第97話
【視点変更:傍観者】
水無月篝が願いの力で元の時間に戻った頃。
まばゆい光が消え去ったあと、背後に二人の影があった。
「ご苦労さま、廻ちゃん。」
翁の姿が光輝き、廻の姿へ変わる。
「ありがとうございます、花音様。」
「多少強引だったのでは?」
さらに暗闇から訪れた来訪者はフランチェスカ・レーニエ。
「いいのよフランチェスカ。確かに強引だったかもしれないけど、やっぱり娘の苦しむ姿は見ていられないってところかしら。」
「よかったのですか?」
「ええ。」
「私たちはどうしますか?花音。」
「あとはフランチェスカにお願いするわ。」
「もういいのですか?」
「早坂君なら、きっとあの子を守っていってくれるわ。」
「結構手の込んだことをしましたね?」
「すべては空想よ。現実じゃないわ。」
「自分で設定した世界を自分で壊すというのは、人間の世界では茶番と言うんでしたっけ?」
「そうね。茶番が過ぎたわね。秋伸さんには内緒ね。」
「分かっています。」
「廻はどうしますか?」
「廻ちゃんは篝の祈りの力できっと蘇るわ。」
「断言できるのですか?」
「ええ。だって私の娘よ?」
「ふふっ。そうでしたね。」
「廻ちゃん。」
「はい。」
「私のわがままに付き合ってくれてありがとう。あなたも元の生活に戻れるから安心して。」
「ありがとうございます。」
「でも花音、私は元の時間では悪者になっている可能性が高いですよ?」
「そこは私がフォローするわ。フランチェスカは私の悪事を薄める役割なんだから。」
「そうでしたね。」
「また人間に堕ちたら一緒に暮らしましょう?」
「そうなれば悪夢でしかないですね。」
笑いあう花音とフランチェスカ。
「花音はこれからどうしますか?」
「私はこの急展開を迎えてしまった二人を導かなければいけないわ。」
「導く……ですか?」
「ええ。違和感なく元の時間を過ごすために影から調整しようと思うの。」
「どうして花音はこのような壮大なシナリオを考え出したのか、私には理解できません。」
「フランチェスカ。」
「はい。」
「人の考えを100%理解するのは不可能よ。理解できないことはおかしいことじゃない。」
「花音なりの何かがあったということですか?」
「そうよ。」
「でも、今は語らないわ。いつかフランチェスカには話すわ。」
「そうですか……。では、今は深く聞かないでおきます。」
「ありがとう。」
「廻ちゃん、もう休みなさい。ありがとね。」
「はい。失礼します。」
「でも、廻は一度死んだことになっていますが、篝ちゃんは再び現れる廻を受け入れることができるのでしょうか?」
「それは分からないわ。でも、篝なら大丈夫って信じてるわ。」
「花音らしい答えですね。」
「そうでしょ?」
「褒めていません。」
「あら、残念ね。」
「さ、フランチェスカ。深夜だけどちょっとお茶会でもして帰らない?」
「花音の紅茶は大好きです。お言葉に甘えさせていただきますね。」
「それじゃ、行きましょうかフランチェスカ。」
「はい。花音さん。」
二人は屋敷の闇から闇へと消えてゆく。




