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22/22

22.姫と王子

童話なら王子のキスで目を覚ますのだろう。

だから私は5年も眠ったままだった。

王子なんているはずもなく、

そんな夢のような話、あるはずもない。


そもそも愛する人のキス?

王子は姫のどこを愛していたの?

眠り続けている彼女の何を知っている?

美しさだけじゃない?

いや、美しさも彼女の一部か。

美しくあり続けるために姫は努力をしていたのだろう。

その努力する姿を見抜き、恋をしたのだとしたら

王子はなかなかの男だ。


そんな馬鹿なことを眠っている間にうっすらと思っていた。

そしてこんな話をいつかすることが出来るのだろうか。

いや、このまま……。



でも私は今、目を覚ました。

どうしても確かめたかったのだ。



もし私が長い長い夢を見ていて、

夢は悪夢であり、目覚めた時、

「あー良かった。夢だったのか」

と呟き、もしかしたら姉の隣には

蓮さんがいるのではないかと。


怖い夢だったんだね、と言う姉の隣で

美しく微笑む蓮さんがいるのではないかと。


でもやはり夢ではなかった。



蓮さんはやはり、亡くなってしまったのだ。

あの時、私がお父さん、

いやお父さんだったのかわからないけれど、

そっくりな人を追いかけたりしなければ……。



いや、本当にお父さんだったのかもわからない。

ただ、よく似ていた。


父は母が亡くなった後、人が変わってしまった。

姉の大学資金だけを残して、姿を消した。


姉は大学に通いながら、私の母親代わりとなった。

そして父親代わりだったのが蓮さんだった。


あの日も、私が文化祭の準備で遅くなり、

「大丈夫」と言っているのに学校まで迎えに来てくれた。


蓮さんはいつも言っていた。


「美紅ちゃんに何かあったら光里に殺される」


冗談のようで、半分本気のような言い方で。


あまりに遅くなったため、

私は蓮さんに何か食べて帰ろうと言った。


「光里には内緒だよ」

と言って、ファミレスに連れて行ってくれた。


蓮さんといると鼻が高い。

やっぱり……美しい。

そう、結局私も王子と同じだ。

いや、違う。私は蓮さんのことを知っている。

誰よりも姉を愛している。

そして姉も。


私の推しは姉と蓮さんだ。


なのに私はあの日、父そっくりの人をみかけ

思わず追いかけた。


車が飛び出してくるなんて思ってもいなかった。

そして蓮さんが……。


私に何かあったら……。

そんなこと姉の冗談に決まっている。

なのに、どうして……。

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