第19話
翌日。
「はぁ。」
自信を持てと言われても、昨日の篝さんの顔を思い出すとテンションが最低まで落ちてしまう。
「よ、フユト!」
「おはようモトキ。」
「おはよ!なんだよ、テンション低いなお前。」
「察しろ。」
「あー、篝ちゃんか。」
「ちょっ!ばか!声!!」
「あの?私がどうかしましたか?」
「うおっ!!」
僕とモトキの声がシンクロする。いつの間に後ろにいたんだろう?
「おはようございます。フユトさん、モトキさん。」
「お、おはよう篝ちゃん。」
気まずそうに挨拶するモトキ。あからさまに気まずそうにするなよ。
「お、おはよう・・・か、篝さん。」
ちらっと彼女の顔を見る。
「?」
少し優しく微笑んでいるような仕草を返す篝さん。立ち振る舞いがお譲様そのものだ。
まあ、お譲様なんだけどさ。
「い、いや、あの。」
「おはようございます、みなさん。」
相坂さんがすました顔で挨拶する。
「おはよう。」
僕とモトキは同時に挨拶してしまったせいで、再び声がシンクロした。
「・・・、フン。」
え?今、鼻で笑わなかったか?
「はぁ。」
もしかして、相坂さんって事情知ってそうだな。この時僕は前に言われた相坂さんの忠告をすっかり忘れていた。
瞬間。
ドカッ!!
廊下の壁に押し流された僕。壁に強く激突して、その上から相坂さんが両手を壁に突きつける。
所謂、壁ドン状態。
「前にも忠告したはずです。人と話をしている途中で溜息をつくなと。」
「ご、ごめん。」
「あなたみたいな男のどこがいいんだか・・・。」
僕にしか聞こえないようなすごく小さな声。僕はその声を聞きのがさなかった。
「え?」
「!」
「相坂さん!!」
篝さんが大声を上げる。
「今すぐ無礼を詫びなさい!」
とても厳しい声で相坂さんを叱咤する。
相坂さんは僕から離れると、一歩後ろに後ずさり深く頭を下げる。
「ご無礼をお許しください。大変申し訳ございません。」
「相坂さん、この事は報告させてもらいます。」
「お譲様!」
「何か異論があるのですか?今の行動は単なる暴力でしかありません。」
そして篝さんは僕の方を向く。
「フユトさん、ご無礼をどうかお許しください。」
「や、やめてよ!僕が悪かったんだから!それに、その、昨日の事もごめん!」
ちょっとパニックになった僕は、そのまま昨日のことまで勢いで謝罪できていた。
「え?」
あっけにとられた顔をする篝さん。
「あの、昨日僕も、か、篝さんに失礼な事言っちゃって。あの、ごめん。」
「い、いえ。」
急に顔を赤くする篝さん。
「で、では、失礼します。クラスルームでまた。」
軽く会釈すると、逃げるように篝さんは去って行った。
「相坂・・・もしかして。」
感のいいモトキは取り残された相坂さんに声をかける。
「・・・さあね。感の良すぎる男は女に好かれないわよ。」
捨て台詞のように去る相坂さん。
今のやりとりを理解できていないのは、僕だけのようで少し寂しかった。
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