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連載版 羽ばたいていく、あなたへ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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7/7

アルティディアの幸せ

 ディアの子が生まれたわ。

 巷で流行りの双眼鏡で、ポプラの木に作られた巣を覗くと、3匹の雛がピィ、ピィと鳴いている。

 大鷲の雛は、生まれたばかりの時は純白で、その後灰色に変化し、巣立つ前に黒褐色に変化する。

 大きさも体重は100~160gで、約2ヶ月半の巣立ちの際は4kg以上になると言う。


 生まれた時から見守るわたし(アルティディア)は、雛が気になって仕方がない。



 侯爵家のポプラでなくても、ちゃんと器用に巣を作るところから見ていた。勿論仕事を終えてから、遠くからになるけれど。


 ディアは雛の時からの付き合いだから、わたしとサムタン爺にだけは慣れているが、基本的に野生の大鷲は人間を警戒し近付くことはない。


 ディアの旦那様も同じで、人間に心を許してはいない。勿論わたしにも。けれど大鷲は生涯一夫一婦制で、ディアにとって旦那様は子育てを頑張る素敵なイクメンだ。

 

 毎年繁殖期に子育てを行う姿は、見ていても微笑ましくなる。

 人間の臭いが付かないようにする為、わたしとは少し距離が出来たディアだが、時々上空を飛んだり枝に止まり声をかけてくれている。ディアが元気だと嬉しくなり、わたしも元気が出るのだ。



 わたしもここに来て、すっかり令嬢言葉から市井言葉が板についたでしょ? 時々混ざっておかしな言葉の時もあるけど、それは見ない振りでお願いね。恥ずかしいから。




 そんなわたしにも、運命の出会いがあった。辺境地である為に兵士や冒険者が多いのだが、わたしが好きだと思ったのは、優しい風情の防具職人だった。

 魔獣や敵の兵から身を守る防具は、とても貴重な仕事だ。



 わたしが辺境に渡った時に就いたのは、服飾を主とする仕事だった。だからと言って服を作ることまでは出来ず、刺繍やレース等の貴族令嬢としての手習いの範囲だった。


 元侯爵令嬢で、辺境伯であるキャナル様の姪であることは隠したまま、キャナル様はわたしの身元を保証してくれたから無事に職に付けた。


 辺境にはいろいろな人が集うから、紹介がなければ普通はすぐに仕事は得られない。いくら魔獣素材を扱う商会を作る助力をしたからと言っても、それは自分の為でもあったのだから。

 事情があったとはいえ、侯爵家を捨ててここに来たわたしだから、閉鎖的な場所で暮らす覚悟はしていた。一度や二度は、冷たく断られると思い。


 けれどキャナル様は、「この子の両親には返せぬ恩があった。だがその前に彼らは亡くなり、この子は天涯孤独になってしまった。問題があれば俺が責任を取るから、よろしく頼むよ」と、嘘が下手なのにそう言って頭を下げてくれたのだ。

 遠い昔に辺境で資金不足の際、侯爵家から援助をしたことがあると聞いたことはあったから、完全に嘘ではないかもしれない。けれどその援助金はとうに返却されており、貸し借りはないはずだった。


(返せない恩なんて……。キャナル様、ありがとうございます)


 わたしはディア、サムタン爺、そしてキャナル様と言う、信じられる味方を得たのだ。


 その後服飾の仕事でお世話になる、60代で未亡人のナリーさんと30代の離婚歴のあるサッチーさんも優しかった。


「まずは暮らしに慣れなさいな。私がここに来た時はぼろぼろだったから、2か月くらいベッドの上だったの。ふふっ、酷いでしょ。貴女だってまだ、親を亡くして辛いわよね。でも安心しなさい。今度は私が受けた恩を貴女に返す番だから!」


 サッチーさんがそう言うと、ナリーさんも頷いていた。

「そうさ、ゆっくりしなさい。最近仕事も増えたし、売値も上がったから前より裕福なのよ。私から見りゃ、孫のような年だもの。しばらく環境に慣れるまで、働かなくても大丈夫だからね。チビなあんたくらい、養ってあげるよ」



 ナリーさんは魔獣討伐で旦那様を亡くして、その後は独身を通している。白髪が多いけれど髪を綺麗に編み込んでいる、とても素敵なお婆様だ。

 サッチーさんは元貴族夫人だったけれど、夫とその愛人に家を追い出されたそうだ。儚い感じで泣きほくろが似合う、可憐な令嬢の風情だ。まだまだ20代前半くらに見えた。


 追い出される際に、家の金を盗んだ濡れ衣を着せられ、馬車に押し込められて辺境で放り出されたと言う。その夫からは「警察に突き出されないだけ、ありがたいと思え」と、捨て台詞まで浴びせられたそう。

 サッチーさんとしては、警察に調査して貰い無実を証明したかったそうだが、それをさせないように私兵に連れ出させたのだろうと呆れていた。


「今は追い出されて幸せだったと思ってるわ。さんざん働かされて、全部利益は愛人に使われていたのだもの。でも……あのアホどもに領地経営なんて無理だし、今頃実権は他の人に移っているでしょうね。本当、情けないわ。フフフッ」


 そんな風に寂しく微笑むサッチーさんだが、辺境で降ろされた場所は夜間で、魔獣が多い場所だったらしい。生かす気はなかったのだろう。

 そこで巡回中のキャナル様に会い、助けられたそう。森のあちこちから、魔獣や猛獣の啼き声がして、「あ、ここで死ぬんだな」と思い震えたそう。その後に助かった時には、もう何も怖いことはなくなったんだとか。恐怖心を限界突破したのね。


 ちなみに生家である子爵家では、実母がいきなり離縁されてその後別の方と再婚し、実父は後妻と彼女と同じ年の異母弟と暮らしているから、頼るなんて考えなかったそう。いろいろ底意地の悪いこともされたのだって。

 それに彼女は、隣国の元伯爵夫人だと言うから驚きだわ。彼女は嫁がされて伯爵夫人になったと言うけれど、本来は子である彼女の血筋が子爵家には必要だったらしいの。


 彼女の父親を含め、前子爵である彼女の父方の祖父母達も、彼女の母親の生家である男爵家との(商売上での)事業提携の為の政略結婚だったことを忘れていたのかしら?


 人質のように婚姻を結ばされた男爵家は、最悪の形で娘と孫を解放された形だ。元々爵位を返上したかった彼らは、事業を売却して隣国からこの国に移り住んでいたの。子爵家が無理矢理してきた借用書も、借金の請け負い業者に売却したらしいわ。

 彼らは身分が下である男爵の言うことを聞かず、「親族なのに金に汚いぞ。守銭奴が!」と罵ることしかなかったそう。もう顔も見たくないから、受け取り分半額の大セール価格で売ったのだって。


 その後の子爵家のことは知らないけれど、隣国の何件かの貴族が借金で爵位を返したと、キャナル様が楽しそうに教えてくれたと笑うのよ。

(まあ、それって。やっぱり、そう言うことよね!)


 辺境にはサッチーさんの他にも、訳あり移住者がたくさんいるそう。その中には辺境伯を探る他国のスパイが、兵の数とか川や橋の場所を手紙に書いて、外部に流そうとしていた者もいみたい。気付かれないように、検閲が入っているみたいね。特殊な魔法だとか聞いたわ。

 国境を守るキャナル様を狙った暗殺者も、一度や二度じゃないとか。武術の達人達は殺気でいろいろ分かるので、近距離なら最強らしいわ。

 国境を守る辺境伯がいるから、王都も安全なのだと再確認する話ね。


 だからこそ、ある一定期間をみんなの目で見定める、お試し期間があるのだと言う。その代わり一度信用されたら結束は固く、仲間意識が強くなるらしいの。


 あ、後は、ここの住人は感覚鋭い猛者しかいないので、怪しい人は女性も子供もすぐ分かるようになるみたいよ。きっとわたしも、そのうちに!


 例の暗殺者は、タイマンでキャナル様がボロボロにした後「どうせ戻っても殺されるくらいなら、ここで雇ってくれ」と、土下座してここで住み着いた。

 現在の騎士団副団長が、そのラルフさんなんだって。18歳でここに来て、今は42歳で妻子持ちの美丈夫。貴族の庶子で、その貴族に暗殺団に売られたらしいわ。本当に碌な貴族がいないと落胆する話よね。




◇◇◇

 恥ずかしいけれど、話は戻るわね。

 防具職人と服飾職人の職人仲間として、わたしはケント・デリンジャーさんと出会ったの。

 商家が並ぶ場所は密集しているし、工房が隣だったから、顔を合わせることも多かったわ。



 彼は10代の時にここに辿り着き、今は30代。銀の髪がさらさらで紫の瞳と、体の線が細い優しい面差しの人だった。

 元々住んでいたのは北にある王族で、王弟の嫡男だったのですって。


 彼は国王の側室に気に入られ、側妃を愛する国王の命令で、夜伽(共寝)を命じられたのですって。いくら美人で胸もボインボインとは言え、30代の子も産んだ女性の性の捌け口にされようとしたの。王弟は気弱な方で国王である兄に逆らえず、ケントにも夜伽を命じたのですって。まだ15歳の子供によ。


 彼は誰にも助けを求められず、命令に従おうとしたけど、従兄弟(側妃の子)がちらついて逃げ出したそうなの。

「絶対、無理だーーーーー!!!」



 追いかけてくる追っ手の兵に、魔法を繰り出した。それでも感覚を研ぎ澄ませて建物だけを狙ったらしいの。

 彼は氷結魔法の名手だったけど、いろいろコントロールできなくなって、思いきり魔法を展開したら城が半壊したのだって。でも手応えで人には当たってないようだったそう。それでも間接的な軽い凍傷くらいは、もしかしたらあったかもしれないって。


 その後はもう、「やべえ、絶対死刑だ!」って感じで逃げて逃げて、乗り物を乗り継いでここに辿り着いたの。


 彼は夜伽が心底嫌だったけど、彼の乳兄弟的な護衛でさえ「命令なんだから、楽しめば良いじゃないですか」とか言ってくるから、誰も信じられなくなったそうよ。

 アルコール度数が高くて、冬は酔っぱらいが多いあの地域では、こんなことは珍しくないんですって。勿論市井には内緒で、王族の嗜みみたいな秘密だそうだけど。

 けれど普通は家臣に頼むことはあっても、兄弟の子にはなかったみたい。その時のケントさんは天使みたいに儚くて、美しかったそうよ。結構ルーズな民族性だったみたいだけど、彼は違ったの。

 そこでは14歳が結婚も許される成人だから、ケントさんも成人ではあったのよ。




 だいぶん後に(キャナル様が密偵に頼んで)知ったことだけど、彼の他にも魔法を使える者がそこにはたくさんいて、城の半壊はすぐに直ったそう。


「そこまで嫌だったら、言ってよね」って、側妃も反省していたみたい。だから彼は帰っても許されそうだけど、嫌悪感が強いんだって。一度嫌と思うと、誰でもそうだよね。

 襲われかけた時の彼は、そう言う経験もなくて恐怖が勝ったんだって。ちなみに今も……。



 まあそんな彼だから、辺境に来てからは元々学んでいた防具作りにのめり込んで、嫌な記憶を振り払おうとしていたのだって。

 食事もしないで取り組むから、一時は痩せてふらついていたみたい。


 キャナル様は隠密に調査を依頼して、その情報を知った後、彼を狩りに誘ったんだって。彼のいた場所は万年凍土のような場所だけど、ここは逆に南国みたいな場所だから、草や枝に足元や目元がぶつかって移動しづらかったみたい。向こうでは魔獣も単体が多いけど、こちらでは団体で向かって来るから、焦ったそうよ。


 そこで弓を使うより先に、氷結を敵に向けて全滅させたらしいの。暑さに強い魔獣は冷気に弱かったのね。


 そこで騎士団からスカウトの声がかかったのだけど、「自分はただの職人なので。あと統率とか無理ですし、絶対無理ですから」と断ったそうなの。


 キャナル様は仕方ないなと言って承諾したのだけど、ラルフさんは勿体ないです。才能の無駄遣いですと叫んでいたらしいけどね。


 その頃からみんなとたくさん話をして、時々狩りにも(ラルフさんのお願いで無理矢理)同行して、辺境の人達と仲良くなったんだって。トラウマになっていた女性恐怖症も、ナリーさんくらいの年配の女性との会話を積んで(キャナル様主導で)少しずつ馴らしたみたい。今は必要なことなら、普通に会話できるようになったって。



 どうしてわたしが、彼のことをこんなに詳しく知っているかと言うと、キャナル様からのリークがあったからなの。


 キャナル様が言うには「アルティディアの悲惨な過去を話せば、あいつの心も楽になるだろう」と言われて、先に情報を押し付けられた形ね。相手を知らないと、話も出来ないだろと言われて。


 その後キャナル様がセッティングした席(辺境伯家の応接室)で、わたしはケントさんに生い立ちを話したの。伯父様には大恩があるから、断れないものね。


 そうしたらケントさんが「そんな辛い目に……。僕なら絶対君を守る。だから結婚して下さい」って、泣きながら跪いて求婚されてしまったの。


「え、えーー。ちょっと待って下さい。何でいきなりこんなことに?」


 そう言ってからキャナル様を見たら、不敵に笑っていたのよ。

 

 そして……。

「リハビリだと思って、少し付き合ってやってくれ。そいつはずっと、アルティディアが好きだったんだとさ」


 ニコニコしながら、そんなことを言うのだ。

 わたしとしても、ダグラス様とは婚約はしていたけれど、ほぼ交流はないし殺されかけただけだし。同世代の異性は、確かに苦手だけれど、リハビリって何かしら?


 急がし過ぎて、他に同世代の男性と関わりもなかったから、ケントさんからの好意になんて微塵も気付かなかったわ。だけど何よ、こんな騙し討ちみたいの。酷いわよ。


 顔を真っ赤にするわたしは、(ケントさん)と視線も合わせられないのに。

(いくらディアが羨ましくても、唐突に求婚される日が来るなんて。これって夢かしら?)



 挨拶とか世間話なら、今までも普通にしていたけれど、それはみんなと同じだったのよ。彼だけ特別扱いはしたことないのに。


「まあ、考えてやれよ。今日は別々に送ってやるから」


「はい……」とわたしが俯いたまま答えると、(ケントさん)は慌てて謝ってきた。


「ごめんな、アルティディアさん。急にこんなことになって。でも僕はずっと、君の明るさに元気を貰ってたんだ。みんなに優しくて、丁寧で綺麗な刺繍を刺すところも。いつも頑張り屋で、人のことを考えるところも。時々大鷲を見ながら、微笑んでいるところも好きだなって。君の夕焼け色の髪とか、蜂蜜色の瞳とかも温かそうで良いなあって。あ、ごめん、一方的に。でも、気持ちだけは伝えておきたくて。ぼ、僕もこういう告白とか、始めてで……。とにかく今日はありがとう。じゃあ、また」


 ものすごい勢いで話して、彼は去って行った。

 帰りはキャナル様と他に護衛のラルフさんが、わたしの住む寮と言う名の下宿まで送ってくれた。


 ナリーさんとサッチーさんと住む、職員寮兼職場だ。2階が個室の住居スペースになっているの。4畳くらいだけどね。


 そして隣の防具店も、2階は住居スペースだった。ケントさんがいるのだ。


 歩きながらキャナル様が「ケントの好意はバレバレで、気付かないのはお前くらいだぞ。きっと大鷲のディアでさえ、分かってると思うけどなぁ。うちの姪は鈍いなぁ」って言うの。


(ああっ、姪なのは秘密なのに。わたしが偽装で死んだことにしたのが、ばれちゃう)


 なんて思ってたのに、何故かみんなにバレていると言う。


「大丈夫だよ。ここでの話は絶対外に漏れないから、安心して。その為の俺達だから♪」


 一緒に歩いていたラルフさんが、そう言って笑う。

「でもまあ、近しい人の間でのプライバシーは期待しない方が良いかもな。逆に全部バテてると思えば、ある意で気楽だぞ。くくっ」とまた笑う。

 そう言えばわたしも、ラルフさんのことを聞いていたわねと思い返していた。



 もう今さらかぁと諦めつつ、恥ずかしさもぶり返してくる。だって女の子だもん。ケントさんのことが嫌ならすぐに断れるのに、嫌じゃないから困るのだ。


(綺麗な瞳に儚い美形……。あれっ、わたしって面食いだっけ?)

 そんなしょうもないことを考えていた時、キャナル様が言う。


「二人は合うと思うぞ。人間不振なところも、奥手なところもな。余計なことだけど、ケントは胸の大きな女が苦手らしい。あくまでも異性としてな」


(セクハラよ、伯父様! どうせわたしは何にもないわよ。いや、少しは……。ああ、もう恥ずかしい)と、思わず睨んでしまったが、キャナル様はずっと嬉しそうに笑っていた。


 わたしの人間不振は、辺境に来てから全然なくなってしまっていた。周囲の人がみんな家族みたいで、優しいからだと思う。



◇◇◇

 一晩考えて、まずはケントさんと付き合うことにしたの。


「お、おはようございます。昨日のお返事なのですが、今のわたしではいろいろキャパオーバーなので、ゆっくりお話からお願いします」


 朝の挨拶のついでに、声をかけていた。


「!……うん、ありがとう。駄目かと思ってたんだ。あー、良かった。これからよろしくね」

「はい、よろしくお願いします」


 取りあえず握手なのは、わたし達らしいと笑ってしまう。二人で同じタイミングだったのも、また嬉しく思った。



 空には餌を取りに行くディアが、「良かったね」と言っているみたいに『ピィーー♪』と鳴いて旋回していた。


「ありがとうね、ディア。子育て頑張って」


 わたしの声にまた『ピィ、ピィー♪』と鳴いてから、楽しそうに海に向かって行った。




 


◇◇◇

 わたしとケントさんは1年の交際後に結婚することになり、教会にはたくさんの人が集まってくれた。


「ありがとう、アルティディア。ずっと一緒にいてね」

「ええ、ずっと一緒よ。わたしの家族になってくれてありがとう」


 結婚式で誓いの口づけをすると、ディアと巣立った雛達も上空で旋回し、楽しげに輪を作って「ピィーー♪」と鳴いてくれていた。


 キャナル様は「辺境の守り鳥も祝福してるな」と笑い、サムタン爺も「こんな良い日が来るとは。長生きするものです。ぐすっ」と泣いてくれた。


 ナリーさんとサッチーさんは、二人でウエディングドレスを作ってくれて、今日はベールも被せてくれた。ケントさんの白いタキシードまで作ってくれたのよ。


「幸せなるのよ。ケントは良い子だけど、お互いに努力は必要だからね」

「アルティディアは良い子だもの、きっと大丈夫よ。まあ嫌になったら、子供の面倒は見てあげるから、いつでも戻っておいで」

「もう、まだ結婚前なのに。でも、ありがとう」


 二人は本当のお母さんみたいで、抱きついて感謝したのは昨日のことだ。

 サプライズ過ぎるよ。わたしは白いワンピースで良いと思ってたのに。


 今日はみんなと並んで、笑顔で見守ってくれている。ラルフさんと奥さんも「ケントの恋が実ったね。安心したわ」と微笑んでいた。

 彼らの3歳と4歳の子供達が、家で作ってくれた綺麗な紙で巻いた飴を篭に入れて、「みんなにあげる」「幸せのお裾分けでしゅ」と、参加者の手に乗せていく。ラルフ家は15歳を筆頭に6人の子を持つ大家族なのだ。


「子供は良いぞ。お前らの子なら可愛いだろうな。まあ、家の子の次にな♪」

 そんなことを言われて、初夜のことを思い出して赤くなってしまった。悪意のないセクハラ親父が多過ぎる。 


 ケントさんも照れて俯き、「アルティディアに似た女の子が良いな」とか言うから、会場がおおいに賑わうことになった。


「来年が楽しみだな」

「街は賑わってるし、まだまだ人不足だ。大家族、歓迎するぞ」

「元気なら、男女どっちでも可愛いわよ」

「面倒なら見てあげるから、安心してポンポン産みな」

「「「「ワハハ、ウフフッ♪♪♪」」」」


 みんな楽しそうに、新たな家族を望んでくれていた。ここでなら丈夫に育ちそう。心身ともに強くなりそう。


 恥ずかしいけど、大家族も良いなぁと思ってしまった。



 他にも関わった人達がたくさん集まり、祝福の声をかけてくれた。本当に嬉しくて、涙が自然と零れていた。さりげなくハンカチで拭いてくれるケントさんは本当に優しくて、余計に泣けてくるのだった。おろおろするケントさんだけど、とても頼もしく思ってしまう。


「大丈夫かい? どうしたの?」

「嬉しいの。わたしを選んでくれてありがとう」


「僕の方こそ、ありがとう」


 

 滞りなく式が終わり、式場からみんなを送るわたし達。とても温かく良い式になった。



 今日から同じ家で暮らすわたしとケントさんは、手を繋いで夕日が照らす道をゆっくりと歩いて行く。


(本当に家族になるんだなぁ)と、今さらながら実感してきた。





◇◇◇

 辺境の地は商業も発展し、流通が良くなったことで魔獣を狩る冒険者も集まり、旅館も建って賑やかになった。

 キャナル様達の観察や指導で、今日も治安は守られている。


 わたしは服の裁断や作成もできるようになり、辺境の人口が増えたことで大忙しだ。

 ケントさんの方も冒険者からの注文が途切れることはないし、強力な魔法を持っているので臨時でラルフさんに狩りに連れて行かれている。臨時ボーナスが出るのはありがたいことだけど、無理はしないで欲しい。





◇◇◇ 

 ディアは家族ができた。

 子供達とは離れるけれど、隣にはいつも旦那様がいる。さすがに結婚式で飛んでくれなかったけれど、わたしのことは味方認定してくれている……と思って良いよね。たまにディアの隣にいて、こちらを一緒に見てくれているようだから。


 わたしにも家族ができた。

 ディアとサムタン爺とキャナル様に加えて、ケントさんが加わった。ナリーさんとサッチーさんも、勝手に(心の中では)家族認定している。



 私は生家を離れ、ここが故郷になった。


 いつも近くにはいないけれど、羽ばたいているディアを見ると、それだけで元気が出てくる。





 「お父様、お母様。見てますか? わたしは幸せになりましたよ。そしてこれからも、みんなと頑張ります」




 雨も降っていないのに、青空に大きな虹が見えた。それだけで今日も、ハッピーでいられそうです♪








ーーーーーーーー

 一先ずこれで終わりです。

 もし追加するなら、断罪的なやつかもです。


 読んでいただき、ありがとうございました。

(*´∀`*)♪♪♪ みんなハッピーです♪




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