのサインを送って来てくれていたはず。彼はそれを受け取り命を引き換えに子供たちを逃がした。私は一体子供たちに何をしてやった?
「そもそもアンタは【してやった】って言ってる時点で僕たちの事を考えていないんだ。たかだか数十年先に世界に命を受けただけで偉そうにしている?年月は知識?僕達にはそのような概念はない。そして、能力がない奴に限ってプライドだけ高く他者を認めることなく日々を過ごしている。そう言う奴に限って命の危機になると馬鹿にしていた他者に助けを求め死ニ体となって逝く。僕たちはそんな死ニ体を幾度となく踏みつけてきた」
それでも、そんな大人たちが全てでは無い。表に出てくる人間が黒いだけ。陰で日夜世界の為に動いている人間だってごまんといる。悪は目につきやすいが善は目につきにくい。それだけは分かってほしい。貴方達が飲んでいる薬品だって大人たちが必死に自分たちの時間を削って作ったものなのよ?当たり前にある物にも大人たちの犠牲があるの。それを見ずに貴方は全てを否定しようとしている。
「当たり前?なにを馬鹿なことを言っているんだ?当たり前なんてこの世界には無い事ぐらい知っている。それに犠牲で成り立っている世界も知っている。それでも、そんな事を知ったところで僕たちには関係がない。関係が無いし僕たちを苦しめ続けた大人に言われる筋合いもない。唯一この研究所で僕たちに上から言葉を投げかけてもいいのは隆二お兄ちゃんだけだ。あとの大人はダメだ。生きてるだけでも虫唾が走る」
それでも大人たちでも子供には世界を知ってほしい。大人になると言うことは犠牲を多く払うと言うことも分かっている。未来を育てる義務もある。こうして周りの大人の犠牲があったからこそ自分も大人になれているのだから。だからこそ世界は見えている世界だけでは無いと言うことを伝えなければならない。私はまだ死ねない。シ者としてまだ死ねない。死ねない。死ねない。




