猫の話
自由なジユウにも、定期的な予定がある。月に二度、ふらりと何処かへ消えるのだ。その内の一度は静天宮の日。猫になってしまうので廃棄場で身を隠している。もう一度は…
「なんでついてくんの」
「気になって」
声をかけられてしまい、尾行態勢を解いた。バレバレだったらしい。
「何処へ行くんだ?」
「う~~ん…ぎんこう」
「銀行!??」
意外が過ぎる。でもそうか、お金を稼ぐために入学したとも言っていたし、何か理由があるのだろう。
「ついてっていい?」
「なんで?」
「気になるから」
うーん、と眉を困らせた。尻尾があればブンブンしてるに違いない。
「止めはしないけど…別に楽しくないよ」
銀行に楽しいことがあるとは思っていない。ここまで来て用件が判明したから帰るっていうのも微妙なだけだ。
用件を済ませた帰り道、適当なカフェを見付けてジユウを連れ込んだ。
「で、何してきたの?」
銀行へはついていったが、流石に手続きまで見守りはしなかった。
「そーきん」
「送金?」
相手がジユウじゃなかったら何か騙されていないかと心配していたところだ。人の嘘に敏感なこの猫が騙されるとは思わない。となると。
「そ。おれ兄弟が多いから」
「仕送り…!」
衝撃が襲う。
「え、じゃあジユウが稼いでるのって…」
「兄弟たちのせーかつ費」
まさかまさかだ。自由なジユウが家族の為に金を稼いでいたなんて…!
「大変だな…何人兄弟なんだ?」
「知らない」
「知らない!?」
知らないってどういうことだ。ジユウが嘘を吐くとは思えないから、稼いでる理由は本当なのだろう。それでいて兄弟の数を知らないというのは…興味がない?いや、それなら仕送りなんてしなさそうだ。数えられないほどいる…?
ジユウを盗み見る。山盛りのバターケーキをペロリと平らげ、幸せそうに舌舐めずりをしていた。
ジユウの実家では、子育ては群で行うらしい。誰が産んだ子でも、皆の子どもとして纏めて育てられる。だから皆兄弟で、村を離れたジユウはその数を把握していない。──ということらしい。仕送りも、ジユウ一人に課せられているわけじゃなく、巣立った兄弟たちがそれぞれに行っているらしい。
「いや吃驚した。そういうことね」
「猫の話から予測するとそうなる、って話ね」
真実は解らないとマキちゃんは締め括った。
そうすると、ジユウが言っていた「母ちゃん」は母ではない可能性もあるのか。
「マキちゃん、意外とジユウと話してるんだね」
「どういう意味?」
そのまんまの意味だ。




