第9話
【視点:水無月篝】
私は相坂ちゃんの脇腹を軽くつねる。フユトさんたちにはバレないように。
相坂ちゃんが目で謝罪を訴えてくる。
「篝ちゃんは好きな人いるの?」
『ブフッ』
モトキさんの一言に私とフユトさんがほぼ同時に食べているものを吹き出してしまう。
「汚いですよ、お嬢様。」
相坂ちゃんがここぞとばかりに仕返しぎみに返してくる。
「ご、ごめんなさい。」
「モトキ!お前何聞いてんだよ!」
「え?だって気になるだろ?こんなに美人なんだからさ。きっと学年一番なんじゃないか?」
「何番でもいいだろうが。」
えっ!?
「か、可愛いことに変わりはないことだし。」
語尾が消えかけるようにフォローしてくれるフユトさん。
「私より可愛い子なんていくらでもいると思いますよ。」
「た、例えば相坂さんとか?」
「ブフッ!」
今度は相坂ちゃんが吹き出す。
「汚いですよ?」
さっとハンカチを差し出すと、それを押し返す相坂ちゃん。可愛い。
「男子は下品ですね。」
唐突に告げる相坂ちゃんの一言。
「男子はそうやって女子を外見で判断する。その人の事をなにも知らないくせに。」
「相坂さん!」
私は止めにはいる。これ以上は言わないで。相坂ちゃんがフユトさんたちから敬遠されかねない。
「ごめん。」
頭を下げたのはフユトさん。
「モトキも悪気があって言ったことじゃないんだ。不快な思いをさせたならごめん。」
「俺もごめん。」
モトキさんも頭を下げる。
空気が変わった。それ以降会話はなく、私たちより先に二人はクラスルームへと戻っていった。
私と相坂ちゃんが残される。
「相坂ちゃん……。」
「ごめんて。」
「どうしていつもそうなのよー。はぁ。私、嫌われてたらどうしよう。敬遠されたらどうしよう。」
「篝ちゃんは大丈夫でしょ。」
「私は相坂ちゃんと楽しく学園生活を送りたいの!ひとりだけ輝いてても意味がないの!」
「うわ。」
相坂ちゃんがジト目になる。
「自分で言っちゃうんだ?輝いてるって。」
ボンっと言わんばかりに顔が赤くなるのを感じる。
「べ、別にいいでしょ。」
「輝いてる篝ちゃん、私たちも戻ろうか?」
「う、うるさいわよ!」
私たちもクラスルームへと向かおうとすると、不意に背後から声をかけられる。
「水無月先輩!」
え?
相坂ちゃんが警戒した目で私の一歩前に出る。
この子はどこから現れたの?
確かこの子はフユトさんの手を握ってた子だよね?
それに先輩?
私はまだ入学したての一年生なのに。
私は少し混乱していた。
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