012 迎えと帰還
「大丈夫なんすかねぇ」
「んな訳あるか」
「はあ~あ、噂が間違えだったらいいのに~」
「何言ってんだ殴り殺せばいいだろ」
「まったく捕まらない殺人鬼がここに現れて狩場として結界張ってるとか」
「どっかの誰かさんが話も聞かずに無理矢理走らすからこうなるんすよ」
「大した問題じゃねーだろ、そういう奴はたいてい雑魚だ」
そういうこと言うのが一番の「雑魚」でしょうが、という言葉は押しとどめて
私達はトラドからライベへの道のりを馬車で走らせていた。
その途中で出会った冒険者を端から殺して装備品を強奪しているという
Fランク冒険者:ガルド、推定殺人人数28人
がいると聞いていながら、それもこれもこの脳筋ことクラースが悪いのだ。情報収集している間に勝手に馬車を出発させてそのせいで引き返して御者代をもう今の一人と再出発する用の一人分でより多くとられることになりかねなかった、それでも命には代えられないと引き返そうとしたのだが、この脳筋が御者に無理矢理脅しながら走らせているため御者の方も一種の狂乱状態に陥りもう何を話しても聞く耳を持たず一直線に走り続けているのだ。
「ああ、これは間違いないっす、幾つもの馬車が主の無いままに止まっている、噂に聞いていたけどこんな感じなんすね」
「ここまで来たら腹をくくろう、御者の方も守り抜き、俺たちも生き残る」
彼等Dランク冒険者ビルトがそう決意をしている間にも馬車は進み、馬車の亡骸ともいえる壊れた馬車や横転した馬車の並ぶまるで馬車の墓地のようなエリアに出る。
「ちっちちちちちちち、血の匂いが、ああ、ああ、」
猛烈な血の匂いに御者も我に返ったらしい、それと同時に
「止めろ!!」
前方に座ったかのように眠っている人影を発見
「寝ている…のか」
「ていうよりこれは」
「死んでるかもだねえ」
「いったい誰が」
そうして死んでるかもわからず恐る恐る進む彼らのうち一人カイの足が何かに引っかかる。
「うわっと」
「大丈夫か」
さっきからクラースは不機嫌そうだ、ま、そりゃそうかせっかくの猛者との戦いが相手がもう殺されてるっていう結末で終わったもんね。
「なん…ひ、人―――」
「ほんとじゃん」
「死んでるー」
「落ち着きな」
クラースの時とは違い、何の術も纏わせていない杖で叩く。
「死んでない、息がある、分かった?」
「ほ、本当だ」
「てかなんでガルドが死んでるのより驚いてんだ」
「あれ?この子…」
「あ、」
「あ、」
「すごいな、三面鳥から生き残って、こいつまで殺したのか」
「三面鳥については確定じゃないでしょ」
「まあな」
「取り敢えず起こす?」
「そうするっすかね」
「あのガキか」
「おーい、起きな―」
「ううーー———ん」
起きたみたいだね
「……——…ー…」
「…——……」
「…———…」
・
・
・
「ーぃ、起きな―」
「ううーー———ん」
あれ、いつのまにか寝てた?
ん?でもあの時俺以外にはだれもいなかった
疲労によってかなり深く眠っていたのだろう、今では疲労も取れて思考は明瞭だ。
警戒!!!
素早く起き上がり、迎撃の構えをとるも体がふらつき、倒れかける
「ぐ…」
「あぁ、もう無理しなくていいのに」
「こっちに気を使っているというより警戒してるんじゃないすか」
「それもそうか」
聞き覚えのある声…記憶が確かなら、名前はビルトと言ったはずだ。
「てきじゃ、無い?…か」
安堵、
無意識のうちに寝ていたさっきまではノーカンとしてやっと一息付けた。
それによって体が脱力し、座り込んでしまう。
「これは君がやったのか」
ガルドを指さしている
「そうです」
「うぅわ」
「はい、失礼ですよカイ君」
「だってあの左腕……」
確かにあの後左手どうなったか確認してないな、左手を見る、
「うわぁ」
「本人の反応も大して変わってない!?」
困惑も感じてる様だ。
「そうだ、教えておこう、このガルドは指名手配がされている、首を切って持っていくと賞金が貰えるから首を切っておくといい」
「てかよく見たらむごい死骸だねえ」
「はい、これしかなかったので」
そういえばいくつか気になる発言もあったし、「答え合わせ」をしたい、
『解析』出来るかな?
「『解析』」
「えっ」
「おっ」
出来た
名前・種・Lv
ガルド・人・132
攻ー 防ー 魔ー 精ー 俊ー 器ー
HPー MPー
スキル 業無尽にあふれる絶対死地 鈍痛 死霊召喚 攻撃強化 精神大幅
弱体 呪い 棍棒術
ステータスの欄はもうほとんどの数値がゼロだけどこれは死んだからだろう、この表示からでもこの世界の魂とかの概念についてちょっと分かる気がする、
多分だけど経験値は体に蓄積されて行き、レベルとなってステータスという力を与え、スキルという機能が刻まれる、『解析』が通用するようになったのも死んでガルドの体が動かなくなり、ステータスという力が失われたから、格上格下判定が無くなったんだろう。
一番興味のあった『鈍痛』について見てみた。
鈍痛
大きな痛みをより小さく軽減する効果があるが、わずかな衝撃も痛みになってしまう。レベルによって程度は異なるが、この場合は歩いただけで石を蹴っているような痛みが来る。
メッチャ親切に教えてくれた。
ありがとう。
因みに『精神大幅弱体』と『呪い』はあの虐げられてきた死霊たちが自然と付与していたスキルなようで、どちらもデバフしかなかった。
『攻撃強化』は最後の方に使っていた奴だろう
「凄いね、『解析』いいなぁ、うちにはいないから欲しい」
「すいません、僕が取れればよかったんすけど」
「まあ、ローシェの奴もそういうつもりで言ったんじゃないだろうし気に病むことはないさ」
「ねえ、君ぜひともうちのパーティに来ない?」
「えーと、まだGランクですが、大丈夫なのですか?」
「確かにまだ子供だもんなGランクスタートだが、」
「にしたってこいつ殺せるのはおかしいっすよ、こいつに推定っすけど30人近く殺されてんすよ」
「『解析』で見たところスキル構成が圧倒的に相性が良かったです」
「具体的には?」
「俺は毒によって時間をかけて殺す、防御面特化なんですけど、ガルドの攻撃をギリギリ一撃耐えれて、その後回復することで時間を稼げたんです」
「それと、この人の結界で死霊を召喚してMPを回収して結界を継続させて優位を保つっていうのも、消滅させたうえで僕が回収して突破できましたし」
「うわぁ、それは狙ったかのような好相性」
「一撃で削り切れないぎりぎりの耐久と回復による逆転か」
「毒ってことは魔術を使ってたんだと思うけどもう一つの死霊を消滅させたのは聖属性?、でも杖がないのはどういう事?そういえば行きは抱えていた荷物がないけどどうしたの」
「あっ、そうだった!」
走ってあの場所まで行き、荷物を引っ張り出そうとするも、片手の力では足りない、
「手伝おう、せえいっ」
半壊しているとはいえ馬車を持ち上げた!?
俺が驚愕していることに気付いたのか、彼はこう言う
「ああ、俺くらいの年齢で冒険者であればこのくらいは誰でもできるぞ」
なんだって!?この世界ってもしかして向こうの世界よりも年齢によってステータスに大きく差がつく?
「君今レベルは?」
確認して
「57です」
「それなら、11歳くらいか?」
「12歳ですけど、なんでそんなに分かるんですか?」
実質2歳な気もするが、お父さんの話によると当時の俺の体は10歳程度まで成長していたというから間違ってはいないだろう
「?知らないのか、たいていの人間は1歳で5レベル程度進む、大人になってくるとレベルも上がりにくくなってきて、肉体の成熟を感じるんだ」
あれ、てことは俺ほんとに2歳じゃね、最初10レベルだったし。
「しかし、変だな、ガルドは結構なレベルだろうから大きく上がっていてもいいはずなんだが」
ああ、それですね、ハイ、俺の実年齢が2歳だと判明したもので…
でも何故だろう?肉体年齢は12歳だぞ?
「まあ、そういう事もあるでしょ、体が弱かったりしてあまり活動していないとレベルの上がり方が大きく下がったりするし、」
「確かにな」
そう言いながら俺の荷物を渡してくれた、それを担ぎなおし、元の場所に戻る。
そこで首を切ろうとして、気付いた。
「あ、この太い首を切断できるほどのもの持ってないや」
「では代わりに斬って上げようか?」
「ありがとうございます」
ザシュッ!
うわ、グロい
そして布見たいので断面を抑えて、少ししたら
「はい」
布で包んで渡してくれた。
「ありがとうございます」
「そうだ、我々の馬車に乗っていくがいいさ」
「おっ、今から媚売りっすか」
其のままとんとん拍子に話が進み、俺は馬車に乗せてもらえ、馬車に揺られて比較的快適な帰り道を送った。
道中は
「そういえばさっきの質問の続きだけどさ」
「何でしたっけ」
「ほら属性の話と杖の話」
「ああ、それなら、僕の持っている属性は毒と浄で、それぞれ右手と左手にあります、それで」
「それで杖が必要ないのか、凄いねえ」
奥を見るとクラースと呼ばれていた男が黙りこくっていた。
そうしているうちにライベにたどり着き、晴れて俺はクエスト達成報告が出来るのだった。
名前・種・Lv
フェリックス・人・57
攻93 防183 魔137 精152 俊101 器101
HP226 MP226
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂
「さーて、久しぶりのライベ、やっとクエスト達成報告が出来る」
「俺たちも行こう、いくつか報告せねばならないクエストがある」
「じゃあ、行こ~~」
歩くこと数分、冒険者ギルドにたどり着き、受注済みクエストの起源を見たときは背中が震えた、ほんとにぎりぎりだ、二度とこんな一気にクエストを受ける物か。
「良い心がけだな」
「ナチュラルに心読まれた!?」
「なちゅらる?見てる場所と表情とそこの依頼場所の塊からだな」
「皆通る道…」
等談笑しながら受付に進み、彼らは報告する場所が異なるそうなのでそちらに移動し、俺は報告として素材を納品した、
首に関してはまた別に受付があるようでそちらで出したところ
クラースとガルドは会ったら多分凄い息があった。
フェリックスの色々ありそうな過去とか前世の話はだいぶ後で話します。